声優・島﨑信長インタビュー #3「声の表現、お芝居に対していつまでも夢中な自分でいたい」

声優・島﨑信長インタビュー #3「声の表現、お芝居に対していつまでも夢中な自分でいたい」

「Free!」の七瀬遙役をはじめ、「ダイヤのA」の降谷暁役、「グラップラー刃牙」の範馬刃牙役、「寄生獣 セイの格率」の泉新一役、「斉木楠雄のΨ難」の海藤瞬役、「ブルーロック」凪 誠士郎役など、数々の話題作で主要キャラを熱演し、声優として第一線で活躍する島﨑信長さん。小さな頃からアニメやゲームが大好きで、"好き"が生む熱量を何よりも大事にしてきた信長さんは、「夢中になれる力があったから自分は声優になれたのかもしれない」と話します。このインタビューでは全3回にわたって、その人となりをひもときながら、声優・島﨑信長の声の表現への向き合い方に迫ります。

■自分たちの世界の自然と作品の中での自然は違う

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――声優としてのお仕事でいうと、アニメと洋画の吹き替えでの取り組み方の違いはあるんでしょうか?

「わかりやすく言うと、設計図があるかないか、という感じが近いかなと思います。というのも、洋画に関してはアニメと違って原音と、原作で演じた俳優の方のお芝居がすでにあります。設計図がないところから自分たちで作っていく、という感覚はアニメのほうが強いですし、逆に設計図が元々あって組み立てていく、という感覚は吹き替えのほうが強い。ただ、設計図に対して忠実に演じるか、そこにアレンジをするかは現場や状況によっても変わってくるのかな、と思います」

――現場や状況によっての違いというのは、演技としてはどんな部分に現れてくるんでしょうか?

「よく現場では演技に対して『ナチュラル』という言葉が使われるんですが、それ自体はいい言葉というか、『あの人の演技ナチュラルだよね』と言われたら褒め言葉として受け取ることが多いです。

だけど、どんな現場でも通用するナチュラルな演技というのはないと、僕は思っているんですよ。というのも、いま世の中的にナチュラルというと、アニメでも実写ドラマのようなお芝居というか、あまり過度にアニメっぽくしすぎないお芝居のことを指すイメージが強いんじゃないかと思うんですよね。

でも、必殺技を叫びながら手から波動が出るのが当たり前の世界ならば、堂々と大声で必殺技を叫ぶのってナチュラルだと思うんですよ。そこで、『いや、こんな絶体絶命のときに、こんなに全力で叫ぶ人いないでしょ』と言って、ぼそっとしゃべるような演技をしたら、逆に不自然だと思いませんか」

――言われて初めて考えましたが、そうですね。私たちの世界のナチュラルを、その作品の世界に押し付けている感じというか。

「そう、ナチュラルな演技ってあくまでその作品の世界において、役が自然と成立していることが大事だと思うんです。そう考えたときに、どんな作品でも通用するナチュラルな演技はないということなんですよね。

それは作品の世界だけでなく、一緒に演じる相手によっても変わります。例えば、高校生の役をやるとして、相手役を演じるのが現役の高校生で、等身大の演技が魅力になるのであれば、それに合わせた演技をしたほうが作品としては自然になると思います。だけど、僕よりも大先輩の方が相手役を演じていて、そこで等身大の高校生の感じで演技をしたら、バランスがおかしくなるかもしれないですよね。

それが現場や状況に合わせた演技の違いということなんじゃないでしょうか。作品から浮くようなことをしていたらアンナチュラルだし、何より自分がいいと思っているだけの独りよがりになってしまう気もします」

――声優業界では「ナチュラル」という言葉が流行り出した時期があるんですか?

「そうですね。使われ出した当時の意味としては『コテコテのアニメっぽい演技ではなくお願いします』というニュアンスだったんじゃないでしょうか。

おそらく、絵の技術が進んでアニメーション全体のクオリティが上がってきたことで視覚的に説明できることが増えたので、逆にお芝居のほうでは、『引き算してほしい』『リアルを追求してほしい』という思いが大きくなる現場が増えたのかな、と思いますね。本当のところはわからないですけどね(笑)」

■ストイックでも努力家でもない。だけど24時間365日そのことを考えている

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――声優以外のことで、仕事として挑戦してみたいことはありますか?

「それが、まったくないんです。やっぱり声優という職業が大好きで、声の表現は、自分がいちばんやりたいことなんですよ。例えば、今回のインタビューでも撮影してもらっておいて恐縮なんですけど、写真撮影もいまだに苦手で。『自分が撮られる』ということに対して"熱"がないんですよね。

誰かの心に響く仕事をしようと思ったら、"好き"だったり、逆に"嫌い"だったり、どちらにしても自分の中で強い感情のベクトルが必要だと思うんです。

僕は、声の表現、芝居が大好きだから、暇さえあれば気になっている声優の作品を見たり、現場でほかの方の演技に影響を受けたり、24時間365日、自然とそのことばかり考えているんですよ。人から見ると『努力してる』と思われることもあるんですが、全然、ストイックでもないし努力家でもないことは自覚していて、ただ好きなことだからやり続けられているだけなんですよね」

――前回、前々回のインタビューでも感じましたが、信長さんご自身が声優の仕事に対して、すごく熱を持って取り組んでいるのはお話を聞いているとすごく伝わってきます。

「逆に、声優以外のお仕事となると、どうしても自分が『夢中になれる』レベルには達しないというか、いまは声の表現だけで手一杯なんです。もちろん、イベントも、バラエティも、ラジオも、歌も、写真撮影も、その瞬間は何事も一生懸命に取り組んでいますが、『役として歌うにはどうしたらいいんだろう』『この役ならどんな仕草をするだろう』と考えることはあっても、『島﨑信長の歌がうまくなるにはどうしたらいいんだろう』『島﨑信長がかっこよく見えるのはどんなポーズだろう』と日頃から考えて研鑽を積むことはまずないんですよね。

それでもいろいろなお仕事でお声がけいただくので、じつは少し負い目を感じている部分もあります。それぞれ、自分はその専門的なものの積み重ねがあって取り組んでいるわけではないので」

――でもその分、"声の表現"という声優としての本懐が、信長さんの中ではすごく大事だということですよね。

「そうですね。声優、お芝居に関しては絶対に惰性で仕事をしたくはないですね。逆に、そうなったらもうダメだと思うんです。ほかの部分に『負い目がある』って言っている人間が、本業をおろそかにするくらいなら辞めたほうがいい。

声の表現に関してだけは、『夢中でありたい』というと自分が意識的にそのことにのめり込んでいる感じがするので、あくまで『自然と夢中でいる』のがずっと続けばいいなと思います。その気持ちを絶やさないためにも、一つ一つの作品や役に向き合って、日々の芝居をしていくことが大事なんじゃないかと思いますね」

■声優をめざす方へのアドバイスと読者へのメッセージ

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――声優業界をめざす、あるいは声優業界に入った後輩の方たちに向けて、信長さんからアドバイスをするとしたら、どんなことでしょうか。

「きっといま声優をめざす方って、歌って踊ってトークして、マルチに活躍している声優を見られて志す方が多いと思うんですよ。そこが憧れだったり目標にもなるでしょうし、モチベーションにもきっとなると思います。僕もそれはすごく素敵なことだなと思っているんですけど、正直、その部分でアドバイスできることは僕からはないんです。

だから、僕からは一つだけ。きっと声優を目指すときの自分の興味のベクトルって、いくつもあってもいいと思うんです。それを全部本気でやってくれたら嬉しいのと、その中に一つ、声の表現へ向いたベクトルも、せっかく声優になるのならば持っていてほしいな、というのが僕からのお願いですね。それが、一番大きな思いだったらもっと嬉しいし、僕はそんな人と現場でお会いしたいな、と思います」

――ありがとうございます! 最後に、これから4月にスタートするアニメでも多くの役を演じられると思いますが、読者の方にもメッセージをお願いします!

「こうして島﨑信長のインタビューとして、興味をもってもらって読んでいただくこともすごく嬉しいことですが、役者としてはやっぱり作品と役を見てもらえるのが何より最高に嬉しいです。

アニメって各専門のプロたちが本気で作っている総合芸術だと思うんですよ。その中で僕はどんな役でも心を砕いて取り組んでいるつもりです。プロフェッショナルの力が結集して出来上がった作品や世界観に触れて、何か一つでも日常に持ち帰っていただけるものがあれば嬉しいなと思います」

■「劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-」作品の見どころと、凪 誠士郎の魅力

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――4月19日公開予定の「劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-」で凪 誠士郎役を演じられていますが、改めて作品の見どころと、演じた凪 誠士郎の魅力を教えてください。

「『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』は、凪が玲王と出会って"ブルーロック"に入る前後の物語を、凪の立場から追体験するような作りになっていて、ある意味テレビ本編でも描かれてたシーンを別視点で捉えたものです。視点が違うことで、登場人物たちのそのときの心情の捉え方は変わるので、凪や玲王の声は劇場版用に改めて録り直しています。

本編で最初に登場したときの凪は、潔にとっては『怪物!』と叫びたくなるほどの天才で、潔にとっては越えるべき壁として立ちはだかりました。でも凪からすれば、モンスターに見えるのは潔のほうなんです。『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』では、その中で凪が動揺したり、熱くなったり、怖がったり、人間らしい一面が描かれています。視点が違うだけで物語の見え方がこうも大きく変わるのか、というのがこの作品の大きな見どころであり、魅力だと思います」

取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃

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