ラグビーが教えてくれたこと~楕円球に魅せられた人々の熱い思い~「一歩でも前へ。」【DJ KOO】

ラグビーが教えてくれたこと~楕円球に魅せられた人々の熱い思い~「一歩でも前へ。」【DJ KOO】

ダンス音楽ユニットTRFのDJとして活躍するDJ KOOさん。ラグビー経験者でもあり、リーグワンでもDJプレイでラグビー場を盛り上げているKOOさんにラグビー部での思い出について聞いた。
 
――ラグビーを始めたきっかけは?

「高校の入学式の時に校門にいかつい先輩がいて『ここに名前書いて』って言われて、気づいたら入部してました(笑)。入部してすぐにグラウンドで先輩たちがモールを組んで、殴ったり蹴ったりせずにボールを取ってみろと言われ全力でぶち当たったのに全然崩せなくて。その時に体が熱くなるのを感じて『ラグビーやってみたい!』と思いました。気持ちより先に体に火がついた感じでしたね」

――ラグビー部時代の思い出は?

「だれか一人がポカやると連帯責任で1年生全員がしごきにあうんです。完全なる縦社会で、先輩が言うことは絶対。先輩が『夏なのにセミが鳴いてないな~』と言ったら自分たちがセミの代わりに木や棒につかまって『ミーンミーン』って鳴いたり、お昼は食堂で先輩のご飯を買って部室まで急いで運んだり。当時はそれもラグビーの延長だと思っていましたね」

――今のラグビー熱の高まりについてどう思われますか?

「本当にうれしいです。応援の雰囲気もみんなで楽しもうっていう感じがいいですよね。昔はラグビーもそこまでメジャーじゃなかったし、僕の時代は花園出場など功績がないと、ラグビー経験者って自分から言えない空気がありましたが、今はそんなこともありません。
僕がラグビーをやっていた時代は不条理なことがたくさんありましたが、DJの世界も縦社会な面があって、今の自分を作っている3年間でもあるんです。ラグビー部時代があったからこそ、DJの先輩の使い走りで誰よりも早くおいしいラーメンを買ってこられた(笑)。初めて小室哲哉さんにお会いした時に『この人についていきたい!』と衝撃を受けて、ラグビー精神でスタジオに半年以上毎日通いつめました。あと、全体を見渡してフロアを盛り上げるDJって、司令塔っぽいところがあって、当時の僕のポジションのスタンドオフと似ています。あの時のラグビーの経験があったからこそ、今の自分があると思いますね」

――DJプレイで会場を盛り上げている時のお気持ちは?

「ハーフウェイラインの上の方にDJブースがあるんですが、そこからの眺めは絶景としか言いようがないですね。ある時『試合前にガンガン音楽かけて邪魔になっていませんか?』って、稲垣啓太選手に聞いたことがあるんですが『お客さんが盛り上がってくれると僕たちも"よし、やるぞ!"と気持ちが高まるので遠慮なくやってください』と言ってくれました。それを聞いてからは、もっとみんなを盛り上げたいと考えるようになりました」

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――普段のラグビーの楽しみ方、好きな選手を教えてください。

「リーグワンの場合、世界中からワールドカップで活躍したすごい選手が来日して試合をしますから、まずはそういう選手に目がいきますね。日本選手がどんどんレベルアップし、世界基準のプレーをしているのもうれしいです。好きな選手は、やはりホスト(ホームゲーム)でDJをしている、埼玉ワイルドナイツは外せません。引退してしまいましたが、堀江翔太選手とは実際に話をしたことがあり、男気があって懐も深くて、大好きになりました」

――ラグビーで学んだことを教えてください

「『とにかく前に出る』ということかな。いろいろな場面でとにかく自分というものを前に出すことが大切だと学びましたね。ラグビーって自分が前に出ていくことでしかボールを運べないですから。日本の選手の、タックルされても一歩でも前に出てボールを運んでいく『一歩でも前へ』という姿勢は本当に素晴らしいと思います」

――最後に、ラグビーの魅力はどこにあると思いますか?

「体格が良く馬力のある選手、小柄だけど素早く動ける選手など、ほかのスポーツに比べるとそれぞれのポジションの個性が強いと思います。それと、上手な人だけを集めても強いチームにならないんですよね。みんなの意志が一つになってワンチームになる。それがラグビーの魅力だと思います」


(PROFILE)
DJ KOO
'61年、8月8日生まれ。'93年ダンス音楽ユニットTRFのメンバーとしてデビュー。'21年、大阪芸術大学客員教授に就任。

取材・文/水本晶子 撮影/菊竹規