見よ！編集と漫画家の渾身の青春！黒木華×野木亜紀子 「重版出来！」【小虎・りょう】

【プロフィール】
りょう(小虎)
1995年12月28日生まれ、愛知県豊田市出身。NSC東京校24期生。2019年に福井祐樹とともに小虎を結成。学生時代からのドラマ好きが高じて、「よしもとドラマ部」の一員としても活躍中。

このドラマもまた、人生で壁にぶち当たったとき、分岐点に立ったとき、勇気が欲しいとき、必ず見たくなる作品です。

このコラムを書いている今、僕の友人が賞レースの結果発表を待っている。結果がどうなるかは分からない。そして、僕にはさまざまな感情がある。

仲間が成功する喜び、遠くに行ってしまう悲しみ、なぜ自分ではないのだろうという悔しさ、そもそも自分は"彼らほどの努力はしたのだろうか？"という不甲斐なさ 、"才能"って一体どうしたら良いの？etc...

さまざまな感情がある。

そして、そのすべての感情をこのドラマは映している。一度、自分を見つめ直す為に立ち止まって、このドラマを見てから、動いてみてください。少しだけ気が楽になって動き始められると思います。全ての人が誰かに感情移入するでしょう。そんなドラマ「重版出来！」を紹介します。

あらすじ

舞台は、週刊コミック誌の編集部。何者でもない人が「漫画家」になる。その才能を支える編集者たち。彼らは、「一冊の漫画」という夢のために、ひたむきに全力で仕事に取り組んでいた。ひとつの「漫画」が人生を変えるんだ。それを多くの人に届けたい...。その「漫画」を重版出来させたい...。「重版出来(じゅうはんしゅったい)」。それは、初版と同じ版を使い、同じ判型、装丁にて刷りなおすこと。つまり、売れた漫画ということ。そこに足を踏み入れたのは、新米編集者・黒沢心(黒木華)。「今の自分が、心から熱くなれる場所は、ここしかないと思いました！」まっすぐな彼女の人間力と持ち前の勘は、やがて皆を動かしていく。

このドラマのテーマは「本気で仕事するって、カッコいい。生きるって、素晴らしい」

そして一番のポイントは、黒沢心(黒木華)の仕事に取り組む姿勢。慣れない環境で馬鹿正直に真っ直ぐ奮闘する姿に、視聴者は必ず応援したくなる。

恋愛模様が一切なく、ここまで心を震わせるドラマは数少ないだろう。原作の漫画も手に取ったが、忠実であり加筆箇所も違和感なくスッと心の奥の方にまで届く。脚本・野木亜紀子の手腕に脱帽せざるを得ない。

また、黒沢心だけでなく登場人物の性格・思考のバリエーションが多く、誰でも自分を誰かと重ね合わせることができるだろう。

今の自分に影響を与える胸いっぱいの"共感"

このドラマ最大の見どころは、登場人物を通じて、現代人が日常生活の中において、職場や学校で感じる胸に詰まったものを楽にしてくれる場面。

自分は沼田(ムロツヨシ)に強く通じるものがある気がする。

沼田は一度だけ新人賞を獲得してから、何度編集部に持ち込んでも連載にはつながらず、20年間芽が出ずにいる。周りからはうっすら諦められ、後輩や仲間たちの躍進を口では喜びつつも内心焦りがあり、自分の限界を認められずにいる。天才に憧れ、戦いから逃げ...。

冒頭でも書いたように、自分も日常生活で沼田と同じ感情に陥ることが多い。今、現在進行形で感じている。この時期に見るには堪らない場面が多すぎる。

第7話で全ての思いの丈を出し切り、東京を去る沼田の後悔のない表情。ぜひ注目してほしい。

"諦める"ことも才能がいるということ。
"諦めない"ことも才能がいるということ。
努力は"報われる"ということ。
努力は"報われない"ということ。

全てが詰まっている。

まとめ

僕自身がこのドラマに救われたことが多過ぎて、今回は今の自分と1番重ね合わせる第7話を紹介させて頂きましたが、「全て見てからの7話」なので全て見てください(笑)。でも今の自分が"第7話"なだけで、本当は第2話の努力が報われる温かい話、第5話の運は貯められる話、第6話の仕事と家庭と自分の信念を天秤にかける話など、生活の中で各々ぶっ刺さる話があるでしょう。

1話から10話までで、ぶっ刺さった話が今のあなたの鏡かもしれません。僕はこのドラマが放送されてから9年間、その時々で全部の話が刺さるようになりました。

そのほか、熱量に押され涙が込み上げる話や明日の自分を少し美しくできそうな格言の数々。

この時代で働く。生きる。あなたは絶対にこのドラマを見るべきです。僕たちが相手にしているのは人です。僕らが思っているより世界はずっと広いです。