声優・悠木碧 インタビュー#1「『ようやく彼女の精神年齢に追いついてきた』。『薬屋のひとりごと』猫猫との出会いを振り返って」

声優・悠木碧 インタビュー#1「『ようやく彼女の精神年齢に追いついてきた』。『薬屋のひとりごと』猫猫との出会いを振り返って」

『魔法少女まどか☆マギカ』の鹿目まどか役や、『幼女戦記』のターニャ・デグレチャフ役、『ヒーリングっど♥プリキュア』の花寺のどか/キュアグレース役、『薬屋のひとりごと』の猫猫役など、数々の人気作で主役を演じてきた声優・悠木碧さん。子役の頃から培ってきた表現に対する情熱は、ますます深みを帯び、作品への深い愛情とていねいな役作りでキャラクターの心情を鮮やかに描き出します。このインタビューでは全3回にわたって、悠木碧さんの出演作品やキャラクターに対する思いをひもときながら、その魅力に迫ります。

■オタ活と親友と過ごす時間がなによりの癒し

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――先ほど、動画用の質問の回答で「限度額いっぱいまで使えるカードがあったら何を買う?」っていう質問に対して「世界!」と答えていましたね(笑)。

「そう~!それ、メイクさんにも突っ込まれたんですけど『"限度額いっぱいに使える"って、"無限に使える"っていう意味じゃないよ』と(笑)。言われて『確かに......』って思っちゃいました」

――(笑)。さて、今日は出演作品や声優として大事にしていることをお聞きしていきたいと思いますが、早速の質問で休日はどんなふうに過ごされていますか?

「休日は、意外と何かをつくっていることが多いですね。お絵描きしたり、最近だと『ぬい活』がすごい好きで、お洋服をつくったりもしています。インスタでもぬい活の写真ばかり上げているんですよ。あとは映画を観に行ったり。私、好きな映画があるとずっと同じ映画を観に映画館に通ってしまうタイプで『デッドプール&ウルヴァリン』は、20回くらい観にいきました(笑)。配信も始まったので、最近はほぼほぼ毎日観てますね」

――20回?!それはすごいですね!

「応援上演も行きましたし、私は癒しをオタ活に求めているので、積極的に推しが頑張っている場所には足を運びたくなっちゃうんですよね」

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――ご著書「悠木碧のつくり方」では「マイティ・ソー」のファンだとおっしゃっていましたが、今の一番の推しでいうと......?

「ウルヴァリンかなぁ。いや、ソーもめっちゃ好きなので......迷う~!正直、好きの度合いでは比べられないですけど、『いま一番追いかけてるのは?』と言われたらウルヴァリンになると思います。歴史が長いし、過去作も見始めたらすごい量があるので、いまは必死になっていますね。あとは、ずっとやっている『FF14』。序盤でまかれていた種がガンガン回収されていく感じがあって、『暁月のフィナーレ』までのストーリーがとにかく美しいんですよね。こちらは10年来の友人と一緒にずっと遊んでいて、でも1回も会ったことがない(笑)」

――オンラインの友人ということですよね?! 画面ごしのご友人たちは、悠木さんだということはご存じなんですか?

「どうやら、私がパーティーにいないときに『絶対、悠木碧だよね?!』という話をしていたそうで、5年経ったくらいのときに直接聞かれました(笑)。その前から『本人に直接聞いたら失礼かも』ということで、結構、『じゃあ、俺が失礼ないように聞いて、それとなくみんなに伝えるよ』みたいな作戦を立てていたみたい。『超気を遣わせちゃってごめんね』という感じでしたけど......!」

――パーティーに悠木碧がいたらびっくりしますよね(笑)。ちなみに、リアルなお友達とはどんなことをして遊んだりするんでしょうか?

「私が仲良いのは声優の早見(沙織)ちゃんと(寿)美菜子ちゃんなんですけど、美菜子の家に集まって、みんなでボードゲームしたりとか、鍋をつっつき合ったりとか。お酒も飲まずに小学生の遊びみたいなことばかりしているんですけど、毎回、腹筋が筋肉痛になるくらい爆笑してます(笑)。元々、同世代でみんな頑張ってきたから、悩んでいることとか人生のフェーズの足並みがみんな揃っていたんです。それぞれが持ち寄る話に『めっちゃわかる~!』とか言いながら、忌憚なく意見を言い合って、語り合える相手というか。最近はそれぞれルートが分岐してきて、目指す先が少しずつ明確になってきた。それでも隣で並んで走っている感じが安心するし、すごくありがたい存在だなって思います」

■ドラマCDからアニメ化まで『薬屋のひとりごと』猫猫との出会い

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――2024年の話題作であり、2025年から第2期も放映する「薬屋のひとりごと」。悠木さんは主人公・猫猫(マオマオ)を演じていらっしゃいますが、まずは同作品との出会いから教えていただけますか?

「『薬屋のひとりごと』との出会いは、元々ドラマCDで猫猫役としてキャスティングをしていただいたのがきっかけでした。その頃から数えると、じつは結構長い付き合いになる作品なんですよ。収録をするたび、『いつか映像でも見てみたいね』『でも、作画コストハンパなさそうだよね(笑)』とよく話をしていました。ドラマCDとして、映像なしで声だけで猫猫を表現して......というのもすごく楽しいお仕事ではあったんです。とはいえ、『薬屋のひとりごと』って猫猫のモノローグがすごく多い作品じゃないですか。それに、ドラマCDが音だけに集中して聴いてもらうコンテンツだったこともあって、じつは最初、すごくドキドキしながら猫猫を演じていたんです。それなのに、猫猫ってすごい落ち着いているじゃないですか......!歳の割に(笑)」

――たしかに......!「本当に17歳なのこの娘?!」と思いますよね(笑)。

「頭がいいからなんでも飲み込んで成長するし、考えていることは達観しているし、何度も修羅場をくぐり抜けてるから肝も座ってるし(笑)。ドラマCDで猫猫を演じているときには、どっしりしている猫猫に対して、私のほうがドキドキばかりしていて、むしろ猫猫の落ち着いた感じに救われていたんです。キャラクターに支えられていた、というか。そんなわけでしばらくの間、彼女のほうがずっと立派で精神年齢が高い気がしていました。それが最近になってようやく、猫猫の精神年齢に自分が追いついてきた感じがして。ようやく『彼女の気持ちに寄り添ってあげられるかなぁ』と思えるようになった。ちょうどアニメ化の話をいただいたのが、そんなことを考えている頃だったので、その頃から改めて猫猫を演じられる機会をもらったことが、すごく嬉しくて」

――ドラマCDのときと、アニメでの演技とで悠木さんの中で何か意識的に切り替えているものというのはあるんでしょうか?

「一番大きな違いは『絵があるかないか』ですよね。アニメだと、目が大きくてかわいらしい、華奢な女の子であることがすぐにわかってもらえるので、その分、猫猫のドライなキャラクターを際立たせる様に意識しています。やっぱりアニメから観始めた方に『ジャスト』だと感じていただける演技をしたいなって。周りのキャストとのバランスであったり、どんな媒体で、どんな方が楽しむのかによって同じキャラクターでも味付けを変えることが、各現場で求められます」

――実際、第1期の放映では反響も大きかったと思います。どんな気持ちで受け止めていましたか?

「そもそも原作が大人気で、2つの雑誌でコミカライズされ、ドラマCDも人気......という作品なので、『アニメ化となったからには下手なものは世に出せないぞ......!』というのがキャスト陣含め、制作スタッフみんなの心の中にあったと思います。そんな気持ちで、最初のPVを観たときに作画、音楽の気合いの入り方を感じて『これだけのクオリティなら、きっと世の中にポジティブに受け入れてもらえるな』と。そしたら、思った以上にみんなに大きく響いて。『いま出せばきっと売れるよ!』という出し方ではなくて、丁寧に丁寧に愛されて育まれた作品として世に出たものなので、そうやってしっかり作り込まれた作品が世の中の人の心に響いたというのは、作り手の一人としても、すごく感動しました」

■文字通り、猫みたいな存在

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――ドラマCDから猫猫を演じ続けてきて、悠木さんは猫猫という人物をどんな目で眺めていますか?

「かわいいかわいい猫のような存在......ですかね(笑)。もちろん彼女のことは、創造主である日向夏先生が一番わかっていらっしゃると思いますが、たぶんその次くらいに、あの猫の気持ちを汲んであげられるのが私なんじゃないかな。どこか『うちの猫』というような気持ちで彼女を眺めている気がします」

――猫猫の猫らしさ、どんなところに感じますか?

「どこか無性別的なところがあって、女性からも男性からも興味を持たれて。後宮の中を自由に歩き回れる自由さみたいなのもあって、みんなついうっかり、後宮の中で彼女に愚痴をこぼしてしまったり、重要な情報を口を滑らせてしまうんですよね。本人のサバサバとした気質も、どこか猫っぽいし(笑)。極め付けは壬氏さまとの関係。猫猫の気持ちが一向に壬氏さまに向いてこないじゃないですか。それは、演じている身としても『どうやって表現しようかなぁ』と考えるポイントではあるんですけど、ふと『飼い主と猫の関係だ!』というのが、私の中ではしっくりきたんですよね。壬氏さまは猫猫からするとエサをくれる飼い主で、へこんでるときだけは、撫でさせてあげたり。そんな関係性が微笑ましくも、飼い主と猫っぽいなと感じています」

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――壬氏さまへの対応に心苦しくなったりはしませんか?

「心苦しいのとは違うのかもしれないですけど、ある収録で、猫猫が壬氏さまにツッコミを入れる場面があったときに、どうやら私がちょっと優しい声を出してしまったらしく。そうしたらディレクションで『もっと冷たく!呆れてください!』って言われて、ちょっとだけ情が湧いちゃったのを反省したことがありました。だから、あくまで壬氏さまはチュールをくれる人。チュールをくれないときは別に......という姿勢でいないと(笑)」

――表現がめちゃくちゃ的確ですね(笑)。第2期の開始にあたって、第1期のどんな部分を見返しておいてもらいたいですか?

「え~、どこだろう......!第19話の『偶然か必然か』で猫猫がぶん殴られるお話、かなぁ。その後、壬氏が猫猫を抱き抱えていったり、祭事の中になぜ壬氏がいたのかだったり。『壬氏って一体何者なの?!』という気持ちを大きくしていっていただければなぁと思います。ぜひみなさんにも第2期を観る前、観ながらでも復習的に見返していただけたらなと思います」

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――「薬屋のひとりごと」第2期に向けて、読んでいただいている方にメッセージをいただけますか?

「『薬屋のひとりごと』は、後宮内でのさまざまな人間模様、そこで起こるミステリーを解き明かしていく推理、その二つが物語の中心になったすごく面白い作品です。第1期もさまざまな出来事があったと思いますが、第2期では到底、猫猫一人では解決できないような大きな出来事がどんどん起きていきます。そんな中でも、猫猫はいつもと相変わらずで、地に足をつけて冷静さを失わない。そこが彼女の魅力でもあり、いろんな人に応援してもらえる愛らしさかなと思います。あと第2期は壬氏も超頑張りますので、猫猫と壬氏の二人をはじめ、後宮で働くいろいろな人物も一緒に応援していただけたら、嬉しいなと思います」

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取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃

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