ルーキーからベテランまで...ぺえが選ぶSVリーグ注目選手【ぺえ連載第6回】

ぺえ

ぺえ (タレント)

タレント。小学生からバレーボールを始め、中学時代に山形県選抜になった経験を持つ。バレーボールを愛してやまないぺえが、独自の視点でバレーボールの魅力を熱く深く伝える。

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ルーキーからベテランまで...ぺえが選ぶSVリーグ注目選手【ぺえ連載第6回】

バレーボールをこよなく愛するタレント・ぺえによるバレーボール連載企画。今回は、SVリーグ中盤までの戦いぶりから、注目選手をピックアップ。各選手の伸びしろや今の日本代表チームに必要な能力も考慮し、これからの日本代表を背負っていくであろう選手たちに大いなる期待を添えて語ってくれた。


中盤から終盤に差し掛かっていくにつれて、体力的にもコンディション的にも苦労しているように感じています。期間が長いため、選手層が厚いチームでないと戦い切るのが困難になっていて、上位と下位で選手層の差が顕著に出てしまっていますね。点差が2桁で終わってしまう試合も散見されるので「やはり集中力や体力を維持するのは大変なのだな」と痛感しつつも、トップリーグの矜持を持って前半戦で繰り広げていたようなヒリヒリした展開を期待するばかりです。そんな中で、やはり代表常連の選手がチームを引っ張っていますね。

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■女子の注目選手

―東レアローズ滋賀・深澤つぐみ選手

今季すごく成長を感じているのが、東レアローズ滋賀の深澤つぐみ選手です。前半戦は、なかなか思うようなプレーができていなかったり、決定率もかんばしくなかったのですが、中盤くらいからエンジンがかかり始めたように思います。深澤選手は若いながらキャプテンを務めていて、その責任感から「自分がプレーでチームを引っ張らなきゃいけない」という思いが前面に出ていて、中盤に差し掛かるくらいからすごくいい爆発の仕方をしています。「私はこんなんじゃ終われない」という強い気持ちと「キャプテンとして戦う姿勢を見せないといけない」という闘争心によって、本当に強く成長したんだと思います。特に、ミスを引きずらなくなったんですよね。最初のころは、ブロックにかかると落ち込んだり、レシーブが乱れたりしていたのですが、そういうこともなくなって、チームで一番前を向いてプレーしています。

キャプテンがそういう姿勢で試合に臨んでいるからこそ、終盤にかけてチームが一気に結束し始めたように感じます。結束力の強さは目を見張るものがあります。前半はセッターの田代佳奈美選手が引っ張って、若い選手がそれに続くという感じだったのですが、中盤以降は深澤選手や谷島里咲選手の「自分たちで引っ張っていこう」という前向きな姿勢が見えてきました。

リーグ序盤は「もう少し活躍してほしいな」と思いながら見ていたので、彼女の変化には驚かされましたし、本当にうれしく思っています。顔つきもプレーの思い切りも違うので、おそらく彼女の中で何か吹っ切れたものがあったのではないでしょうか。特にオフェンスがすごくいいので、ディフェンスに磨きがかかればもっといい選手になると思います。深澤つぐみ選手に負けじとSAGA久光スプリングスの深澤めぐみ選手もリーグ終盤に入り、何かを掴んだような思い切りの良いプレーを見せてくれています。リーグ中盤あたりからギアが上がってきた2人の活躍を見ていると、チームは違えどお互いを高め合える良い関係性なのではないかと感じます。


―クインシーズ刈谷・鴫原ひなた選手

クインシーズ刈谷の鴫原ひなた選手は本当にいいキャプテンだなと感じています。リーグの始めから高いキャプテンシーを見せてチームをけん引していましたし、プレーに関してもすごくキレがあって、スパイクも思い切りがあります。高校時代から注目している選手の一人なのですが、高校時代は"器用にプレーする選手"という印象だったのが、そこに気持ちの強さや勝負強さみたいなものが加わって、今すごく調子がいいのではないでしょうか。

プレーの一つ一つが丁寧ですし、「バレーボールを知っているな」とうなってしまう瞬間が多々あって、普段からたくさんバレーボールを見ているんじゃないかな。自分の頭の中でいいイメージをしっかりと描けていて、それをプレーに移せているように見えます。"ただ器用で、ただフォームがきれい"という選手とは一線を画していて、年を重ねていけばいくほどいい味が出てくる選手なんじゃないかなと。吉原知子さんを彷彿とさせるような、今後ますます楽しみな選手です。


―クインシーズ刈谷・鍋谷友理枝選手

同じクインシーズ刈谷の鍋谷友理枝選手も注目です。全部の試合に出ているわけではなく、ここぞという時に出てくるのですが、彼女の経験値がチームを救うんですよね。メンバーチェンジで鍋谷選手が入ってくるだけで、チームに安心感が生まれているのが手に取るように分かります。彼女はレシーブも上手いですし"チームの縁の下の力持ち"になれる選手でもあるので、彼女が入ることでチームにたくましさが付与されているように感じて、見ていて心強さすら感じさせられます。キャプテンの鴫原選手も鍋谷選手の存在に支えられている部分があるのではないでしょうか。


―大阪マーヴェラス・大山遼選手

就実高校から筑波大学を経て、2024年に入団した大阪マーヴェラスの大山遼選手は、経験を積めば、もっとたくましい選手に成長すると思って見ています。ポーカーフェイスであまり感情を表に出すような選手ではないのですが、内にすごい闘争心を秘めていると感じます。

とにかく冷静なところが、私が心を掴まれている部分なのですが、ライトの高めのトスもしっかり打てるという魅力に加え、それらを冷静に打ち分けて決めている。全日本がこれから世界を相手にどう戦っていくのかを考えた時に、いろいろな攻撃ができるチームになったらいいなと思うので、こういった選手は不可欠なのではないかなと。「ミドルブロッカーが日本の課題」と言われている中で、やはり日本のリーグで活躍できても"世界を相手にした時の決定率"を考えると、大山選手に私は期待をしています。


―大阪マーヴェラス・志摩美古都選手

昨年、PFUブルーキャッツ石川かほくから移籍してきた大阪マーヴェラスの志摩美古都選手もすばらしいです。江畑幸子さんのような思い切りの良さと、踏み切りの強さが特長で、スピードもあって、レフトの速い平行トスも打てるし、バックアタックもすごく速いんです!大阪マーヴェラスはサイドに高さがないので、志摩選手のバックアタックが真ん中から入ってくることで、一気に攻撃のテンポが良くなります。

林琴奈選手や田中瑞稀選手もバックアタックは打っているのですが、志摩選手のバックアタックは一番パンチ力があって、ブロックに当たっても弾き飛ばしていくんです。PFU時代と比べても一層力強くなっていて、全身でスパイクを打つ"馬力"がアップしている印象。ゾーンに入ったら止められない感じがあって、代表に入ったらいい起爆剤になるのではないでしょうか。チームが落ち込んだ時に入ってきてほしいような選手になりそうですね。


―大阪マーヴェラス・東美奈選手

大阪マーヴェラスの東美奈選手は、派手さはないのですがトスワークが堅実。9メートルの幅を目いっぱい使ったトス回しができているし、一本一本アタッカーが欲するポイントに丁寧に上げていて、高い集中力を有しているなと。

"日本のバレーは、セッターが最初から最後まで120%集中力を切らさずプレーする"という必要十分条件を考えた場合、東選手は条件を満たしていて、代表でのプレーにも期待してしまいます。


―ヴィクトリーナ姫路・田中咲希選手

ヴィクトリーナ姫路の調子がいい時は、必ずといっていいほど田中咲希選手の調子がいいんです!田中選手はチームを地道に支えている選手の一人で、身長が170センチと小柄ではあるのですが、跳躍力があって機動力のあるサウスポー。ここぞという時にトスが上がるし、それをしっかりと決め切っている。チームの命運をいつも握っているイメージがあります。勝負所で決めている印象が強いので、"ヴィクトリーナ姫路といえば田中選手"という感じがしていて、その勝負強さは本当に魅力ですね。世界レベルでどのくらい活躍できるのかを見てみたい選手です。


―ヴィクトリーナ姫路・櫻井美樹選手

ヴィクトリーナ姫路の櫻井美樹選手は、本当にチームのことだけを考えているような献身的なセッターです。目立つセッターよりも陰で支え続ける健気なセッターの方が個人的に好きというのもあるのですが、彼女のプレーにはすごく心を動かされるものがあります。というのも、トス一本一本にアタッカーへの愛が込められていて、温かいんです。とにかく打ちやすい、アタッカーに優しい心あるトスを上げている選手。しかも、ディフェンスの反応も良くて、フェイントボールや強打にも対応していて、彼女も代表でぜひ見てみたい選手です。


―KUROBEアクアフェアリーズ・安田美南選手

高さでいうと、KUROBEアクアフェアリーズの安田美南選手ですね。身長179センチという高さのあるセッターというのは本当に魅力で、オールスター戦でも人気投票で出場したように、バレーボールファンたちは彼女の成長を求めています!

これまでの戦いを見ていて、安定感は増しているように感じますし、やっぱり何より高い位置からのセットなので、アタッカーが打ちやすそう。また、チームの雰囲気も上げてくれる選手なので、ムードメーカーとしてもチームに貢献しています。KUROBEは勝ち星に恵まれないこともあって、ムードが沈みがちではあるんですけど、彼女が周りに声をかけて雰囲気を良くしている姿から「人間的にもすごく良い選手だな」と思っています。上のレベルの経験を積んで欲しい選手なので、一度代表に呼んでみてほしいです。


―Astemoリヴァーレ茨城・長内美和子選手

Astemoリヴァーレ茨城の長内美和子選手は、過去に代表の最終選考から漏れてしまうという経験をしている選手なので、そろそろ代表で見てみたいですね。すごく基礎がしっかりしていて、サーブやレシーブをしてからの動きがすごくスムーズなんです。ブロックの指先を狙ったスパイクが上手だし、肩も強いので、小技で決めることもパワープレーもできる、いろいろな魅力のある選手。

足りなかったものを得て、足りなかったものを得て......ということを繰り返して、少しずつ積み上げてきている選手で、悔しかった気持ちもたくさんあると思うので、本当に頑張ってほしいです。

優しい性格でちょっと控えめなところがあるようで、高校時代から「もっと自信を持ったら、もっとすごいプレーができるんじゃないかな」と思っていました。彼女には「もっと自信を持っていいんだよ!」って伝えたいです。

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■番外編・心を打たれたベテラン選手たち

―埼玉上尾メディックス・井上奈々朱選手

けがも多く、なかなか試合に出られないこともあった埼玉上尾メディックスの井上奈々朱選手ですが、岩崎こよみ選手と"下北沢成徳コンビ"で、高校の同級生が同じチームで活躍しているというのが、春高ファンにとって胸アツ!

高校の同級生が、35歳という大ベテランになってもなお、第一線で活躍しているなんて本当にすごいことですし「一度は引退を決断したけど、最後にもう一度、岩崎選手のいる埼玉上尾でプレーしたいって思ったのかな」とか、ファンとして勝手に妄想してしまうんですよね(笑)。だから、試合を見ていて、どうしても岩崎選手のトスを井上選手が打っている瞬間を楽しみに待っている自分がいます。


―SAGA久光スプリングス・大竹里歩選手

SAGA久光スプリングスの大竹里歩選手が、今シーズン限りでの引退を発表されました。大竹選手は、高校時代から活躍する姿を追いたくなるスター性のある選手で、彼女のプレーにはたくさん勇気をもらいましたし、その感謝は言葉にしきれません。お父様も日本代表で活躍されていたので、いろいろなプレッシャーを抱えて、彼女にしか分からない苦しみと共にここまで戦ってきたと思います。そんな中で、最後まで明るくSAGA久光だけでなく日本のバレーを引っ張ってくれた選手なので「本当にありがとうございます」と、この場を借りて伝えたいです。


■男子の注目選手

―東京グレートベアーズ・大竹壱青選手

先述した大竹里歩選手の弟、東京グレートベアーズの大竹壱青選手がすごくいいです!大竹壱青選手は今シーズン急成長した選手の一人で、クイックも良くて、ブロックも固くて、サーブも良い。全てのプレーが良くて「何が起きたの!?」と思ったくらい(笑)。必ず代表に入ってくると思います。

スケールが大きいので、相手からしたら嫌な選手だと思いますし、インパクトもある選手なので、お姉さんの分までより頑張ってほしい!


―東京グレートベアーズ・後藤陸翔選手

東京グレートベアーズの後藤陸翔選手は、これからさらに伸びて今後の日本をけん引していく選手の一人になるのかなと予感しています。決定力もあって成績もすばらしいのですが、何より彼が決めるとすごくチームが盛り上がって、一瞬で雰囲気を変えてしまう力がある。

ウルフドッグス名古屋の水町泰杜選手やサントリーサンバーズ大阪の高橋藍選手、シル・サフェーティ・ペルージャの石川祐希選手、大阪ブルテオンの西田有志選手もそうなのですが、男子の代表チームにおいては、チームの雰囲気を作れる、空気を自分のものにできる選手が引っ張っていくフェーズに来ている気がします。そういう意味でいうと、後藤選手にはものすごい将来性を感じますし「こんなもんじゃない、もっと大物になる」と止めどない期待を抱かせてくれます。


―東レアローズ静岡・楠本岳選手

東レアローズ静岡の楠本岳選手は、守りもいいのですが、攻撃の幅が広く、バックアタックもスピードがあります。何より、彼がボールに触ったら一気にテンポが良くなるんです。身長177センチと高さはないのですが「バレーボールを知っていると、こんなに活躍できるんだな」と、いちバレーボールファンとしても楽しませてもらっています。ブロックにかかる場面もあるけれど、今はすごく良い経験をしているなと。1年目でまだまだこれからの選手なので、どんどん吸収してたくさん成長していくのだろうと思います。


―東レアローズ静岡・重藤トビアス赳選手

東レアローズ静岡の重藤トビアス赳選手はすごくスピードのある選手で、代表の速くバリエーション豊富な攻撃にすごくマッチすると思います。23歳で、これから経験を積んでいくと思うので、持ち味により磨きをかけていくとすごく光る"原石"だと思います。


―大阪ブルテオン・エバデダン ラリー選手

大阪ブルテオンのエバデダン ラリー選手は、日本人離れした破壊力と爆発力が魅力。スパイクの打球は威力があるし、手が長いからブロックも威圧感があります。ぜひ次の代表で活躍している姿を見たいですし、彼が代表の"いい刺激"になってくれるんじゃないかなと思っています。愛嬌があって愛されるキャラなので、彼が決めるとチームが盛り上がるのもいいですね。


※高橋藍の「高」は正しくは「はしご高」

取材・文/原田健 撮影/皆藤健治

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