ミステリー？人間ドラマ？ミステリー&人間ドラマです。 「新参者」【フルーツポンチ・村上健志】

＜プロフィール＞
村上健志(フルーツポンチ)
1980年12月8日生まれ、茨城県牛久市出身。2004年にNSC東京校10期として入学。在学中に、同期の亘健太郎とともにフルーツポンチを結成。特技の俳句で、MBS「プレバト!!」にて日常の風景を切り取る独自の才能を発揮し、永世名人の称号を獲得。2021年には「フルーツポンチ村上健志の俳句修行」と題し、句会での様子を書籍にして出版している。よしもとドラマ部に所属。ドラマ好きが高じて、多数ドラマ出演経験あり。

東野圭吾作品。これ以上のうたい文句があるのかと悩みました。何を悩んでいるのかというと、今から1000～1500字を費やして新参者シリーズの魅力を「東野圭吾作品」という看板以上に説得力のあるコラムを書けるのかと悩んでいるわけです。

言わずと知れたヒット作品を紹介する。カップヌードルのCMを作る人もこんな気分なのかと思いましたが、責任感から何から全然違うだろうとすぐに考えを改めました。

数々のヒット小説を生み出した東野圭吾さん。「ガリレオシリーズ」「白夜行」「流星の絆」などなど映像化された作品も多くあります。それらの実績に全てを託し、1000字分で埋まるスペースにどかんとフォントを大きくした「東野圭吾作品」という言葉を載せるのはどうかとも考えました。しかし、それではただサボっただけと思われるかも知れません。それに、東野圭吾作品を見たことのない方にとってはあまりに優しくありません。それでもやはり原作・東野圭吾というのは信頼のおける作品だと知っていただきたいです。

「新参者」原作／東野圭吾「新参者」（講談社刊） (C)TBS

日本橋を舞台に、阿部寛さん演じる刑事・加賀恭一郎が事件の真相に迫る推理ドラマ「新参者」。物語は日本橋に一人で暮らす40代の女性が絞殺されるという事件から始まります。事件の真相を追う加賀恭一郎。鋭い洞察力で事件関係者の嘘を見抜き、足を使い、日本橋という街を知ることで謎を解き明かしていきます。このドラマの魅力は事件の解決もそうですが、事件関係者がなぜ嘘をついたのか、つかなければならなかったのかという謎に迫ることで見えてくる人間ドラマが実に魅力的なのです。殺人事件の謎に迫っているのにあったかい気持ちになるのです。無茶苦茶、人情モノのヒューマンドラマです。なんだか現れそうだなと思ったら現れる阿部寛さんの佇まいも良いです。そして、ミステリーものには外せない音楽がまた良いんです。ドラマの最後にかかる山下達郎さんの「街物語」もたまりません。

「新参者」原作／東野圭吾「新参者」（講談社刊） (C)TBS

新参者シリーズ、本来は加賀恭一郎シリーズという方が正しいかも知れません。小説において加賀恭一郎シリーズの第8作目に当たるのが「新参者」です。この新参者がまず連続ドラマとして映像化されました。その後「赤い指～「新参者」加賀恭一郎再び！」（SPドラマ）、『麒麟の翼～劇場版・新参者～』（映画）、「"新参者"加賀恭一郎「眠りの森」」（SPドラマ）、『祈りの幕が下りる時』（映画）と阿部寛さんが演じる加賀恭一郎シリーズとして5作品が映像化されています。物語の時系列と作品順は異なるのですが、気にせずに見られます。ドラマとして3作品ありますが、この三つがまた味わいが全然違うんです。「新参者」は人情モノだと言いましたが「赤い指」はもっと締め付けられるような重厚感があります。「眠りの森」は壮大でグググとミステリー要素を強く感じました。すんごい面白いSPドラマでした。どの作品も、嘘の奥にある物語が明るみになっていくところに魅力があるのですが、こんなにも味わいが違うのか...とぜひ見比べて欲しいです。SPドラマの方から見ても楽しめると思いますのでお好みに合わせて見てください。

「"新参者"加賀恭一郎「眠りの森」」原作／東野圭吾「眠りの森」（講談社文庫刊） (C)TBS

追記。新参者のコラムを書くにあたってネットでも"加賀恭一郎"を調べてみました。加賀恭一郎が初登場した時は、刑事ではなく大学生だったとか、阿部寛さんではなく山下真司さんが演じた加賀恭一郎もあった...など色んな情報がありました。それを見ているだけでも面白いのです。見ていないONE PIECEの考察動画をついつい見てしまうような面白さがあるのです。情報だけでも面白いというのは長く続く人気シリーズの証かも知れません。もちろん、内容はもっと面白いです。加賀恭一郎と一緒に人間に迫ってみてください。

「赤い指～「新参者」加賀恭一郎再び！」原作／東野圭吾「赤い指」（講談社刊） (C)TBS