バレンタインデーに見たい恋愛映画3選|二宮和也主演『アナログ』ほか
2026.02.07
2月14日のバレンタインデーは、3世紀頃のローマ帝国で、皇帝の命令に反して、兵士たちの結婚を秘密裏に行った聖職者ヴァレンティヌスが処刑された日に由来する、世界中で愛を祝う日。日本では、諸説あるが1950年代に製菓会社のキャンペーンがきっかけで、女性から男性へチョコレートを贈る習慣が広まったとされ、近年では"友チョコ"として女性から女性に贈るなど日本独自の広がりを見せている。今回は、日本映画専門チャンネルで2月に放送される作品の中から、そんな"愛"にあふれた時季にぴったりの、"愛"だけではないラブストーリー3作品を厳選して紹介したい。
■便利な現代では失われてしまった"アナログ"ゆえの貴重さを再確認
ビートたけしが初めて書きあげた恋愛小説を原作に、二宮和也が主演、波瑠がヒロインを務めた映画『アナログ』(2023年)は、愛する人を思いつづける心に涙する感動のラブストーリーだ。
二宮演じる主人公のデザイナー・水島悟は、ある日、自身が内装を手がけた喫茶店で謎めいた女性・美春みゆき(波瑠)と出会う。自分と価値観が似たみゆきに惹かれた悟は意を決して連絡先を尋ねるが、彼女は携帯電話を持っていないという。そこで、2人は連絡先を交換する代わりに、"毎週木曜日にこの喫茶店で会う"という約束をする。その後、2人は限られた時間の中で静かにゆっくりと丁寧に関係を紡いでいき、ついに悟はみゆきの素性も知らぬままにプロポーズすることを決意するのだが、彼女は突然姿を消してしまう。
時が経ち、なぜみゆきは突然姿を消したのか、彼女が隠していた過去、秘められた思いが明かされていくうちに、いつの時代も変わらない「大切な人にただ会える喜び」という"愛の原点"が静かに心を満たしていく珠玉の感動作だ。愛する人への純粋な思いの美しさもさることながら、気軽に連絡がとれる便利な現代では失われてしまった"アナログ"の"不便だからこその貴重さ"を再確認させてくれる、現代の若者にも、かつての若者にも"刺さる"一作だ。

■恋愛を軸に描かれる「傲慢」と「善良」の葛藤と本音
男女それぞれの視点でリアルな恋愛観と価値観を描いた、辻村深月による同名ベストセラー小説を、藤ヶ谷太輔と奈緒のW主演で映画化した『傲慢と善良』(2024年)は、最後にたどりつく"一生に一度の選択"を描いた恋愛ミステリー。
藤ヶ谷演じる西澤架は、長年付き合った彼女に振られたことを機に、マッチングアプリで婚活を始める。そこで出会った、奈緒演じる控えめで気の利く坂庭真実と付き合い始めるが、1年経っても結婚に踏み出せずにいた。そんな中、真実からストーカーの存在を告白され、「彼女を守らなければ」とようやく婚約するのだが、真実は突然姿を消してしまう。
真実の行方を探るべく彼女の両親や友人、同僚、過去の恋人を訪ね歩くうち、架は知りたくなかった彼女の過去と嘘に直面。見えていなかった真実の"善良さ"の裏側と、自分自身の"傲慢さ"に気付いていく。
"婚約者を探す"という愛のかたちを主軸に置きながらも、「傲慢」と「善良」という切り口で、恋愛や結婚、自己と他者との関係性について深く考えさせられるところが特徴。繊細な心理描写で読者の心に深く寄り添いながら、人生の痛みと希望を描いた辻村作品ならではの心の機微を、藤ヶ谷と奈緒が見事な演技で表現しており、ハードルの高い実写化を成功させている。
そんな2人が繊細かつ丁寧に紡ぐ心の交流によって描かれる「『傲慢』と『善良』の違い」や「自己と他者の間に生まれる『傲慢』と『善良』」、それに端を発する「現代の恋愛や人生の在り方」など、誰もが心をかき乱され普遍的なテーマを描く本作は、必見の一作といえる。

■「王道胸キュン映画」を敬遠している方にこそお薦めの良作
最後は、上記の2作品とは大きくテイストが異なる青春ラブコメディ映画『あたしの!』(2024年)を取り上げたい。この作品は、「ヒロイン失格」や「センセイ君主」、「君がトクベツ」といった大ヒット作を多数生み出しているラブコメ漫画界の女王・幸田もも子による同名漫画を、ともに映画初出演で初主演となる渡邉美穂とINI・木村柾哉のW主演で実写化したもの。猪突猛進な主人公と全校女子の憧れで学校一の超人気者による恋愛模様を描いている。
思ったことは即行動、真っ直ぐで嘘がつけない女子高校生・関川あこ子(渡邉)が高校2年生になった新学期の初日、学校一の超人気者・御共直己(木村)がまさかの留年により、あこ子と同学年になる。直己に一目ぼれしたあこ子は早速告白するが、「彼女をつくる気はない」と、あっさりふられてしまう。落ち込むあこ子だったが、直己の親友・成田葵央(山中柔太朗)から直己が彼女を作らない理由を聞いて、直己を好きでいつづけようと心に誓う。
あこ子の一途で真っ直ぐな思いは、次第に直己の固い心を解いていくのだが、あこ子と直己の"LOVE"要素だけではなく、あこ子とあこ子の親友・谷口充希(齊藤なぎさ)との友情関係の変遷も見どころ。「あこ子の恋を応援していたはずの充希も、実は直己に思いを寄せている」という衝撃の事実によって、単純明快な青春ラブコメではなく、「恋愛か、友情か」という普遍的なテーマに斬り込んだ、深みのあるエンターテインメント作品になっている。
友人を思う気持ちと自身の恋愛感情のどちらを優先すべきか。時代が変わっても正解の出ない命題に立ち向かう若い登場人物たちの姿を見ながら、思わず自分を顧みてしまう良作で、「10、20代の女性をターゲットにした王道胸キュン映画」だと決めつけて敬遠している方にこそ鑑賞してもらいたい一作だ。
同じラブストーリーながら、"愛"だけではない三者三様の面白さがある3作品は、2月に日本映画専門チャンネルにて放送される。ぜひご覧いただき、涙して、感動して、笑って、省察して、"愛"と"それ以外"について考えるバレンタインデーを過ごしてみてはいかがだろうか。
文/原田健




