声優・梶裕貴がいまだから言える『進撃の巨人』のあの名場面、名セリフを振り返る
アニメ インタビュー
2024.11.08
『進撃の巨人』のエレン・イェーガーをはじめ、『七つの大罪』のメリオダス、『僕のヒーローアカデミア』の轟焦凍、『鬼滅の刃』の錆兎など、数々のヒット作で主役や人気キャラを演じる梶裕貴さん。その透明感ある声と繊細さながらも力強い演技は、キャラの魅力を深く引き出し、その存在に命を吹き込みます。その圧倒的なパフォーマンス力をもつ梶さんが大事にしているのが、挑戦心を持ち続けること。未来を見据え、つねに新しいことに挑戦し続ける自身のことを「つねにファイティングポーズを取っている」と語ります。このインタビューでは全3回にわたり、梶裕貴さんの出演作品に対する思いや、声優としての歩みをひもときながら、その人となりに迫ります。
(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会
■あの名場面はどんな気持ちでのぞんだ?
――アルミンとエルヴィン団長が瀕死のときにリヴァイに詰め寄るシーンでのエレンは、作中のエピソードとしても大変印象的なんですが、そのシーンを演じる上での気持ちをお聞きできますか?
「僕も『白夜』の回は印象的で、よく話題として取り上げるのがこのシーンです。本当に、つらくて悲しくてどうしようもないエピソードでした。それまでは絶対的な存在だったリヴァイ兵長に、初めてエレンがたてつく。親友の命がかかっているなかで、理性や「こうあるべき」なんていうのは普通考えられませんし......あの行動も、実にエレンらしいなと思います。
本来、その重さに差はないはずの命ですけれど、それでも、どちらかを選択しなければいけない状況なんです。その緊張感はもちろん、演じているなかで、自然とエレンの気持ちに重なりすぎて、彼と一緒に涙を流しながらリヴァイ兵長に訴えたことを覚えています」
(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会
――すごく熱いですね、さっきから鳥肌が立ちまくってます......! あと、最終話でアルミンと"道"の中で喋っていて「ミカサに男ができるなんて嫌だ!」と初めてミカサに対する思いを口にするシーンのことも、お聞きしたいです!
「気になりますよね(笑)。エレンがミカサのことを本当のところどう思っていたのか。僕らも先の展開を教えてもらっていなかったので、実は、一読者として最終話を読むまで、エレンの本当の気持ちがわからなかったんですよ。
当然、自分の中でのエレン像はありますし、なければ演じることはできないわけですが、果たして、そのイメージで合っているのかはまったくわからない。だって、あの諫山先生ですよ?(笑)。すごく不安な数年間でしたし、演技するうえで、その答えが見えていないのは難しい。
なので、そのぶん最終話を読んだときに『ああ、間違ってなかったんだな』『自分はエレンのことを履き違えていなかったんだ』という安堵感が押し寄せてきて......涙が止まりませんでした。だから、最終話のアフレコのときには『ようやく本音でしゃべれる!』という感覚でした。
ただでさえ、The Final Seasonでのエレンは、別人を装うというか、人ならざるもの的な雰囲気でしたよね。しかも、巨人の力を統べる力をもち、すべてを知っている"始祖の巨人"として、どこか達観した空気感もまとっていなければいけない。
だからそのシーンで、ようやくその武装......メッキを剥がして、ありのままの人間くさいエレンで本音が言えたときは、どこか肩の荷が降りた気がしましたね。でも、それは相手がアルミンだったからこそ言えたんだと思います」
(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会
――もしなれるなら、なってみたい巨人はいますか?
「え、なんだろう......?あまり考えたことのない切り口の質問かもしれません(笑)。"戦鎚の巨人"かなぁ。登場時間は短いんですけど、フォルムといい能力といい、シンプルに巨人の中ではかっこよくてズルいですよね(笑)。あとは、やっぱり"超大型巨人"はインパクトあるかな、と。『その目線から眺める世界は、一体どんなふうに見えるんだろう?』とか想像したりします。でも......体がめちゃくちゃ熱くて痛そうだから、怖いです。あとは何気に"ロッド・レイス巨人"もインパクトがあり印象に残っていますね(笑)」
――すごい真面目に考えてくださって、ありがとうございます!(笑) 最後に11月の劇場版公開にあたって、梶さんからファンのみなさんにメッセージをお願いします!
「今回の『劇場版「進撃の巨人」完結編 THE LAST ATTACK』は、The Final Season 完結編の前後編のカットをブラッシュアップ・再構築した、まさにアニメ『進撃の巨人』の締めくくりにふさわしい作品になっていると思います。
そもそもTV放送の段階で、劇場版として公開できるレベルのフィルムを制作してくださっていたわけで...それをあらためて、映画館の大きなスクリーン、迫力ある音響設備で体感できるというのは、本当に幸せなことですよね。映画館で鑑賞するべき価値のある作品だと、自信を持って、ここに宣言いたします。
作品の魅力も、長い年月をかけて作り上げてきた歴史も、そのすべてが凝縮された一本になっておりますので、ぜひとも映画館で、『進撃の巨人』の集大成を見届けてください。よろしくお願いいたします!」
(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会
取材・文/郡司 しう 撮影/小川 伸晃