魅力的な登場人物が多く登場する中でも特に惹かれたのは...「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」【松井玲奈】

松井玲奈

松井玲奈 (役者、小説家)

役者、小説家。アニメ好きとしても知られる松井玲奈が毎回1つの作品を取り上げて、その魅力を再発見する。

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松井玲奈

松井玲奈 (役者、小説家)

役者、小説家。アニメ好きとしても知られる松井玲奈が毎回1つの作品を取り上げて、その魅力を再発見する。

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魅力的な登場人物が多く登場する中でも特に惹かれたのは...「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」【松井玲奈】

連載開始30周年を迎える「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」。週刊少年ジャンプで連載された名作のひとつでもあるこの作品が、2023年にスタッフ・キャストを一新し再アニメ化されました。そして2024年10月より第2期「京都動乱」がスタート。

「るろうに剣心」が最初にアニメ化された1996年当時、私はまだ5歳。兄が夢中で見る横に並んで、お侍さんのかっこいいアニメだとぼんやり感じながら見ていた記憶がありますが、いやいや! かっこいいなんてもんじゃない! 人情味にあふれた心揺さぶる素晴らしい作品じゃないですか! 当時リアルタイムで追いかけていなかったことを悔やみながら、大人になった今出会ったからこそ、こんなにも楽しめているのではないかと考え、今回はこちらの作品を皆さんにご紹介したいと思います。

今回のポイントは3つ
・剣心と仲間たちの絆
・人の弱さを描き切る
・結局こういうキャラが好き

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(C)和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会

ポイント1つ目は「剣心と仲間たちの絆」

第1期「序幕東京」。明治初期、主人公・緋村剣心は人を斬ることができない逆刃刀を腰に携え、不殺(ころさず)を誓う流浪人(※あてもなくさまよう人)として、困っている人を助けながら新しい時代を生きていました。しかし、大久保利通が暗殺されたことで状況が一変。この暗殺の裏に潜む志々雄真実の暗躍を知った剣心は、東京を離れ、京都に向かうことに。新たな旅立ちの物語が、今回ご紹介する第2期「京都動乱」です。

1期の話になってしまうのですが、剣心に特別な感情を抱いている神谷薫は、彼から東京を離れると告げられ落胆します。彼女の流れ出る涙から、特別に思う人が危険を犯し、自分の元を離れていってしまう苦しさがあふれ出ており、胸が苦しくて仕方がありませんでした。けれど、彼女は自分を奮い立たせ、剣心の後を追い京都へ向かいます。東京で共に時間を過ごした左之助もまた、剣心を追い京都へ。彼は剣心の足手まといにならぬよう、京都へ向かう道中で自分の拳をさらに磨くことを誓うのです。

最初は一人の流浪人だった剣心が仲間に思われ、離れていても目指す場所は同じと、それぞれが京都を目指すことを決める2期序盤はなかなかの熱い展開でした。もちろん、あらすじを知っていれば2期からの視聴も可能ですが、1期から見ることで登場人物たちの関係性が積み重なり、この作品の魅力をより知ることができるのではと思います。

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(C)和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会

ポイント2つ目は「人の弱さを描き切る」

京都へ向かう旅の道中、剣心は『新月村』にたどり着きます。そこは志々雄の配下・尖角によって統括され、村人は見せしめに殺され、つるし上げられた目も当てられない惨状。むごたらしく殺された人を弔おうとする剣心に、村人たちは「殺された村人を下ろせば、村を滅ぼされる」と彼を止めようとします。

人は自分が歯向かうことのできない巨大な力や、ひどい暴力の前では萎縮し、自らの生を守るため、時として弱くなってしまう生き物であり、そのためには他者の命が失われることもいとわなくなってしまう。短い場面ではありますが、人の弱さをここまで描くのかと、画面に釘付けになりました。

「これが新時代の日本の姿になる」と告げられた時、剣心はこの村を救うことを決心し、何があっても志々雄を止めなくてはと心に誓うのです。いつの時代であっても、大きな権力争いに巻き込まれるのは力のない一般市民。だからこそ、彼らのような力を持たぬ人を守ることができる、深い痛みを知った剣心のような人が必要不可欠。人のために自らを犠牲にして動くことができる彼と、ただ現状に身を縮め、耐えることしかできない村人たちの対比もよく描かれていると感じました。

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(C)和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会

ポイント3つ目は「結局こういうキャラが好き」

作品を見ていると、1人は「あ、この登場人物好きかも」と惹かれる人がいるものです。「るろうに剣心」にも魅力的な登場人物が多く登場しますが、その中でも特に惹かれたのが「京都動乱」で、剣心と対峙(たいじ)することになる瀬田宗次郎です。

常に笑顔を浮かべ、楽しそうな話し方をする彼。よく「あの人って目が笑ってないよね」なんて言いますが、彼の場合は、顔は笑っているのに「言葉が笑ってない」タイプ。それもそのはず、彼は感情が欠落し、喜怒哀楽の「楽」の感情以外を失っているのです。(いいですね。そういう人、好きです)と直感的に感じてしまう、こじらせタイプのオタク。ええ、私です。

感情が欠落しているから「殺気」や「闘気」もないときた。剣を握り、穏やかな笑みを浮かべている彼の前では剣心も相手の気を読めず、どう動けばいいものか戸惑ってしまう。29話では、剣心と宗次郎の一騎打ちが描かれますが、力は互角。剣心は折れた逆刃刀を手に驚きが隠せない一方、宗次郎は「自分と同じくらい剣の速い人がいてうれしいなぁ」なんて様子で楽しそう。え、好き。今後、剣心が宗次郎とどう戦っていくのか、果たして感情が欠落した彼が「楽」以外の感情をのぞかせる瞬間が来るのか、ここからの展開が楽しみでなりません。

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(C)和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱」製作委員会

第2期がJ:COM STREAMで絶賛配信中の「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」。お気に入りの登場人物ができたことで楽しみが増したところではありますが、志々雄を制すベく京都を目指す剣心の元に、薫や左之助がどのように合流してくるのか。毎週の配信を精神統一しながら待ちわびたい所存です。