貴重映像で描く阿部ジャイアンツの真実 ファン必見の『GIANTS THE MOVIE ~頂点への挑戦~』

貴重映像で描く阿部ジャイアンツの真実 ファン必見の『GIANTS THE MOVIE ~頂点への挑戦~』

2024年のペナントレースで、球団創設90周年という節目の年に4年ぶりのリーグ優勝を果たした読売ジャイアンツ。戦績は77勝59敗。最終的に2位阪神に3.5ゲーム差を付けて大混戦を抜け出したが、開幕前は決して前評判が高くないチームだった。そんなチームを新任の阿部慎之助監督が見事に率いて、リーグ優勝に導いた軌跡を追った貴重な映像がある。

劇場公開された『GIANTS THE MOVIE ~頂点への挑戦~』。キャンプインからシーズン終了まで、激闘の舞台裏に密着して球団カメラが撮影したインサイド映像に加え、監督、コーチ、選手の独占インタビューによって、リーグ優勝からCSファイナルステージで横浜DeNAベイスターズに惜敗するまでの道程、そこにあった想いを伝えてくれる。

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新任ながら、的確な戦況判断と選手起用により、若手とベテランを見事に融合させた阿部監督の手腕が光った2024年シーズン。キャプインでは、選手全員を前に「オレたちは絶対に勝てる。やってやろうじゃないか!」と高らかに鼓舞する姿が勇ましい。ただ、シーズンを振り返る独占インタビューでは、「あの時は、ワクワクもあったが、不安のほうが大きかった...」と本音も吐露した。

初の開幕投手の大任を担った戸郷翔征には、キャンプ初日からカメラが密着。開幕戦のマウンド直前にブルペンで最後の調整をする生々しい映像からは、当日のピリピリした緊張感が伝わってくる。15勝を挙げて戸郷とともに投手陣をけん引した菅野智之の鮮やかな復活劇も印象に残っているが、その裏で相当な覚悟を持ってシーズンに挑んだ姿も明らかになる。捕手として、菅野を支え続けた、同い年の小林誠司との絆に迫ってくれたところもファンにはうれしい。さらに、菅野が、CSファイナルステージ第6戦、同点の9回に勝ち越し点を奪われた牧秀悟に投じた1球についての激白はまさに貴重な証言だ。

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野手陣では、初の全試合出場を果たした吉川尚輝にも密着。彼が年間を通して続けた、5種のティー打撃というこだわりのルーティンが興味深い。シーズン終盤に肋骨を負傷し、怪我を押して大活躍した感動の場面と壮絶なリハビリの映像は必見だ。また、苦悩する姿を見せたのは、キャプテンの岡本和真。その岡本を見守り、サポートし続けた二岡智宏ヘッド兼打撃チーフコーチとの知られざる絆も映像で明らかにされる。もうひとり、悩めるシーズンを送ったベテラン・坂本勇人の姿にも注目。2軍落ちした7月に、恩師の原辰徳前監督との特訓に挑んだ映像も見逃せない。9月22日・23日の阪神との2連戦では、前日にチャンスで凡退が続きベンチスタートとなった彼が、翌日に値千金のタイムリーを放つ。その感動の舞台裏にも迫っている。

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リーグ優勝は見事だったが、最後にベイスターズに敗れて日本シリーズ出場を逃した悔しさは否めない。球団カメラはそんなナインの姿も映し出している。「この悔しさを忘れずに、何故勝てなかったのか。それぞれ考えながらいいオフを過ごしてくれ」と告げて、シーズンを締めくくった阿部監督。彼もまた大きく成長した一年であったはずだ。

そして2025年シーズンが、いよいよ幕を開ける。菅野智之が海外FA権を行使してオリオールズへ移籍。2012年以来の日本一達成へ向け、チームは大型補強を敢行した。中日から絶対的な守護神のライデル・マルティネス投手を獲得し、ソフトバンクからFAで甲斐拓也捕手も加入した。楽天を自由契約となっていた田中将大も迎え入れ、昨季リーグ1位のチーム防御率2.49を記録したディフェンスはより強化している。特に昨季中日で2度目のセーブ王に輝いたマルティネスの加入は心強い。日米通算197勝の実績を誇る田中将大の復活にも期待したい。

一方、リーグ4位の462得点に終わった打撃陣に関しては、新助っ人のトレイ・キャベッジ外野手を獲得したのみだが、23年にエンジェルス傘下の3Aで107試合に出場し、打率.306、30本塁打、32盗塁のトリプルスリーを達成。得点力不足解消への救世主となれるかに注目だ。ドラフトでは高校生No.1内野手の石塚裕惺を1位指名するなど、上位で3人の内野手を獲得。黄金期の再来に向けて着々と戦力を整えている。悲願の日本一に向けて今季の戦いに挑む、阿部ジャイアンツの新たな歴史の証人になろう。

文/渡辺敏樹

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