オアシスのギャラガー兄弟も登場する、ロビー・ウィリアムズの原点を描いた映画『BETTER MAN』とは?

オアシスのギャラガー兄弟も登場する、ロビー・ウィリアムズの原点を描いた映画『BETTER MAN』とは?

50代となった今も圧巻の歌声で世界を魅了し続けるエンターテイナー、ロビー・ウィリアムズ。2024年公開の映画『BETTER MAN/ベター・マン』は、彼の半生を歌とダンスで描いたミュージカル・エンターテインメントだ。本作の特徴的なアプローチは、ロビー自身がかねてより「僕はサルのように後ろで踊っている」「僕は完全に心ここにあらずだったのに、まるでサルのようにパフォーマンスするためにステージに引っ張り上げられた」と自虐的に語っていた表現を、『グレイテスト・ショーマン』のマイケル・グレイシー監督が、大胆に映像化した点。ロビーを"サルの姿"として象徴的に描き、その波乱に満ちた人生を独創的に表現している。

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ロビーを形作った原風景とテイク・ザット加入

1974年、イングランド北部のストーク・オン・トレントに生まれたロビーは、エンターテイナーを夢見る父の影響を受け、幼い頃からフランク・シナトラの「マイ・ウェイ」を父子で熱唱する日々を送っていた。やがて父との別れを経験し、劣等感や無力感を振り払うように挑んだオーディションで、彼は見事に合格。1990年代初頭、ボーイズグループ「テイク・ザット」の一員として16歳でデビューを果たす。4人の仲間と共に次々とチャートの頂点を獲得し、世界を熱狂させるポップスターへと駆け上がっていくが、急激な成功と環境の変化は、繊細なロビーの心を少しずつむしばんでいった──。

イギリスのミュージックシーンで鮮烈な輝きを放ち、華々しくデビューしたロビー・ウィリアムズ。その栄光と挫折、そして愛の軌跡を、本人のナレーションや代表曲と共にミュージカルとして描き出すのが本作だ。物語の舞台となる1990〜2000年代には、当時のイギリスを席巻したスーパースターたちも次々と登場し、時代の空気を色濃く映し出している。

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テイク・ザットら1990年代のスターたちが登場!

物語を語る上で欠かせないのが、ロビーと共に青春を駆け抜けたテイク・ザットのメンバーたちだ。彼らは、1992年のシングル「It Only Takes A Minute」のスマッシュヒットを皮切りに、世界的な人気を獲得。バックストリート・ボーイズやワン・ダイレクションなど、歌って踊れるボーイズグループの先駆的存在として今なお語り継がれている。

メンバーは、ロビーのほか、リーダー格のゲイリー・バーロウ、マーク・オーエン、ハワード・ドナルド、ジェイソン・オレンジの4人。映画では、ゲイリーをジェイク・シマンス、マークをジェシー・ハイド、ハワードをリアム・ヘッド、ジェイソンをチェイス・ボレンワイダーが演じ、若き日の本人たちを思わせるルックスとパフォーマンスで魅了する。彼らが歌い踊るシーンは、1990年代のテイク・ザットが放っていたフレッシュさと熱気を見事に再現。とりわけ、当時の衣装を完全復刻したライブシーンは必見だ。

ロビーの人生に深く影響を与えた人物として描かれるのが、かつて婚約者でもあったガールズグループ「オール・セインツ」のニコール・アップルトンだ。本作ではラシェル・バンノがニコールを演じ、南フランスでのニューイヤーのヨットパーティーでロビーと出会う場面が、8週間にわたり24時間体制で組み上げられた巨大セットで撮影されている。ロビーの代表曲の一つであるラブバラード「She's The One」を背景に、二人の恋の始まりから、スター同士だからこそ避けられなかった試練までが、ドラマチックに紡がれていく。

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オアシスのリアム・ギャラガーも毒舌ぶりを発揮!

さらに、オール・セインツの2ndシングル「Never Ever」がイギリスのシングルチャート1位を獲得した際のパーティー会場でのシーンには、イギリスを代表するロックバンド、オアシスのギャラガー兄弟が登場する。彼らは2025年10月、16年ぶりの再結成ツアーで東京ドーム公演を成功させたことで再び脚光を浴びたが、本作で描かれるのは1990年代の絶頂期だ。1997年8月にリリースしたアルバム『Be Here Now』はイギリスではもちろん、日本でも大ヒットを記録。さらに1996年のネブワース野外ライブでは、2日間で25万人超を動員し、その圧倒的な存在感は作品内でも自信に満ちたスーパースターとして鮮烈に表現されている。

中でも特に印象的なのが、当時25歳だったリードボーカルのリアム・ギャラガー。勢いと自信の塊のような彼は、自分より先に成功していたロビーに対しても「ゲイリーの後ろで踊ってろ」と吐き捨てるほどの毒舌ぶりを披露する。リアムを演じるレオ・ハーヴェイ・エレッジは、2022年公開の『クリエイション・ストーリーズ 世界の音楽シーンを塗り替えた男』に続き二度目のリアム役。特徴的な眉やまつげまでそっくりで、その尊大な態度とマンチェスターなまりの毒舌は、"唯一無二のリアム俳優"と呼びたくなるほどの完成度だ。

また本編では触れられていないが、ロビーと別れた後、ニコールがリアムと2000年から交際し、2008年に結婚、2014年に離婚しているという事実も存在する。まさに"事実は小説より奇なり"を体現するエピソードと言えるだろう。

文/中村実香

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