声優・森田成一インタビュー#1「夕陽に照らされ『変身!』と叫んだ瞬間に湧いてきた思い。声優・森田成一の原点」
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2025.11.07
「BLEACH」の黒崎一護役をはじめ、「キングダム」の信役、「FINAL FANTASY X」のティーダ役、「TIGER & BUNNY」のバーナビー・ブルックス Jr.役など、数々の人気作品で主人公を務め、その力強く芯のある声と熱のこもった演技で、画面を越えて観る人の気持ちを揺さぶる森田成一さん。幼い頃に抱いたヒーローへの憧れ。そのまっすぐな思いは53歳となったいまでも変わらず、いま声優として、ようやく自身が思い描くヒーロー像に少しだけ近づいてきた、と話します。このインタビューでは全3回にわたって、森田さんが声優として歩み始めるまでの軌跡から、キャラを演じる上で大切にしていること、独自に考える「ヒーロー小石論」まで、代表的な出演作品のお話とともにお届けします。
■教室の隅っこで一日中泣いている子だった

――いきなりですが、私、FFVIIIにもFFXにもドハマりした世代でして......。個人的に本日の取材をとても楽しみにしておりました。
「本当ですか!?それは嬉しい...!最近、現場で会う若手も『FFやってました!』と声をかけてくれる方が多くなってきたんです。それだけ、世代も上がってきたんだと実感します。FFXをプレイしたのはおいくつの頃ですか?」
――FFX発売当時は、確か中学2年生でした...!それ以来、5周はプレイしていると思います...。
「じゃあFFのくだりは、全部代わりに答えていただいて...」
――そんな!
「ウソですウソです(笑)。なんでも聞いてください」
――ありがとうございます!そしたら、まずは幼少期の頃のお話から。幼い頃はどんな気質のお子さんだったんでしょうか?
「いまの僕からすると、誰も信じてくれないんですが、じつはものすごく引っ込み思案な子供で、極度の人見知りでした。例えば、幼稚園バスの集合場所には行くのに、バスが来た途端、そのバス停の前にある建物の壁にピタッと貼り付いて、その場から離れなくなってしまう。無理やり乗せられて幼稚園に行くと、今度は教室の隅っこで一日泣いたんです」
――なんというか、胸がキュッとなりますね...。
「いまでもその時の映像がはっきり記憶に残っているんですが、教室の隅っこで泣いていると、その目の前の壁に鞄を掛けるフックが並んでいるんですよ。そのフックの上に小さな窓があって、先生が廊下を通ると、窓からその姿が見える。先生が通る度に、『お迎えのバス、まだ?』と言って泣いてたんです」
――当時の森田さんにとっては、幼稚園にいるのが本当にしんどかったんですね。
「人見知りが激しすぎて、全部が怖かったんですよね。その気質が今じゃ"どこに行ったんだ"というくらい。少しでも残っていたら、もう少し謙虚な生活ができるようになっていたかもしれません(笑)」
■「みんな、友達だよ」というウソを、本当に

――そんな気質から、何か変わるきっかけはあったんでしょうか?
「一つ、"これがきっかけなんじゃないか"と思う印象的な出来事があって。あるとき、いつものように幼稚園で泣いていると、『まさかずくん、おばあちゃんが会いに来てくれたよ』と先生が言うんですよ。でも、おばあちゃんが会いにくることなんてないので、不思議に思いながらも先生に付いて体育館の裏口まで行くと、本家のおばあちゃんがそこにいたんです。どうやら、我が家に立ち寄ったついでに、幼稚園まで様子を見にきてくれたみたいなんです。そのとき、不思議なことにおばあちゃんは僕を見ていませんでした。僕を通り越して、その後ろを見ているような目線で、『これはみんな、成一のお友達なの?』と言ったんです。振り返ってみたら、そこに同じクラスの子がバーっていて。どうやら、誰かが面会に来るなんて珍しいから、みんな見に来ちゃったみたいなんです」
――子どもらしいですね。
「極度の人見知りだった僕に、友達なんて一人もいない。でも、ここで『友達いないよ』とおばあちゃんに言ったら、心配するんじゃないかと幼心に思って、とっさにウソをついたんです。『うん、みんな友達だよ』って。でも、ウソをつくこともダメだってわかってるから、これは本当にしなきゃいけない!と思って、そのとき、友達を作る決心をしたんです」
――なんてまっすぐな...!
「でも、そうはいっても友達の作り方なんてわからない。そんな僕を心配してくれてか、先生も1年上の年長さんから2人、男の子と女の子を呼んで、僕と一緒によく遊ばせてくれたんです。そのお兄さんとお姉さんが、自由時間になると園庭に連れ出してくれて。最初はそれすら怖がっていたんですけど、だんだんと園庭で遊べるようになり、そのうちに鉄棒を始めたんです。最初は、体を上げることもできない。そしたら、お兄さんとお姉さんが補助のタイヤを鉄棒の下に持ってきてくれて。そのタイヤのバウンドで、ポンッとジャンプして、ようやく鉄棒に上がることができたんです。そのとき、自分がいままで見ていたよりも高い景色が目に写って、急に世界が開いた感じがしたんです。『こんな世界があるんだ!』って。そこから鉄棒にハマってどんどんやり続けていたら、少しずつ友達も増えて、ふつうにみんなと遊べるようにもなりました」
――そのお兄さんとお姉さん、そして鉄棒が森田さんを外の世界に連れ出してくれたんですね。
「そう、その出来事から少しずつ何かが変わっていったのは間違いないです。僕の人生でも一番、といってもいいぐらい重要な瞬間だったと思います」
■俺はヒーローになるんだ

「じつは、その出来事からほどなくして、もう一つの大事な瞬間が訪れるんです。それもまた、幼稚園の頃の出来事なんですけど。幼稚園の送迎は、バスが何度も往復して僕らを送り迎えしてくれるんですが、僕の地域が一番最後のグループだったんです。なので、待っている間は園庭で遊んで過ごすのがお決まり。当時は、仮面ライダーが大流行りで、僕はV3、友達は1号ライダー、2号ライダー、ストロンガーとかになりきって、みんなでごっこ遊びをするわけですよ。幼稚園の園庭には太鼓橋の形をした、雲梯があるんですが、その上に立って僕が『変身!』と叫んだんです。そしたら、ちょうど夕陽がピンスポットのように自分に当たりまして...。その瞬間、心の中で『僕はヒーローになる』という言葉がふっと浮かんだんです」
――すごい体験ですね。
「それが『ヒーローになるんだ!』という決意なのか、『将来、ヒーローになる』という予見だったのかそれはわからないんですけど、『ヒーローを目指す』という気持ちがふっと心に湧いてきた瞬間でした。それからです。『ヒーローとは?』と考え始めるようになったのは。なぜ、それが重要な出来事なのかというと、その『ヒーローとは?』という問いから生まれた自分の"考え"がいままで続いていて、今の自分につながっているからなんですが......。その "考え"については、また次回のインタビューでお話しするとしましょうか(笑)」
――!? 気になりすぎます...!
■僕のマイクの下に、汗で水たまりができていた|「キングダム」信

(C)原泰久/集英社・キングダム製作委員会
――10月から第6シリーズの放送が始まった「キングダム」。森田さんは主人公である信を務められていますが、作品の人気ぶり、すごいですね!
「本当にありがたいことです。『キングダム』が始まったのは、現在"旧シリーズ"と呼ばれている『BLEACH』が終わった直後でした。その『キングダム』第1話の収録。じつは結構なドラマがあったんですよ」
――どんなことがあったんですか?
「今となっては当たり前になりましたけど、当時はアイドル声優というのが、そこまで認知されていない時代。そんな中で、登場したのが『金色のコルダ』という作品で、それに僕や福山潤、小西克幸、谷山紀章、伊藤健太郎、岸尾だいすけといった面々が出演していました。ありがたいことに、作品の人気と、その時期ちょうど何度目かの声優ブームがあって、そのブームの中に僕らがいたんです。ただ一方で、そんなふうに"アイドル売れ"してる頃って、どうしても『実力は大したことないんでしょ』という見方をしている方も、やっぱり少なからずいるんですよ。何かを直接言われたわけじゃないけど、当事者としてそんな空気を肌身で感じていました。そんな中で、始まったのが『キングダム』の収録でした」
――ちょっと向かい風の中でのスタート、と森田さんは感じていた。

(C)原泰久・集英社/NHK・NEP・ぴえろ
「そんな状態で現場に入ったんですが、1話目ということもあって、Aパートのリハを3回もやったんですよ。でも、リハだからと言って、そこで隙を見せたら『やっぱりね』と思われてしまうに違いない。だから、そのリハを3回ともすべて全開でやったんです」
――ただでさえ、キングダムのカロリー消費すごそうなのに...!
「3回目のリハが終わる頃には、僕のマイクの下に、汗で水たまりができていました(笑)。そしたらね、もう本当にぽろっと出ちゃったと思うんですけど、ほかの役者さんから『まさか、ここまでやるとは...』と言われて。そう言ってくれている顔も、驚きと同時に、どこか喜んでくれているように見えました。だから、1話目のAパートのリハで、その向かい風な雰囲気をすべてひっくり返して『キングダム』の収録は始まったんです。そして、そのときに『キングダムって、こういう方向性でやっていく』という、"座組"もある程度決まったような気がします。そこから今に至るまで13年間。『キングダム』の現場の苛烈さは変わっていません。それどころかより激しくなっているかもしれません(笑)」
■ガヤが始まると一番にマイク前を陣取る|「キングダム」信

――本当、ドラマ観てるみたいなお話ですね...!でも、その現場での苛烈さが、「キングダム」の合戦のシーンをより魅力的にしているんじゃないでしょうか。
「そういう部分もあると思います。『キングダム』の醍醐味の一つって『出陣だ!』といった檄を飛ばすシーンなんです。現場でも全開で檄を飛ばしていますし、色々なシーンでとにかく叫んでいると思います。でも実はそれだけじゃなくて、めちゃくちゃ大事なのが、いわゆる"ガヤ"の収録。何十万人VS何十万人の合戦のシーンだったりすると、何度も何度もガヤを収録して、それを重ねていくんですよ。いままでで一番ヤバかったのは、第2シリーズの秦と魏が戦う山陽攻略編。連続100カットにもおよぶ長尺のシーンで、ガヤの声を出し続けるという。しかも、『味方が攻めてる』『味方がやられてる』『敵が攻めてる』『敵がやられてる』と4種類のガヤをやらなければいけない。あの収録は、しんどかった(笑)」

(C)原泰久・集英社/NHK・NEP・ぴえろ
――聞くだけでも脳から酸素が失われる気がしてきます。
「そういったガヤのシーンを、『ウアアアァァァァッッッ!!!』って感じで収録するわけなんですけど、スタッフの方が『ガヤ録り、始めまーす』っていうと、僕はすぐマイク前に陣取ってスタンバイするようにしています」
――たしかに、福山潤さんのインタビューでもそんな話をお聞きしていました...!でも、なんでそこまでして一番前に?
「僕は『主人公なんで、ガヤやりません』っていうスタンスが大っ嫌いなんですよ。"ものづくり"って、みんなでやるものだから。アニメもそうですけど、映像って集団芸術なので、全員で作ることに意味があるわけです。だから、誰よりも先にマイク前を陣取るんです。そうするとミキサー側から『森田さん、下がってください』って言われるんですけどね」
――(笑)。
「でも、先輩のそういう姿を見てたら、若手側は『自分はこの現場にいらないのかもしれない』と危機感を持つじゃないですか。それを感じてもらうために、我先にマイク前へと行くんです。そうすると、いつの間にか、俺よりも前に出て、ぐっと俺を後ろにねじ込もうとする若手が出てくる。それがいいことだと思うんですよね。『ここまでやらなきゃマイク前にはいられないんだぞ!』ということを教えられる唯一の現場が、『キングダム』なんです」
■森田ズ・ブート・キャンプ|「キングダム」信

――でも、そうやって現場で若手を育てる、というのは元々そうしようと決めていたんですか?
「これまでにも何度か若手もメンバーが変わっているんですけど、今の子たちも、前の子たちも、そしてその前の子たちも、最初は声が全然出ないんですよ。で、それだとその子たちが声優としてうんぬんの前に、作品に影響が出ちゃうわけじゃないですか。すぐに声がひっくり返っちゃうし、声がガラっちゃうし。だから、『この子たちがキングダムに参加できるようにするには、どうしたらいいんだろう』と考え始めたところが、出発点なんですよね」
――そういうことだったんですね。一番先頭で声を出す以外には、森田さんからどんなことを伝えているんですか?
「僕から見ると、基礎という基礎が、まったくなんにもできていないんです。それはもう腹式呼吸から何から。それじゃあ『キングダム』の中ではパフォーマンスなんてまったく出せない。かといっていろいろなことを伝えると、結局パンクするだろうから、伝えることを一つに絞ろうと。それが、『声を張れ』ということ。要は"大声を出せ"ってことですけど、じつはこの"声を張る"ことの中には、滑舌、呼吸、度胸、集中力、感情表現といろいろな基礎の要素が詰まっていて、それが全部できないと大声って出せないんです。基礎ができていない人が大声を出すと、大抵の場合、何を言っているのかわからなくなる。だから、声を張ると滑舌がいかに大事かがわかります。そして腹式呼吸。じつはお腹だけでなく背中側にも空気を入れるんですが、ちゃんと背中側に空気が入っていないとロングトーンで声は出せない。そこで、いかに腹式呼吸が大事かもわかってくるんです」
――そうなんですね...!面白い!
「だから若手には、現場に入って最初の頃はとにかく『声を張る』だけを延々とやってもらいました。それも僕が『やれ』と言ったってしょうがないから、何よりもまず僕が彼らに見せて、"それよりも声が小さかったらこの現場は難しい"という空気を、あえて作っていくようにして。今、第6シリーズで携わってくれている子たちは、第3シリーズのときから参加してくれていて、大体6年間にわたって『キングダム』に出演し続けているんですが、それをやり続けてると、見事にみんなちゃんと基礎ができるようになるんですよ」
――すごい、「森田ズ・ブート・キャンプ」ですね。
「『キングダム』に関しては、まさに地獄のキャンプかもしれない(笑)。それと実は第5シリーズのときに、その若手たちを、一度、わざと突き放して距離を作ってみたんですよ。面倒も見ないし、飲みにも連れて行かない。そうしたら、次第に僕が言わなくても、徐々にみんなが自分自身で何かを考え始めたんです。そして今回、第6シリーズが始まってみたら、みんな、"マイク前を怖がらない"、いやむしろ"自信を持って"マイク前に立ってるんですよね。言われてやるんじゃなくて、自分から考えてやるようになってきた。ここまで来たら、もう次の段階に進めるなと」
――次の段階、というのは?

(C)原泰久/集英社・キングダム製作委員会
「今、6年間携わってくれている子たちは、かつては兵士Aとか、兵士Bとか名前のない役ばかりをやってくれていたんですが、それが現在では『キングダム』という作品の中で名前のある役を持つようになってきたんです。これがもし、『ほかの現場で名前のある役をもらう』っていうだけだと、その子にとっては、きっとその差分がよくわからないじゃないですか。同じ作品の中で、名前のない役から、名前のある役をもらうようになったということは、それだけ自分の成長を実感できるということでもある。彼らにとっては大きな自信と大きな喜びにつながってきますよね」
――お話を聞いていて、森田さんが名実ともに"座長"なんだな、という感じがしました。
「"素振り"をたくさんやってもらってたんです。本当に、"声を張れ"としか伝えていないので(笑)。でも、その"素振り"の大切さを彼らがだんだんとわかってくれて、ここまで来られたことが僕も嬉しいし、それがさらに彼らの成長のきっかけになったら素晴らしいなと思います」
■興奮と熱気が、作品をさらに面白くする|「キングダム」信

――森田さんが信を演じるときには、どんな思いでいるのでしょうか?
「信という人間が持っている心持ち、奥底にある想いというものは、僕の中にもしっかりあって、彼との共通項はものすごく大きいと思っています。その想いの出し方の苛烈さだったり、自分のめざすものに最大の熱量を持ってやるという部分がそっくりなんです。僕自身が抱いている気持ちや考え方を、信という人物を通してぶつけていると言えるのかもしれません」
――森田さん自身の想いを、信の言葉にのせていく。
「そうです。彼が言っていることはシンプルでわかりやすい。そして"おかしいと思うことはおかしい"とはっきり彼は言うんです。あの時代の中では、絶対に言っちゃいけないようなことにも、彼は『ちげえだろ!』という一言が発せる。それはやっぱり、一つのヒーローの姿だと思うんですよ。当たり前だと思われていることに対して、『当たり前じゃない』という一石を投じる。これは次回お話しする『ヒーローとはなんぞや?』にも通じているんですが。それをはっきりと体現するのが信。口先だけではなくみずから白刃を抜き、自分の正義を貫いていく。死と隣り合わせの中でも一生懸命に『生き抜いてやる』と、もがきながらも戦っている姿が僕は好きですね」
――森田さん的に、「このシーンが好き」という場面はありますか?
「趙との馬陽の戦いで三百人将に昇進した後のエピソードで、同じ秦側の別隊が、負けた側の高狼城に略奪行為をしている場面を見て、信がその隊の将を切ってしまうシーンですね。信が自分の奥底にある想いを言葉にすることって、実はそんなに多くはないんですが、そのときの信が本当に思っていること、『戦争だからといって、何をやってもいいわけじゃない』という気持ちを言葉にしていて、あれは心が打たれました。後々、黒羊丘の戦いで桓騎と揉めたときにも同じことを言っていて、百人将であろうと、千人将であろうと彼の中での正義は絶対に変わらないんです」

(C)原泰久/集英社・キングダム製作委員会
――たしかに、数少ない信の奥底にある想いが垣間見えるシーンのような気がします。
「そうですね。そうやってブチギレたときに、堰を切ったように出てくるものが、彼の行動原理でもあると思うんです。で、ヒーローや主人公を考える上では、行動原理ってすごく大切な部分なんですよ。『なんのために自分は生きているのか』『なんのために自分は戦うのか』『なんのために自分は人に出会うのか』っていう、行動原理をちゃんと理解することが大切で、信にとっては『汚ねぇことをしねぇ』っていう部分が、彼の行動の中で軸としてすべて繋がっているんです。
――森田さんのお話を聞いていて、より信のことが好きになりそうな気がしました!これまでの13年間、そして第6シリーズの放送開始と、あらためて今の率直な思いを教えてください。
「この13年間、一歩一歩積み重ねて、コロナ禍という苦しい時期も乗り越えて、少しずつ作り上げてきたのが『キングダム』という作品です。第1シリーズの放送開始当初は、今ほどの人気ぶりはまだなくて、なかなかうまくいかない、もどかしい部分もありました。それでも現場だけは熱量を失わずにガンガンやり続けた。それが少しずつ観ている方々にも伝わって、シーズンを追うごとにどんどん成長して、作品にしても、ファンの熱にしても、本当に分厚くなってきたと思います。老若男女問わず、相当な熱量を持って観て下さっているのが現場にもビシビシ伝わってくるんです。ふつう、視聴者の方々の熱量って、じつは現場にはなかなか届きづらいんです。なのに、それが伝わってくる」
――どんな瞬間にそれを感じるんでしょうか?
「多くはSNSの反響を見てですね。特に『キングダム』ファンの方の言葉って、すごく熱量が高いので、それがキャスト陣にとってはものすごくパワーやエネルギーになるんですよ。観ている人の反響......というよりも、興奮や熱気がそのまま伝わってくる、本当に稀有な作品だなと僕は思っています。みなさんが熱を持って観て下されば、その分だけ現場の士気も上がりますし、作品自体がどんどん良くなっていくと思います。アニメって、視聴者の方に育てられるものなんです」
――アニメは視聴者が育てる...!推し活が捗りそうな名言ですね!最後に、あらためて今シーズンについて、ファンの方々にメッセージをお願いします!
「今回の第6シリーズ、これまで以上に熱い展開になっていきます!ありがたいことに、みなさん 『キングダム』を観ると『秒で終わる』というふうに言って下さる方が多いんですが、安心してください。これからの話も、秒で終わります(笑)。それくらい、面白すぎてあっという間に駆け抜けていくので、決して見逃さず、天下統一に向けた秦と信の戦いを、楽しみにご覧ください!」

取材・文/郡司 しう 撮影/梶 礼哉














