声優・鬼頭明里インタビュー#1「『君はこのままだと行き詰まるかもしれない』鬼頭明里の声優人生を変えた、アニキの言葉」

声優・鬼頭明里インタビュー#1「『君はこのままだと行き詰まるかもしれない』鬼頭明里の声優人生を変えた、アニキの言葉」

『鬼滅の刃』の竈門禰豆子役、『虚構推理』の岩永琴子役、『地縛少年花子くん』の八尋寧々役など、数々の人気作品で印象的なキャラクターを演じている声優・鬼頭明里さん。天真爛漫な少女のハイトーンから冷静で理知的な大人の女性のロウトーンまで、幅広い声域と繊細な表現力で、さまざまなキャラクターに命を吹き込みます。さらにアーティストとしても活躍し、出演作品の主題歌からキャラソン、オリジナルソングまでその高い歌唱力で歌い上げ、2024年にはアーティスト活動5周年の記念ライブも敢行。最近では作詞も手がけるなど、その多彩な才能を発揮しています。このインタビューでは、声優、そしてアーティストとして活躍する鬼頭さんの、進化する表現の軌跡を全3回にわたってお届けします。

■ルーツは『ドラゴンボール』っ子

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――小さい頃は、どんな気質のお子さんでしたか?

「よく友達と外で遊んだり、あまり物怖じせずにいろんな人と話しかけに行ったり、いまよりも、じつは幼少期の方が活発な子どもだったかもしれません。親からも『スーパーで隣にいなくなったと思ったら、知らないおじさんと会話してることがよくあった』と言われます(笑)。ただ、そうは言っても人見知りではあるんですよ。いまはだいぶ落ち着きましたけど。自分が興味のある人に対しては積極的に話しかけられるけど、前情報がまったくない人に対しては無理かな、っていうくらい」

――逆にいまとあんまり変わっていないと思う部分はありますか?

「自分が『良い!』と思ったものを人にすすめるのが好きなんですけど、それは昔から変わっていないですね。そのとき自分がハマっているものをクラスに広めたり、流行らせたりすることが多かった気がします。高校生のときは、私が好きなマンガを学校に持っていって、みんなで回し読みをしてもらったり」

――小さい頃からアニメが好きだったそうですね。

「そうですね。ちっちゃい頃からアニメがすごく好きで、自宅ではケーブルテレビでアニメ専門チャンネルが一日中観られたので、ずっとテレビの前にかじりついてアニメを観ていました。特定のジャンルというより、放送されていたら『とりあえず観る』というスタンス(笑)。アニメ専門チャンネルで昔の作品もけっこう放送されていたので、ちょっと古い作品でも気にせず、もう手当たり次第に観まくっていました。そのうち、深夜アニメが放送されていることも知って、録画もしていたので、放送されているアニメはほとんど全部、観ていたと思います」

――その中でも思い出深い作品というと?

「最初にハマった記憶があるのは、『ドラゴンボール』。毎日、夕方に放送されていて、いつも楽しみにしていました。気になりすぎて、我慢できずにマンガで続きを読んだりして、一人でセルフネタバレをしたりしていました(笑)。『ドラゴンボール』はいま見ても、キャラクターデザインがおしゃれで、ビジュアルがすごいなと思います」

■アニキとの共演がターニングポイントになった|『地縛少年花子くん』八尋寧々

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――「地縛少年花子くん」のアニメシリーズではED曲も歌われていますよね。同作品との出会いからお聞きできますか?

「元々、マンガの第1巻が発売されたときにいわゆる"表紙買い"をして、面白い作品だなと思ったのが『地縛少年花子くん』との出会い。『アニメ化するならすごくやりたい』というのは、アニメ化が決まる前から思っていました。そして2020年にアニメ化することが決まって、オーディションを受けることになったんです。そんな気持ちだから、オーディションに受かったとき、すごく嬉しかったのを覚えています。ちなみに、花子くん役の緒方さんはオーディションの段階ですでに決まっていて、そのオーディションでは全員が『緒方さんとお芝居をする』というめずらしいスタイルのオーディションでした。だから緒方さんはずっとスタジオにいて、八尋寧々の役を受ける人たちが、どんどん入れ替わりで掛け合いしていくという感じ」

――すごい豪華なオーディションですね......!緊張はしませんでしたか?

「いや、むしろ緒方さんが花子くんを全開で演じてくださるので、私としては掛け合いもやりやすかったです。ただ寧々という役が、自分の中でのイメージが、私の地声とすごくかけ離れたキャラクターだったので、めちゃくちゃ高い声を作ってオーディションにのぞんだんです。それがいいのか悪いのかもわからなくて、客観的に聞いたら無理しているように聞こえるんじゃないかという不安も大きかった。でもありがたいことに選んでいただいて、そこでようやく『この声でよかったんだ』って思えた。もう4~5年前になりますが、第1期の頃はそんな思いもあったのですごく楽しく寧々を演じさせていただいた記憶があります」

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――現場での雰囲気、アフレコ時の共演者との思い出などはありますか?

「現場はすごく仲良くて、みんなで飲みに行ったりもよくしていました。アフレコでいうと、やっぱり緒方さんとの共演が、私の声優人生に大きく影響を与えていただいたと思っています。それまで私は、マンガを読んでいて頭の中でイメージする声を再現するという意識で、アニメのアフレコにのぞんでいたんです。でも、緒方さんは現場での共演者のお芝居だったり、相手との感情だったりをすごく大事にしている役者さんで。その緒方さんから、第1期が録り終わったあとの飲み会で『君はこのままだと行き詰まるかもしれないな』と言われたんです」

――行き詰まる......!かなり直球の言葉で言われたんですね。

「そうなんです。で、私が『なんでですか?』って聞いたら『録り直しでもう1回やるときに、私がお芝居をどれだけ変えても同じものが返ってくるんだよね』と。言われてみると、私、確かに相手のセリフを聞けていなかったんですよね。私の中で『寧々はこう喋るもの。こういう感情で喋るんだ』と考えて、私と寧々という『個』でお芝居をしていた。でも掛け合いって本来、相手のセリフを聞いて、それに対して返すことで出来上がる『和』でお芝居をするものなんですよね。そのことに、緒方さんの言葉で気づきました。それ以来、相手の感情やお芝居が変わるなら私のお芝居も変わるはずだと意識するようになり、相手のセリフを聴いて、その反応としてセリフを喋るようになりました」

――お芝居への姿勢というか、考えること、気にすることがガラッと変わりそうですね。 

「それまではアフレコ前の台本チェックも『ここの台詞はこういう感情』『話の流れとして、ここはこういう言い方』というのを家で決めてから練習していたんです。でも、それをしすぎると演技が決め打ちになってしまうので、その準備は最低限でいいのかなと思うようになって、逆に練習量は減らしていきました。ただ、現場では相手のセリフに対してとっさに感情をのせて反応してお芝居をしなければいけないので、その変わりキャラクターの感情や性格のほうを、より考えて自分の中に入れるようにして」

――やり方を大きく変えた。変えてみて、やりづらさはなかったですか?

「むしろすごくやりやすくなって、音響監督さんのディレクションに対しても、現場でより柔軟に変えることができるようになりました。家でお芝居を決めてくると、『自分の中ではこう』という固定観念がなかなか消せず、現場のディレクションにもあんまり応じられないことがあったので。それで、最近になって 『地縛少年花子くん』第2期で改めて緒方さんと共演したときに『自由に楽しんでやれるようになってるね』と言っていただけたんですよね。あのとき、緒方さんにかけていただいた言葉で、ちゃんといい方向に自分が変われていたんだな、っていうのが『地縛少年花子くん』を通じて数年越しに確認できたような気がしました」

■寧々は、物語の明暗のバランスをとってくれる存在

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――声優として大きく成長できた経験となったすごく素敵な話ですね。それがまた、地声とは一番かけ離れた「八尋寧々」だったというのも面白い(笑)。

「年齢も15歳でこの声のトーンだから『そのトーンから外れないように』というのを、第1期の頃はずっと気に留めながらお芝居をしていた。だけどそれから4年間で『そこまで声を作らなくてもいいのかな』と思うくらいには、私自身も変わりました。基本の軸が定まっていればたまに低い声が出たっていいし、『寧々の声帯は私の声帯』でもあるから、ちょっとくらい外れたって大丈夫。声を作ることよりも感情を大切にする。そう思えるようになってからは、もっと自由に楽しくお芝居ができるようになった気がします」

――同じ八尋寧々というキャラクターでも、第1期と第2期で鬼頭さんの心持ちは変わっていたんですね。ちなみに役作りという意味では、第2期はどんなことを意識してのぞんだんでしょうか?

「第2期が始まる前の打ち合わせで、みんなで話しているときに監督から『第2期はずっと重たくてシリアスだけど、寧々だけはコミカルに、明るくしたい』と言われたんです。たしかに、私もマンガを読んでいて『寧々の明るさがあるから、物語が重たくなりすぎなくて助かる部分があるな』と感じていました。だから、ほかのキャラクターのダウナーな感じに引っ張られないように。そこは監督のいうお芝居になるように、意識してのぞみました」

――そうやって作品全体のバランスを取っていたんですね。作品全体を通して、印象に残っているシーンなどはありますか?

「これはアフレコ込みで思い出深いんですけど......花子くんが寧々の中に入る、というシーンがあるんですよ(笑)。

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このシーンは特に強く意識したりせず、『花子くんが入っているお芝居をすればいいのね』くらいに思っていたんです。だけど当日アフレコに行ったら、緒方さんに『今日、あのシーンやるんでしょう?』って言われて。どのシーンのことだろうと思ったら『俺のモノマネするんでしょ?』って言われて(笑)」

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――全然気にしてなかったのに、当日になってアニキからものすごいプレッシャー(笑)。

「そうなんですよ!(笑)『そうか! このシーンって私が緒方さんのマネをするってことなんだ!』と思ったら、ものすごいプレッシャーを感じ始めて、そのまま収録に突入(笑)。アフレコが終わった後に、緒方さんからは『なるほどね。鬼頭にはそう聴こえるんだ』と言われて......緒方さんのあの言葉はどういう意味だったのか、いまでも気になっている思い出深いシーンです(笑)」

――めちゃくちゃ面白いエピソードをありがとうございます(笑)。鬼頭さんが感じている「地縛少年花子くん」の魅力を教えていただけますか?

「そもそも、まず原作がめちゃくちゃ素晴らしい。絵もきれいだし、お話もすごく深くて壮大。『どれだけ伏線が張り巡らされているんだ!』と言いたくなる物語ですよね。それがアニメになったことで、ほかのアニメではあまり観ないような個性的な映像表現も楽しめるし、あの世界観もより深く感じてもらえる作品になったと思います。少なくとも、寧々を演じるうえでは『地縛少年花子くん』の魅力が、観ている人により伝わればいいなと思ってお芝居をしているつもりです。シリアスな場面も多いけど重たくなりすぎないのも、またいい。それこそ寧々がずっと明るいし、コミカルなシーンも頻繁にはさまってくるので、テンポよく気持ちよく観られるのは、アニメ版ならではの魅力になっていると思います」

――ありがとうございます。最後に、鬼頭さんにとって八尋寧々はどんな存在ですか?

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「声優として、私に貴重な経験をさせてくれた存在です。元来、地声が低いので、高い声でお芝居をすることへの不安が大きかったけど、寧々を演じてみて『私、こんなに高い声が使えるんだ』と初めて気がつきました。そして、何より緒方さんの言葉に出会ったのもこの作品。寧々がいたから表現の幅が広がったし、私自身が声優としてステップアップする機会をたくさんくれた、大事な存在だと思っています」

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取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃

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