伝説の殺し屋ジョン・ウィックの世界観にハマる!
映画 CS初見放題
2024.09.03
孤高の暗殺者の死闘を描き、多くのファンから支持されるキアヌ・リーブス主演の「ジョン・ウィック」シリーズ。主人公ジョン・ウィックの戦いは回を重ねるほどに緊張感と壮絶さを増し、アクション映画ファンの枠を越えて、多くの観客を魅了し続けている。その人気の秘密をシリーズ独特の世界観から探る。
原点である2014年の『ジョン・ウィック』は復讐(ふくしゅう)劇として始まった。殺しの仕事から足を洗った後の平穏な日々の中、亡き最愛の妻が遺した愛犬を強盗に殺されたことに激しい怒りを覚えたジョン。彼は再び武器を取り、強盗一味の背後に潜むロシアンマフィアへの復讐を決意する。家を出て、ニューヨークの一角に建つコンチネンタルホテルに身を寄せるが、これは後のシリーズでも重要なエッセンスとなるので押さえておきたい。コンチネンタルは表向きこそ高級ホテルだが、殺し屋たちが活動の拠点とする宿であり、ホテル側も彼らをサポートしている。情報収集から武器調達、死体の処理まで、殺し屋にとっては至れり尽くせりのホスピタリティ。ただし、この建物内での殺しはご法度で、違反すれば粛清を免れない。
続く『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017)では、裏社会に舞い戻ったジョンにさらなる試練が待ち受ける。殺し屋の世界にはコンチネンタルの管理下で、貸し・借りの恩義が誓印という形で存在する。借りを作った者はその相手から誓印を渡されると、必ず要求を飲まねばならない。かつて借りを作ったイタリアンマフィアからの依頼で、暗殺仕事を余儀なくされたジョンは、この仕事を成功させる。しかし、これはマフィアの罠(わな)で、懸賞金を懸けられた彼は、ニューヨーク中の殺し屋から命を狙われることになる。本作では、世界の裏社会と殺し屋たちを束ねる大組織"首席連合"の存在が明らかに。世界中にホテルを構えるコンチネンタルはその下部組織で、ジョンもそこに属する一人なのだが、彼はコンチネンタルで殺しをしてはいけないという掟(おきて)を破ってしまう。
3作目『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019)と4作目『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023)は、掟を破ったことで首席連合を敵に回し、懸賞首となって全世界の殺し屋に命を狙われるジョンのサバイバルが展開。掟を遵守しながらもジョンを守ってきたニューヨークコンチネンタルの支配人ウィンストンや、首席連合に属さず地下組織を築いたバワリー・キングら、ジョンの数少ない味方も運命的な決断を余儀なくされ、物語は盛り上がりをみせる。日本が舞台の1つとなる4作目では、大阪にもコンチネンタルが存在していることが判明。真田広之がその支配人役で出演し、キアヌと共闘している。
シリーズを追いながら、殺し屋たちの厳しい社会を紹介してきたが、そんな世界観に加えて、「ジョン・ウィック」シリーズには見どころが多い。苦難を次々と突破するジョンに扮(ふん)したキアヌの熱演、彼のスタントダブルを長年務め、1作目で監督デビューを果たしたチャド・スタエルスキが描く本格派のアクション、銃撃とカンフーが一体となった"ガン・フー"と呼ばれるユニークな格闘術。ビジュアルは迫力にあふれ、見る者をバトルの渦中に引きずりこむような臨場感に満ちている。2025年にはスピンオフ作品『バレリーナ』(原題)の公開も予定されており、21世紀のアクション映画シーンをリードする人気シリーズから目が離せない。
文/相馬学