声優・徳井青空インタビュー#1「『好き』が重なり合う場所が声優だった。熱が引き寄せた、徳井青空の原点」
アニメ 見放題インタビュー
2026.08.28
「ラブライブ!」矢澤にこ役をはじめ、「探偵オペラ ミルキィホームズ」譲崎ネロ、「ウマ娘 プリティーダービー」テイエムオペラオーなど、数々の話題作で人気キャラを演じる声優でありつつ、同時に漫画家、絵本作家、映画監督、VTuber、南房総市観光大使など幅広く活躍する声優・徳井青空さん。この企画では全3回にわたって、声優や表現活動の原点から、熱を込めて語る趣味の話までインタビュー。これまでの歩みや最新の出演作品に関するお話から、その人となりに迫ります。
■幼少期から心の中に染み付いているもの

――幼少期は、どんなお子さんでしたか?
「いま振り返ってみても、子どもの頃からかなりオタク気質だったんじゃないかなと思います。昔からものづくりが好きで、絵を描くのも大好き。物心ついた頃には、もうマンガをマネして描いていたような感じでした」
――どんなマンガをマネして描いていたんでしょうか?
「幼い頃に好きだったのは『ドラえもん』とか、親しみやすい作品です。『ドラえもん』もそうですけど、『コロコロコミック』がなにより大好きだったので、それに載っている『ポケットモンスター』や『星のカービィ』といったマンガを、自分でもマネをして描くことが多かったです。両親も、そんな私の姿を見て、止めるでもなく好きにさせていたみたいで...!」
――そうして、順調に徳井さんのオタク気質が育まれていったんですね(笑)。
「ですね(笑)。学校にも、同じように絵を描くのが好きな友達がいたので、一緒に描いたりもしていました。その友達の家は『コミックボンボン』派だったので、交換したり...(笑)」
――「コロコロ」と「ボンボン」の交換、わかります。懐かしい...!当時からいろいろな作品に触れていたと思うんですが、とくに夢中になった作品やキャラというと?
「そうですね...!一つの作品にどハマりした......というより、"4コマ漫画"というスタイルが大好きで、その頃から読むのも描くのも大好きだったんですよ。のちに、私自身も4コマ漫画を連載させていただくことになるんですが、その原点となるような本が実家にたくさんありまして...!たとえば、『かりあげクン』や『おとぼけ課長』、『フリテンくん』といった植田まさし先生の作品や、吉田戦車先生の『伝染るんです。』などなど...」
――てっきり「やったね!ラモズくん」とかかと思ったら、めちゃくちゃ大人っぽい...(笑)。
「じつは、そうなんですよ(笑)。『伝染るんです。』なんかもう、ちっちゃい頃から大好きで仕方なかった。だから刺激を受けたキャラクターでいうと、やっぱり"カワウソ"になるのかも(笑)」
――あの、やっとこを持ってカップルを待ち伏せしてる...(笑)。
「そうそう、子ども心にもすごく衝撃的でした。私のギャグのセンスだったり、4コマ漫画の描き方のルーツは、きっとそのときに完成したんだと思います。植田まさし先生と吉田戦車先生の作品は、いまでもずっと大好きです」
――意外な答えかと思いましたが、いまの徳井さんの感じから考えるとすごく納得感があるかも(笑)。
「小さいときから読んできたからこそ、きっとあの4コマ漫画の独特のテンポ感やリズムが、自分の中に染み付いているんだと思いますよ(笑)」
■大好きなものが重なった場所が、声優だった

――「声優になりたい」と思ったきっかけはいつ頃だったんでしょうか?
「きっかけでいうと、中学生の頃ですね。昔から誰かになりきったり、演じたり、モノマネするのが好きで。とくに電波ソングとか、キャラを演じてそのまま歌うってすごいなって思ってて、よくマネして歌っていたんです。加えて、オタク気質でアニメや漫画が大好き。その二つが重なる場所として、声優、という職業に興味を持ち始めたんです」
――好きなもの同士がかけ合わさったんですね。
「そんな思いで、高校生になってから演劇部に入りました。そこでお芝居に初めて触れたんですけど、それがもう、めちゃくちゃ楽しくて...!絵を描くのも好きでしたけど、物語を作ること自体も昔から大好きだったので部員みんなで脚本を
書き合っている時間が幸せで...」
――楽しそう...!
「私が脚本を書くときは、やっぱり、すぐギャグを入れ込みたくなっちゃうんですけどね(笑)」
――徳井さんらしい...!(笑)。
「そうして演劇部でお芝居に触れるなかで、雑誌『声優グランプリ』の公募オーディションがあることを知って。同じ演劇部の先輩が『受けてみた』っていう話を聞いて、『それに応募したら声優さんになれるんだ!』と初めて知った感じでした」
――それで、そのオーディションを受けた?
「そうです。ただ、応募して書類審査を通過はしたんですけど...その段階で、両親に何も伝えてないことに気づきまして...(笑)。千葉の田舎のほうに住んでいたので、一人で行くのも難しいだろうし、急に『オーディションに行く』と言いだしたら変かな...とも思い始めて、電話で辞退するって伝えちゃったんです」
――ええ!オーディションが受けられない状況に、『悔しい』という思いがあったりはしたんですか?
「いや、そういう気持ちも本当になくて、『上京してからやればいっか』くらいだったんですよね(笑)。すごく熱い気持ちがあったら違ったのかもしれないけど、高校生でしたし、まだ『やってみたいかも』くらいで。いまスムーズに行かなかったり、親に迷惑をかけちゃうんだったら、『また来年か再来年、挑戦するほうがいいな!』って思ってました」
■「これしかない!」と思い飛び込んだオーディション

――そこから、どんな経緯で声優の道へ?
「大学に入り、上京して一人暮らしを始めてから、あらためて自分でオーディションを探し始めました。そのとき、ニコニコ動画の『鷲崎健のアニメロ新人オーディション』という番組で出演者を公募しているのを見つけまして...。その番組が、声優を目指す駆け出しの新人たちが登場して、アフレコに挑戦したりする番組だったんです」
――内容的にもぴったりですね...!
「でも、私が惹かれたのは、なによりそれに合格すると1年間無料で養成所に通える、"特待生制度"が付いていることだったんです...!当時は、大学に通いながらバイトもしていたんですが、新しく何十万も学費を払う余裕はなくて。『もうこれしか道はない!』と思って受けたら、ありがたいことに合格をさせていただいて...!」
――じゃあ、もしそこに合格していなかったら...?
「声優になれていなかったかもしれないですね...!ほかの養成所の見学にも行ったんですけど、当時はそんな金額は出せそうになかったですし。あの番組に受かっていなかったら、いまの自分はない。本当にすべての入口だったと思います」
――それから養成所に通うことになるわけですね。
「番組的には3期生として参加して、そのかたわら、ドワンゴの養成所に通わせてもらいました。大学に通いながら、週2日ほど夕方から養成所のレッスンを受けに。当時は、とにかく目の前の課題をこなすのに精一杯でした」
――そうですよね。大学に通いながら番組にも出演して、養成所にも通って...!
「大変な日々ではありました。でも、同期の有野いくちゃんをはじめ、声優を志す同志ができたのがすごく嬉しくて。それまで身近にオタク仲間があまりいなかったので。ライバルというよりは同志として切磋琢磨していく感じで、ただ大変なだけじゃなくて楽しくもあったから、あっという間に日々が流れていくみたいでした」
■デビュー直後から「声優」の枠に収まらなかった

――駆け出しの頃の転機、というと?
「駆け出し、というか養成所に通っている途中の段階で、あるゲームのキャストに入らないか、とお声をかけていただいたんですよ...!というのも、先ほどのニコニコ動画の番組のオーディションのとき、審査員にたまたま当時ブシロードの社長だった木谷さんがいらっしゃって、それがご縁でスカウトしていただいて...」
――そうだったんですか...!
「だから、本当に『鷲崎健のアニメロ新人オーディション』という番組から、すべてのことがいまに繋がっているんですよね。でも、お仕事を始めたときには、養成所も卒業してないし、本当に何もわからないことばかりで大変でした。しかも、その作品、当初はゲームの収録だけだったのが、主題歌を歌うことになり、MVを撮影することになり、さらにはアニメ化まで......本当、目まぐるしい展開の連続で...」
――デビューして間もない頃から、「声優」という枠を超えた活躍ぶりでしたよね...!
「ありがたいことに、その頃にライブやイベントなどもたくさん経験できたんですよね。お芝居だけじゃなく、もっと広く"エンターテインメント" についてたくさん学ばせていただいたんだなって、いまでも思います。目の前にいる人を楽しませたり、その場で対応していく瞬発力は、あの頃に鍛えられたなって」
――駆け出しの頃から、直接ファンの方々と相対する機会も多かったんですね。
「そうですね。ふつう、スタジオで収録するだけだと、そこまでファンの方々と触れ合う機会ってないじゃないですか。そう思うと、すごく特殊で恵まれた環境での、声優人生のスタートでした。ライブですぐにファンの方々の反応が見えたり、アニメを観て、会いに来てくださるのもすごく嬉しくて...。なかでもいちばん嬉しかったのは、自分が演じたキャラのグッズが商品化されること。自分が演じたキャラのグッズを、みんなが持ったり着たりして集まってくれる。最高の景色ですし、本当に幸せな瞬間でした」
■笑い声が絶えない温かい食卓の風景|「捨てられ聖女の異世界ごはん旅 隠れスキルでキャンピングカーを召喚しました」リン

――2026年の夏アニメ「捨てられ聖女の異世界ごはん旅 隠れスキルでキャンピングカーを召喚しました」では、主人公のリン役を演じられています。まず徳井さんから見たリンの第一印象、魅力を教えていただけますか?

(C)2026/米織・仁藤あかね/KADOKAWA/「捨てられ聖女の異世界ごはん旅」製作委員会
「すごく親しみやすい雰囲気があって、人当たりがいい子ですよね。仲間に向けてもやさしいですし、自分を主張しすぎない奥ゆかしさや協調性があって、しっかりしているなと感じます」
――邪心がまったくない、フラットな魅力がありますよね。実際に演じていく中で、第一印象から変化した部分や親近感を覚えたポイントはありましたか?
「リンちゃんはアラサーで、社会人を経て転生してきているので、そこにすごく親近感があるんですよね。私は彼女、働いていた経験もあるし絶対に"モテる"と思っていて(笑)」
――なんかわかるような気がします(笑)。
「目の前のことを無邪気に楽しみつつも、我を忘れすぎない年相応な部分があるんですよね。だから声のトーンや周囲との距離感がすごく私としても演じやすいですし、しっくりくる部分です。元々ソロキャンプが好きで一人でも楽しめるけれど、誰かと一緒ならそれも楽しめるという柔軟な感じも、すごくいいなって思っています」
――その「一人でも楽しめるけど、誰かと一緒も楽しい」の感じってすごく徳井さんっぽい感じがします(笑)。
「あ、でもそういうところも似ているかも...!私もお料理したり食べるのが好きで、自分で作って美味しくできてテンションが上がっちゃう(笑)。『1人で作っていても絶対こうなっちゃうんだろうな』というところもすごく共感しますし、美味しくできた料理を食べてもらうのもやっぱり嬉しいですしね」
――作品、物語についてはどんな魅力を感じていますか?
「物語としては、本当に平和なお話で、毎回みんなでご飯を食べるのがメインなので、どの年齢層の方でもほっこりと観ていただける作品なんじゃないでしょうか。料理を作ると素直に感謝し合える温もりがあるし、キャラクターはみんなやさしいし」
――「暴食の卓」パーティがリンを受け入れるのも早かったですよね(笑)。
「そうそう(笑)。みんなが温かく受け入れてくれて、おいしいご飯を作ったら『ありがとう』と言ってくれる。当たり前だけど、けっこう大切な風景があるな、と思います。毎話、後半でみんなでご飯を食べて笑い合って、温かいキャンピングカーからカメラが引きながら笑い声が消えていくような...。『あれ、これってどこか...日曜日の18時とかに感じたことのある、安心感と平和だな』とか思うと、異世界版『サザエさん』なのでは...?と(笑)」
――異世界版「サザエさん」!(笑)でも、妙に納得感があります。作中の料理シーンを演じるときは、どんなことを意識されているんですか?
「リンちゃんはお肉を焼いて塩コショウをして......と料理の工程を説明するセリフが多いんです。私も、料理番組を見るのが大好きなので、だんだん料理ができあがっていくテンション感や、私自身のリアルなワクワクが声に乗せられたらなぁと思っています」
――徳井さんの、リアルな高揚感も声に乗っているんですね!
「調理工程の説明って、見ていても一番お腹が空いてワクワクするシーンだと思うんです。パーティのメンバーも『ご飯まだ〜?』とお腹を空かせて待ってるので、スマホやテレビの向こうで観てくださるみなさんにも同じようにワクワクしてもらえたら嬉しいですね」
■作品だけでなく収録までグルメな現場だった|「捨てられ聖女の異世界ごはん旅 隠れスキルでキャンピングカーを召喚しました」リン

――徳井さんといえば大のエヴァ好きとしても知られていますが、今作品の第3話で「見知らぬ、天井」のパロディシーンも登場しましたよね...!
「あれは、嬉しかったですね!もう、まさに『見知らぬ、天井』の気持ちを込めてセリフを言いました(笑)。リンちゃんはときどき、インターネット用語やオタク用語っぽいフレーズを口にするんですけど、私にとってもしぜんと言いなじみのある言葉が多くて。あのセリフも、特別な思いを込めて言えたので嬉しかった」
――そういうところでもまた、リンに親近感が湧いてきそうです。アフレコ現場での印象的な思い出や、撮影裏のエピソードなどはありますか?
「『捨てられ聖女の異世界ごはん旅』は、ご飯がメインになるお話なので、アフレコのたびに原作の先生や編集部の方が食べ物の差し入れをくださっていたんです。しかも毎回、作中のお話にちなんだグルメを持ってきてくださって...!」
――差し入れまで含めて「おいしい現場」だったんですね...!
「もう、ふつうの現場とは全然違いました(笑)。たとえば、お持ち帰り用の色々な味のタルタルソースとか。『タルタルソースってこんなにバリエーションがあるんだ!』って驚きながら、みんなで『私はレモンタルタルにします』みたいに選んだりして。現場でも食べ物の楽しさを感じながら収録できました」
――もはや、その場で食べるものですらない(笑)。
「あ、そうですね(笑)。あとは、焼きおにぎりが登場する回があったのですが、そのときは冷凍の焼きおにぎりを持ってきてくださって。『ついに冷凍まで!?』って現場で話題になって(笑)」
――こだわり方がすさまじい...。
「『溶けないうちにさっさと帰りましょう!』なんて言いながら(笑)。しかも、ただの焼きおにぎりじゃなくて、チーズで表面がカリカリになっているこだわり系で、そんな焼きおにぎり、初めて出会った...!家に帰ってからも美味しく楽しめて、本当にグルメな現場でした」
――作品の中では、キャンピングカーの「モーちゃん」という相棒も登場しますが、あのスキルは憧れますよね。

(C)2026/米織・仁藤あかね/KADOKAWA/「捨てられ聖女の異世界ごはん旅」製作委員会
「そう、モーちゃんはもう一人の主人公といっても過言ではなくて、そのモーちゃんのおかげでキャンピングカーがめちゃくちゃ欲しくなっちゃったんですよ...! じつは作品のイベントで、東京ビッグサイトで開催されたキャンピングカーショーのステージに登壇させていただいたことがあって。会場にずらりと並ぶ本物のキャンピングカーを見たら、もう欲しくて欲しくて(笑)」
――展示会場で直接、本物を目にしたら欲しくなっちゃいそう!
「『車内、こんなふうになってるんだ!』『こんなことまでできるの!?』って驚いて、もう意識がガラッと変わりました(笑)。それ以来、街なかや駐車場でキャンピングカーを見かけると『あ!キャンピングカーだ!』って思わず、ジロジロ見ちゃうようになりましたよね、やっぱり」
――かなり欲しい感じになってますね(笑)。
「さっき撮影した動画の一問一答で『限度額無制限のカードがあったら?』で、『不動産とお寿司』って答えましたけど、本当に、そんなカードがあったら『キャンピングカー』という答えでもいいかもです(笑)」
取材・文/郡司 しう 撮影/梶 礼哉
衣装協力/JUNGLES、MURUA
スタイリスト/津野真吾(impiger)



