声優・徳井青空インタビュー#2「原作者になって初めて感じた声優のすごさ」

声優・徳井青空インタビュー#2「原作者になって初めて感じた声優のすごさ」

「ラブライブ!」矢澤にこ役をはじめ、「探偵オペラ ミルキィホームズ」譲崎ネロ、「ウマ娘 プリティーダービー」テイエムオペラオーなど、数々の話題作で人気キャラを演じる声優でありつつ、同時に漫画家、絵本作家、映画監督、VTuber、南房総市観光大使など幅広く活躍する声優・徳井青空さん。この企画では全3回にわたって、声優や表現活動の原点から、熱を込めて語る趣味の話までインタビュー。これまでの歩みや最新の出演作品に関するお話から、その人となりに迫ります。

■「周りにとってどんな存在か」を考えていく役作り

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――役作りの際に意識されていることはありますか?

「そのキャラ自身の思考はもちろんですが、『周りの人からどう見られているか』という立ち位置もすごく考えるようにしています。みんなから頼りにされる"アネゴ肌"なのか、それとも妹っぽい存在なのか。本人の『こう見られたい』という考えを汲み取るのはそうなんですが、周りから見てどんな存在なのかについても、意識するようにしています」

――それを意識することで、どんなお芝居ができるようになるんでしょうか?

「キャラの主観だけで組み立てるよりも、人間らしさがより立体的になっていくんですよね。とくにアニメはみんなで作っていくものなので、監督や音響監督のイメージも大切ですし、アフレコ現場で共演者の方々が演じるほかのキャラたちが、どんな風に自分のキャラに声をかけるのかも、すごく大事。自分一人ではなく、周りのみんながいて、そのキャラの演技が固まっていく感覚です」

――演じるキャラに対して、現場に入ってからより解像度が上がっていくんですね。

「そうですね。だからこそ、自分の中で『この子はこう!』って強く決めつけたり、思いすぎないことは大事にしています」

――台本への書き込みなどで現場に入る前のルーティンはありますか?

「そうですね、台本をチェックするときにハッキリした太い赤ペンを使うようにしてる、くらいかな...。ふつうのボールペンだと線が薄くて見逃しちゃいそうなので...! 太いペンで書きこんで、自分のセリフを迷わずパッと確認できるようにしてます。最近は、ロケでお伺いした競馬場で手に入れた『必勝マーカー』という青と赤がついたペン(笑)。その赤い方をずっと使っています。すごく見やすいんですよ!」

――必勝マーカー(笑)。縁起が良さそうですね...!

「何がいいって、台本の紙にほんのり裏透けするんです(笑)。そうすると『あ、次のページにも自分のセリフがあるな』とか『そろそろ私の番だな』って心構えができるので、めちゃくちゃ重宝してます(笑)」

■「どう頑張っても自我が引っ込まない」

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――これまで演じてこられたなかで、ご自身に似てると感じたのはどんな性格のキャラですか?

「ありがたいことに、ゲームやシリーズで長年、担当させていただいているキャラは、どれも自分に似ている部分があって、だんだんお互いの性格が歩み寄っているんじゃないかと思うくらいなんです(笑)。いい意味で"自分軸"を持っていて、自分の世界を全力で楽しめるキャラが多いので、そこはすごく自分と似ているなと感じますね」

――逆に似ていない、と感じたのは?

「正反対だと思うのは、引っ込み思案なキャラですね...!私自身、どう頑張っても自我が引っ込まないタイプでして...(笑)。そういう役を演じるときは、できる限り自分を無にして『とにかく自我を引っ込めねば!』と強く心に言い聞かせながら演じています(笑)」

――「どう頑張っても自我が引っ込まない」っていいですね(笑)。

「そうなんですよ!スタジオで『もうちょっと控えめで』『圧を減らしてください』ってディレクションをいただくこともあるくらいなんで(笑)。昔から、自分を信じて突き進んできた性格は変わらないので、控えめな演技は工夫が必要だったりします。ただ、作品全体のトーンや世界観によっても役作りのアプローチや意識は変わるので、一概には言えない部分が大きいです」

――というと?

「たとえば、わかりやすい例えでいえば、日曜日の朝にお子さんたちが楽しむアニメ作品。よりわかりやすく、楽しさを届けることを一番に心がけるので、リアルな自然体というよりは、パッと伝わる明るいお芝居を意識したりするんです」

――先ほどのお話もそうですが、役作り、といってもそのキャラだけに向かい合えばいい、ということではないんですね...!

「そうなんです。たとえ、ふだんは元気なキャラクターでも、物語のなかでシリアスな展開になったら、作品の空気がガラッと変わるくらいテンション感を一気に切り替えなきゃいけない。そういう意味では、作品の世界観、場面描写に合わせて、ぐっと気持ちをシフトさせることも、つねに意識している役作りの一つと言えるかもしれません」

■ブース外から見たアフレコで受けた衝撃

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――声優の活動とは別に、ご自身で漫画を描かれたり、ストーリーを作られたりする創作活動もされています。その経験が声優の仕事にも活きたり、ということもありますか?

「そうですね...漫画を描いていると、ある瞬間から『キャラが勝手に動き出す』感覚があったりするんですけど、じつはお芝居でも同じようなことがあって。声優としてキャラに向き合っていても、演じるより先に『キャラが喋り出す』感覚っていうのがあったりします」

――作者や声優の思うままキャラが動くのではなくて、キャラ自身が意志を持ってる、みたいな?

「そうです。お芝居だと、じつは自分が『こう演じよう!』と意図するよりも、キャラとして自然と言葉や感情が『出ちゃった』というほうが多いんですよね。そこは、漫画を描いてて『キャラが動き出す』のと何かしら共通点がありそうな気がしています」

――おもしろいですね...!原作者や声優だからといって、けっして好きにキャラを作り上げることはできない、というか。

「それは間違いなくそうだと思います...!『そうする』んじゃなくて、『そうなる』っていう感じというか...」

――徳井さん自身が声優ということで、漫画を描いているときに『このキャラ、こんな声かな』と想像を膨らましたりもするんでしょうか。

「それが、漫画を描いてるときはあんまり声の想像はしないんですよね。だからこそ、いざアニメになってキャストの方に演じてもらったときに、初めて『こういう声だったんだ!』って感じる。そういう意味で、いちばん大きな経験になったのが『まけるな!! あくのぐんだん!』という4コマ漫画のアニメ化でした」

――「まけるな!! あくのぐんだん! 」は連載を経て、2017年にアニメ化された作品ですよね。声優をやりながら、ご自身の作品がアニメ化されるって本当にすごいことです...!

「本当にありがたいことだし、楽しかったし、驚きの連続でした。声優活動のおかげで作品を知ってくださった方がいて、ある日突然、スポンサーさんが現れて『アニメ化しませんか?』とオファーをいただきまして...。『なんてラッキーなんだ!』と思いましたね!(笑) いろんな活動をしてきて、それがこんなふうに夢が叶うタイミングが来るんだな、って本当に驚きました」

――アニメ化に関しても、声優としての経験から、いろいろこだわったんでしょうか?

「いや、むしろ逆で、じつはアニメ化するのならばもう『自分の手を離れてほしい』という想いがあったんです。なので制作の初めから、私はいっさい出演せず、純粋な原作者としていたい、という要望を伝えさせてもらったんですよね」

――そうだったんですか...!

「キャスティングに関して、ちょっとした意見出しとかは音響監督さんにしたんですけど、基本的にはタツノコプロさんにお任せしていました。そんな形で進んでいったので、第1話のアフレコを見学するときには、本当に原作者という立場で現場に立ち会うことができて...!いままではブースの中でマイク前に立っていたのに、スタッフ側からアフレコを眺めたのは初めてでした」

――いつも行く現場なのに、それまでの景色とはまったく違った?

「大げさじゃなく、そうでした...!そのとき、3人のメインキャラに声を当ててくださったのが、玄田哲章さん、山口勝平さん、石田彰さんという豪華すぎるキャスト陣。そのお芝居がすごすぎて、本当にアフレコをしている最中に『おお!いまキャラクターに命が吹き込まれたっ!』っていうのを、肌で感じることができたんです!!」

――ふだんは、自分がその立場にいるわけですよね...!感じ方はどんなふうに違ったんですか?

「それまでは、声優として原作者の先生に『命を吹き込んでくれてありがとうございます』というお言葉をいただくことも結構あったんです。でも、私自身は、謙遜じゃなく『命を生み出すのは原作者の先生だし、動かすのはアニメーターさんであって、声優は歯車のひとつでしかない』って本気で思ってたんですよ...!でも、いざ原作者の立場になって、声優さんの声を聞いたとき、本当にその言葉通りに感じて、声優という職業のすごさに心から感動してしまったんです...!」

――それは徳井さんにしかできない体験ですね...!

「アフレコ前の脚本会議から参加したことで、制作の大変さも知りましたし、現場に入るマインドや作品への見方がガラッと変わった瞬間でした」

■おっとりした優しさとギャグのメリハリ|「花織さんは転生しても喧嘩がしたい」倉石摩那

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――2026年夏アニメ「花織さんは転生しても喧嘩がしたい」では、地球外生命体から地球を守る魔術組織「OZ」の魔道士であり、「ラブコメ警察」を自称する倉石摩那を演じられています。演じるにあたってどんなことを意識されましたか?

「ギャグ要素が満載の作品なので、全体的にテンションが高くてテンポ感もすごく速い場面が多いんです。そのなかで、摩那ちゃんはややおっとり系。テンポの速さに埋もれて沈んでしまわないように、彼女なりのメリハリをつけるべきだな、というのはすごく意識しました。バトルシーンではカッコよく、でもギャグのところはしっかりわかりやすく、というギャップを意識して演じさせていただきました」

――たしかに、ギャグも含めてメリハリが大事そうな作品ですね...!

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「そうなんです。摩那ちゃんは意外と表情がコロコロ変わる子で、ギャグで弾けるシーンもあれば、たまにだれかに優しく声をかけるような場面もあって。そういうシーンでは本当に優しく、ていねいに言葉をかけるようにして、ギャグのパートとしっかりメリハリがつくように気をつけていました」

――ギャグシーンでは、とくにどんなことを意識して演じていたんでしょうか?

「摩那ちゃんって、『ラブコメ警察』みたいな感じでボケるシーンがあったりするんですよね。だから、しっかり周りがツッコミやすいように...って言ったら、なんかネタばらしみたいでアレですけど(笑)。ツッコミが立ちやすくなるような言葉のニュアンスや言い回しは、かなり考えて工夫していました」

■熱気渦巻く"ギャグバトル"な現場|「花織さんは転生しても喧嘩がしたい」倉石摩那

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――アフレコ現場は、どんな雰囲気でしたか?

「ギャグ作品ということもあって、キャストみんなが明るくて本当に楽しい現場でした!ギャグのシーンになると、とくにみんなが『聞いている全員を絶対に笑わせるぞ!』という熱意で現場が満ちあふれてくる感じで。互いに演技で笑わせ合う、みたいなまさに"ギャグバトル"みたいな独特の熱気がありましたね(笑)」

――それは楽しそうですね...!(笑) アドリブも結構多かったんですか?

「いや、アドリブがすごく多い現場というわけではないんですけど『どうしたらもっとおもしろくなるんだろう』ってキャスト全員が、意識して掛け合っているというか、お互いに高め合っている感覚がありました。その切磋琢磨(?)、現場での楽しそうな雰囲気が画面越しにも伝わったらいいなと思っています!」

――徳井さんがとくに印象に残っているシーンはありますか?

「じつは、摩那ちゃんをメインで演じてはいたんですけど、加えて兼役で"ドッグ・ザ・宇宙さん"というキャラも担当していたんです。ミーティアの回想フキダシの中で『ワンサー!』というセリフ一言だけなんですけど、セリフを言った瞬間に現場のみんなが大爆笑してくれて(笑)」

――あれ、徳井さんだったんですか!(笑)

「そうなんですよー!流星役の福山潤さんもすごく気に入ってくださって、2回目に登場したときには『楽しみにしてたよ!』と言っていただけるくらい。メイン役と同じくらい大きなやりがいを感じてました(笑)」

――そこまで...!(笑)
 
「原作者のヒカワ先生も、毎回アフレコに来てくださっていたんですけど、後日ご自身のXに『徳井さんの迷いのない"ワンサー"が最高でした』って書いてくださっていて...!迷いのなさを褒めてもらえたのがめちゃくちゃ嬉しかったですね(笑)」

――それだけ、伸び伸びと収録できていたということですね(笑)。

「それはあるかも(笑)。あ、でも、キャスト陣が伸び伸びして弾けすぎて、『ちょっとやりすぎ!』っていう場面もありました(笑)。そこは監督、音響監督がしっかり手綱を握ってバランスを取ってくださるからこそ、私たちは安心して伸び伸びとギャグシーンが演じられるので、全員が心から楽しんでアフレコにのぞんでいる感じはすごく強かったです」

――いい空気感が伝わってきます...!そういえば、徳井さんは番組のエンドカードも描かれていましたよね?

「そうなんですよー!お話自体がおもしろいのはもちろんですが、そこもぜひ注目してもらいたいポイントでして。じつは私、第3話のエンドカードイラストを描かせていただいたんです!今後も、ほかのキャストさんが担当されるエピソードもあると思うので、本編が終わった最後の最後まで絶対に見逃さないでほしいですね」

――それは楽しみですね!

「ちなみに、私が描いたエンドカードの背景にも、しっかり宇宙さんを登場させて『ワンサー』の気持ちを込めていますので、すでに観た方もそうでない方も、ぜひ配信などで探してみてください!」

■異世界ものの魅力はギャップとリアリティ

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――最近は多様な切り口の異世界作品が次々と生まれていますが、徳井さんが感じる「異世界ジャンルならではのおもしろさ」ってどんなところにあると思いますか?

「やっぱり、だれしも一度は妄想したことがある『もし自分が別の世界に行っちゃったら?』という夢を描いてくれるワクワク感がすごくあるんですよね。たとえば、全然違う世界にキャンピングカーだけ持っていけたらあんなことをしたい、こんなこともできる、みたいなロマンがたっぷり詰まっているなと思います」

――みんなの願望とか、空想みたいなものが形になってますよね。

「そうですよね。あとは、設定の『ギャップ』も魅力の一つじゃないでしょうか。キャンピングカーにしろ自販機にしろ、現実世界のものが異世界に登場する作品が最近増えてますけど、ファンタジーな世界観とのギャップが大きいじゃないですか。しかも、そこでキャンピングカーでのキャンプ知識や、自販機の構造といった専門的で細かい知識が物語に入ってくる、っていう(笑)」

――たしかに(笑)。

「最初はギャップがありすぎて、観る側も『出オチじゃない!?』とか身構えちゃうんだけど、観始めると全然そんなことなくて、どんどん物語は展開するし、キャラにも感情移入しちゃうんですよね。でも、そうやって引き込まれる作品には、共通してリアリティがあると思います」

――というのは?

「魔法や剣がある世界だって、人間関係の悩みごとは同じだし、幸せや喜びを感じる瞬間も同じなんだなって。そして、そのリアリティを感じさせるために、もしかしたらキャンピングカーや自販機という設定が、現実世界との繋ぎ役として一役買ってるんじゃないかなとも思うんです」

――なるほど...!

「すごく遠い、私たちとは違う世界の話なんだけど、どこか通じてる。そんな感覚から、一種の『リアリティ』が生まれるのかなって。それを、どんな設定、どんな装置で演出するのかは作品によって違いますけど、その掛け合わせがやっぱりすごくおもしろいんだと思います」

――でも、その中で「異世界に転生した自販機」みたいな、ユニークな存在にまで命を吹き込んでしまう声優さんたちの力は本当にすごいですよね。

「演じ手としても、そこに自分の好きなものがピタッと組み合わさったときは演じていてもすごくワクワクします(笑)」

――ちなみに、もし徳井さんご自身が異世界に転生するとしたら、どんなスキルや設定を持って生きていきたいですか?

「もし私が異世界に転生したら......絶対にラジオDJをやりますね。異世界のみんなに向けて放送したいなと!」

――意外!あれ、でもラジオDJは現実世界でもやられていますよね?

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「ふふふ(笑)。やっぱり私自身、ラジオが大好きなので。もし異世界に転生したとしても、絶対にあっちの世界でラジオ配信はやりたいんです...!魔法や剣で無双するのは、ほかの方にお任せするとして、...私は『ラジオ』で無双したいですね(笑)」

衣装協力/JUNGLES、MURUA
スタイリスト/津野真吾(impiger)
取材・文/郡司 しう 撮影/梶 礼哉

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