プロ野球・クライマックスシリーズをより深く楽しめるポイントを先取り指南【鳥谷敬】
スポーツ 連載コラム
2024.10.11
鳥谷敬 (元プロ野球選手、野球解説者・評論家)
野球解説者・元プロ野球選手 各月で一番印象に残ったプレーを、準備段階や選手のメンタル面、その時のシチュエーションなども含め、鳥谷敬が解説。
鳥谷敬 (元プロ野球選手、野球解説者・評論家)
野球解説者・元プロ野球選手 各月で一番印象に残ったプレーを、準備段階や選手のメンタル面、その時のシチュエーションなども含め、鳥谷敬が解説。
野球解説者・鳥谷敬がプロ野球を独自の目線で斬る連載企画の第3回。今回は、セ・パ両リーグのクライマックスシリーズ(CS)について語ってもらった。(※取材日は10月3日)
【パ・リーグ】
ファーストステージの日本ハムとロッテは、日本ハムが、足を使ったり、セーフティバントをしたり、スクイズをしたりと、チームとしていろんなバリエーションを仕掛けてくるのに対し、ロッテは作戦的というよりバッター頼みというところで、ロッテは「ピッチャー陣がしっかり抑えてくれれば」、日本ハムは「初戦をなんとか取って上がっていきたい」という感じだと思います。
そんな中で、新庄剛志監督は普段やってこない選手起用や作戦をする可能性が非常に高いので、短期決戦ならではのリーグ戦では見られない展開に注目すると、より楽しめるかと思います。
ただ、ファイナルステージは普通に考えたら間違いなくソフトバンクだと思います。ピッチャーの数、打線、さらに柳田悠岐選手が戻ってくる可能性もありますので。何より"1勝ある"というのが、戦っていく中でかなり大きいです。相手チームとしては何とか勢いをつけてファーストステージを突破して、その勢いで(勝ち星を)1つ、2つ取って、やっとチャラくらいの感じなので。
【セ・リーグ】
打線がかなり強力なDeNAに対して、ピッチャー陣の数がそろっている阪神。「矛と盾、どっちが勝つのか?」という面白みがあると思います。
むしろ、ファイナルステージでの巨人の調整がすごく難しいんじゃないかなと。日程も空きますし、リーグ戦も最後までどうなるか分からないという切羽詰まった状態で戦っていたので、優勝してほっとした気持ちをもう一回戦うところまで持っていくというのはなかなか簡単なことではないと思います。そう考えると、巨人は「DeNAが上がってきてほしい」と思っていると思います。それは、DeNAの方が先発ピッチャーの枚数が足りないからです。阪神の場合は、ファーストステージが3戦目までいったとしても、ピッチャーの枚数が足りるので。そういうピッチャーのバランスを考えると「DeNAの方が有利に戦える」というふうに見ていると思います。個人的には、リーグ戦は巨人が優勝したので、阪神がCSを勝ち上がって2年連続日本一になれば、東も西も盛り上がって面白いかなと思っていますが。
そんな中で、「どのピッチャーを先発させてくるのか」というところに注目すると、より楽しめると思います。相手チームとの相性、継投、ファーストステージの展開、ファイナルステージで第何戦をポイントとして考えているのかなど、先発ピッチャーで(戦術的に)見えてくる部分が多々あるので。
【月間鳥谷賞】
9月の好プレーの中から鳥谷が特に印象に残ったプレーを選抜。
「阪神・才木浩人投手のノーアウト満塁から3人を全てストレートでアウトにした投球」
9月22日に甲子園球場で行われた阪神-巨人戦。阪神が1点リードの6回表、2塁打、四球、四球でノーアウト満塁というピンチに陥ってから、長野久義選手、坂本勇人選手、大城卓三選手を全てストレートで打ち取ったピッチングです。
絶対負けられない試合の一打出れば逆転という緊迫した場面で、変化球でかわして三振を取るのではなく、3人をそれぞれストレートで押し切って3つのアウトを取ったというのは、チームの優勝への希望をつなぎ止めたという意味でも、とても印象に残っています。
「巨人・坂本勇人選手の決勝タイムリー」
9月23日に甲子園球場で行われた阪神-巨人戦。両チームとも無得点の7回表、ノーアウト1、3塁の場面で、代打で登場した坂本選手が放った決勝打となったヒットです。
前日に3打席ともチャンスで凡退していて、この日はスタメンを外れていた中、チャンスで代打で出てきて、追い込まれてからヒット。これが決勝点になるのですが、この場面で代打で行かせた阿部慎之助監督の思いとか、坂本選手が活躍することで与えるチームの影響、優勝をぐっとたぐり寄せたこと、この後の試合から調子を上げて優勝まで持っていった転機となったことなど、いろんな意味を持った一打だったのでとても印象深いです。
文/原田健