9月21日はバットマンの日!ダークナイト入門
2024.09.17
映画の歴史とともに数々誕生してきたヒーロー。その中でも長年、多くのファンから支持されるキャラクターの一人がバットマンだ。1939年、DCコミックスに初登場したバットマンは、85年もの間、多数の映像作品となって人々を魅了してきた。
同様にメジャーな人気ヒーローとしては、DCのスーパーマンやマーベルのスパイダーマンなどが挙げられるが、バットマンは"ダークナイト(闇の騎士)"との異名を持つように、どこか暗くシリアスなイメージが漂う。真っ黒なコスチュームに身を包み、夜の闇で暗躍するその姿が心をざわめかせる。大富豪の息子として生まれたブルース・ウェインが、格闘のスキルを上達させ、コウモリをイメージしたバットスーツに身を包んでゴッサム・シティの悪に立ち向かう姿は現実と地続きのヒーロー像として、見る者の共感を呼ぶ。少年時代に両親が目の前で殺されたという悲痛な過去も重なり、その孤高な勇姿が人気の秘密でもある。
バットマンは早くから映画化作品が生まれたが、大ヒットを記録してメジャーなインパクトを与えたのが、1989年のティム・バートン監督作『バットマン』だ。そこから監督や主演俳優を変えて計4本が作られるが、現在のバットマンのイメージを完全に確立させたのは、クリストファー・ノーラン監督、クリスチャン・ベール主演によるダークナイトトリロジー(3部作)だろう。2005年の『バットマン ビギンズ』は、その出自と闇の騎士になるまでが描かれるプロローグだったが、2作目の『ダークナイト』はヒーロー映画の歴史も変えることになる。バットマンに対する宿敵ジョーカーの非情な挑発がセンセーショナルな話題を呼び、世界の興行収入は公開当時、歴代4位というメガヒットとなった。
何よりコミックから生まれたヒーローが、ここまで重厚でシリアスな映画となったことで、作品としても異例の高評価を獲得。アカデミー賞作品賞への候補入りもうわさされていたが、結果的に逃したことはハリウッドでも論議を呼び、翌年からアカデミー賞作品賞ノミネートの枠が5から最大10まで拡張した。また、ジョーカーを演じたヒース・レジャーが映画完成後に急死。死後にアカデミー賞助演男優賞を受賞したことも伝説となった。そして、3作目の『ダークナイト ライジング』では、できる限りCGに頼らず、アクション映画の常識を変える圧巻のスペクタクルシーンがつぎ込まれ、ヒーロー映画をさらにアップデートさせる。
ダークナイトトリロジーが形成したバットマンのイメージは、その後もベン・アフレック、ロバート・パティンソンが演じた映画で受け継がれつつ、変遷していく。一方で原点となるコミックのテイストも意識したアニメも作られ続け、バットマンやヴィラン(悪役)たちの世界観の広がりを実感できるのもファンにはうれしい。2019年に大ヒットした『ジョーカー』の続編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』が10月に公開されるように、ヴィランも圧倒的な存在感を放つのが、バットマンワールドの魅力なのである。
闇に引かれる人間の本能。そこを激しく刺激されつつ、バットスーツやバットモービルといったガジェットによるマニアックな喜びも無限に広がる。バットマンがなぜ人々の心をつかんで離さないのか、あらためて実感してほしい。
文/斉藤博昭