小野賢章さんのかっこいい声とチュパカブラの見た目がミスマッチで面白い『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和GO』【松井玲奈】
アニメ 見放題連載コラム
2025.06.23

ここ数年、2000年代作品のリバイバルやリメイクが盛んに感じる。当時学生だった私にとってそのどれもが「な、懐かしい......」の気持ちで胸がいっぱいになる。触れるたびに当時を思い出すので、まるで作品がタイムカプセルの様だと感じながらも、今改めて作品に触れることを楽しんでいる。そんな中、彗星(すいせい)のごとく再来したのが『ギャグマンガ日和GO』である。こちらはリメイクではなく5つ目になるシリーズであるが、懐かしさあふれる気持ちで視聴した。
テンポの良さと予測不能の斬新ギャグマシンガン
作品は5分以内に収まるショートアニメ。ちょっとした隙間時間にサクッと作品に触れられるのがいいところ。しかもテンポが異常にいい。セリフもコマも次々に変わっていくので画面にくぎ付けになっている間に1話が終わっていく。
第1話「名探偵すぎるよ!うさみちゃん」では、約5分間止まることなくキャラクターがしゃべり続ける。一体、脚本はどうなっているんだと驚きながらも、懐かしいうさみちゃんとクマ吉くんのストーリーから始まることをうれしく思う。性癖が特殊なクマ吉くんの予測不能のやらかしを、うさみちゃんがどうやって解決するのか、短い時間ではあるが大いに楽しむことができた。
会話の掛け合いが妙なのは第4話「麻雀」。麻雀のルールを誰一人知らないまま進行するボケが、ボケのまま突き進んでいく様に、思わずふふっと笑ってしまう。かくいう私も麻雀のルールはドンジャラ程度でしか知らないので、キャラクターたちと共に「そ、そうかもしれない......」と感じてしまう。
クセが強すぎる!個性的なキャラクターたち
『ギャグマンガ日和』に触れたことのある人であれば、ジャージ姿の聖徳太子と小野妹子、俳句作りの旅に出る松尾芭蕉と河合曽良(かわいそら)と聞けば、ああ、あの!と思い出す人もいるだろう。そこに加えて、うさみちゃんとクマ吉くんもなかなかクセの強いキャラクター。しかし、今回のシリーズで私の一番のお気に入りは、第2話「ブレーメンの音楽隊」に出てくるチュパカブラ。
ブレーメンの音楽隊といえば、馬、犬、猫、雄鶏の4匹が織りなす有名な物語である。人間を驚かすために、どの順番で連なるかの会議をしているさなか、ふっと現れるのがチュパカブラ。4匹が「いつからいたの!?」と驚いたのとともに、私も「本当に!」と思わず声を上げる。黒々しく、鋭い目つきのチュパカブラは、ビジュアルは怖いのだが、あまりにも声が良くてそれがもう面白い。いい声で淡々と積み上がるべき順番を述べるのだが、彼の言葉には裏があり、それが物語に波乱をもたらす。CV小野賢章さんのかっこいい声とチュパカブラの見た目がミスマッチで、コメディーになっているので、ぜひこの回だけでも視聴して大いに笑ってもらいたい。
16:9にとらわれていない、画角センスの良さ
この作品の個性はギャグでもあり、キャラクターの個性でもあるが、私が今回強く感じたのは画作りの素晴らしさ。16:9にとらわれていない画作りに最初は、SNS用に縦動画を作りやすくしているのだろうか?と思っていたのだが、見るほどに不思議な違和感。カットが変わるごとに上下が黒く塗りつぶされたり、片側の縦ラインが妙に斜めに入っていたり。そうか! これは漫画のコマ割りを意識して画作りされているんだ! そう気が付くとめくるめく変わる画面がアニメーションでもあり、音声付きの漫画を読んでいる気持ちになってくる。
全て16:9で作ることだって可能なのに、あえて表現に制限をつけることで、作品の世界観が広がっていく演出が面白いと感じた。改めて全てを見返すと、あれもこれも全部漫画のコマ割りになっている。だからこそ、『ギャグマンガ日和』らしい独特のギャグテンポ感が生まれているのかもしれない。
『ギャグマンガ日和』を見て笑っていると、何年経っても笑いのツボは変わらないものだなと感じる。くだらないと一掃されてしまえばそれまでだが、そのくだらなさが日常にささやかでも色を付けてくれる。気が付けば、短いけれど印象的なOPソングを口ずさんでいる自分がいる。たった数分で人を笑顔にしてくれるこの作品が、私は大好きだ。