平成最高の恋愛ドラマが見せてくれた幸せの形 「逃げるは恥だが役に立つ」【小虎・りょう】

よしもとドラマ部

よしもとドラマ部 (吉本興業所属のお笑い芸人)

吉本興業所属のテレビドラマ好きを公言しているお笑い芸人からなる。 現在は宮地ケンスケ・福田恵悟(LLR)・村上健志(フルーツポンチ)・大貫さん(夫婦のじかん)・りょう(小虎)らが所属。

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平成最高の恋愛ドラマが見せてくれた幸せの形 「逃げるは恥だが役に立つ」【小虎・りょう】

<プロフィール>
りょう(小虎)
1995年12月28日生まれ、愛知県豊田市出身。NSC東京校24期生。2019年に福井祐樹ともに小虎を結成。学生時代からのドラマ好きが高じて、「よしもとドラマ部」の一員としても活躍中。


日本のテレビドラマが好きな人間の中で、この作品の存在を知らない人間は1人もいないだろう。

"逃げ恥"、"恋ダンス"、"ムズキュン"、"星野源と新垣結衣が結婚するきっかけになったドラマ"、etc...。挙げればキリがないほど話題をかっさらい、社会現象にもなったこのドラマ。僕は放送当時の2016年、リアルタイムでは見ていなかった。なぜかは覚えていない。自分が尖っていて、情報に遅れていたのだ、ということくらいしか考えられない。当時、大学生の僕の周りは、それくらいみんな見ていた。見ていないと会話についていけない。子供の頃にアニメを見遅れていたのと同じように。

放送から1年ほど遅れて見て、改めてリアルタイムで見なくて良かったと思った。なぜか。「ムズキュンが爆発して、毎週毎週なんか待てるわけない!!!」

しかし、今回は皆が知っている、ムズキュン人間の恋愛妄想とか恋愛感情とか恋愛心情を、最高に破壊してくれる最強恋愛ドラマという側面からではなく、心のコップを楽にしてくれるドラマとして「逃げるは恥だが役に立つ」を紹介させていただきます。

主人公・森山みくり(新垣結衣)は、彼氏なし、院卒だけど内定ゼロ、派遣社員になるも派遣切り、そしてただ今、求職中。"誰からも必要とされない辛さ"を日々感じている。そんなみくりを見かねた父親のはからいで、独身の会社員・津崎平匡(星野源)の家事代行として働き始めることに。かゆいところに手が届く働きぶりで津崎の信頼を勝ち取ったみくり。しかし、あるキッカケでその仕事も失いそうになる。将来に不安を抱え、追いつめられたみくりは、ひょんな会話の流れから津崎に「就職という意味で結婚するのはどうですか?」と提案してしまう。超真面目な津崎が導き出した答えは...まさかの契約結婚? 2人は周囲には秘密にしながら「雇用主=夫」「従業員=妻」の関係を始めるが、バレずに新婚生活を過ごすことが出来るのか?一つ屋根の下で生活する妄想女子とウブ男...果たして契約結婚の行方は...?

このドラマは、スピード感のある怒涛の展開で物語が進んでいく。しかし、その中で脚本家の野木亜紀子さんが一言一言、丁寧に紡いで、視聴者の心を掴みきっている。僕も掴みきられた1人だ。

野木さんの脚本に救われた日が何度もある。コンテンツとしても精神的にも、「逃げ恥」はもちろん、「重版出来!」「アンナチュラル」「MIU404」そして、「海に眠るダイヤモンド」etc...。難しいテーマでも何か一本筋が通っているような気がするのが魅力だと思っている。

「幸せの形は人それぞれ」

「幸せの形は人それぞれ」なんてよく言うけれど、これは実際、誰にでも当てはまる答えのない言葉、俗に言うずるい言葉だ。このドラマの登場人物ももちろん、みくり、津崎を筆頭に全員「幸せの形は人それぞれ」というずるい言葉が当てはまる。

ただこのドラマは、その幸せの形の"答え"を視聴者にとても寄り添って提示してくれている。

妻と子供がいて愛妻家の夫、同性との恋愛で悩んでいる男性、シングルマザーになった親友、結婚に消極的な男前...皆さまざまな悩みを抱えていて、全員が何かに依存し執着している。

さらに、そういったすれ違いや拒絶など、誰かと向き合う過程での感情に突き刺さる場面を、さまざまなパロディ(情熱大陸やエヴァンゲリオンなど)でポップに落とし込んで安心感を与えてくれている。

この作品では、登場人物の全員が、第一話よりも幸せの形を昇華して、成長する過程を見せて物語を終えている。

だから「逃げ恥」は、シンプルに恋愛模様などを楽しむのはもちろんだが、一つ一つのせりふから感じる、成長の過程に注目してみて欲しい。

また、ストーリーが中盤になるにつれて、みくりと津崎の心の声が徐々に減っていっている気がする。これは2人の本当の距離が縮まったり、本音を語れる人が増えたりと成長の過程を丁寧に演出してくれているのではないだろうか。

「逃げるは恥だが役に立つ」

この言葉「逃げるは恥だが役に立つ」は、ハンガリーのことわざらしいです。この文章を書くにあたって初めて知りました。

「Szégyen a futás, de hasznos.」

全然読めなかった...。和訳の意味は「恥ずかしい逃げ方だったとしても生き抜くことが大切」。僕はこのドラマに恥ずかしい逃げ方をしている人なんて1人もいないと思ったけど、人それぞれ何かを考えて、何かと闘いながら日々を過ごしていることは強く感じました。

「誰かから認められたい」「必要とされたい」という承認欲求の塊で、僕も今の仕事をしている節があるので、定期的に見直して自分のことを肯定できるようにしたいです。

さまざまな幸せの形、ぜひ見直して見つけてください。

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