データで分かるラグビー視聴者&応援スタイルの特徴とは?【J:COM視聴データ分析】

データで分かるラグビー視聴者&応援スタイルの特徴とは?【J:COM視聴データ分析】

12月21日(土)に開幕が予定される「NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25」。2022年のリーグ開始以降、3シーズン目となる今期は、ディビジョン3に新規参入が決定している3チームを含む、全26チームによる熱戦に注目が集まっており、会場には多くのラグビーファンが詰めかけるだろう。2019年のラグビーW杯以降、ますます裾野が広がるラグビーファンの特徴とは--J:COMの視聴データからひもといていく。

ファンにも浸透する「ノーサイドの精神」が生んだ複数チーム応援の傾向

スポーツといえば、「推し」のチームをとことん応援するスタイルをイメージするが、ラグビーはやや異なるようだ。独自のアルゴリズムを用いて、試合を視聴した人が「単独チーム/複数チームを応援している」のかをラグビーと野球とで判定した。複数チームを応援する割合は、野球ファンの9.4%(図1)に対して、ラグビーファンは64.6%(図2)。Jリーグだと、県内に2チームある場合などは、相手チームに強い対抗意識を燃やす人も少なくないが、ラグビーには「試合が終われば敵も味方もなく、お互いの健闘を称え合い、感謝し、ラグビーを楽しんだ仲間として友情を深める」という「ノーサイド」という精神がある。試合終了を「ゲームセット」ではなく「ノーサイド」と表現する唯一のスポーツであるラグビーの精神が、ファンの間にも息づいているからこそ、「推し」のチームだけでなく、競技自体を愛し、複数チームを応援する傾向を生んでいるのかもしれない。

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地元ファンを中心に支持される注目チーム

ジャパンラグビー リーグワンの最高峰、ディビジョン1(D1)。都道府県別にD1に所属するチームのファンを見てみたところ、地元ファンからのチーム支持の様子が見えてきた。東京は昨季の覇者で、日本代表でもおなじみのリーチ・マイケル所属の東芝ブレイブルーパス東京、積年のライバル・東京サンゴリアスが人気を二分。サンゴリアスにも松島幸太郎をはじめ、日本代表選手がそろう。埼玉は昨季のプレーオフトーナメントで大激戦の末に敗れた稲垣啓太らが雪辱を誓う埼玉ワイルドナイツ、千葉は2022-23に頂点に立ったクボスタピアーズ船橋・東京ベイ、神奈川の三菱重工相模原ダイナボアーズなども人気だ。

一方、関西は京都、大阪、兵庫で、日本代表の山中亮平を擁し、昨季も5位と健闘した名門・コベルコ神戸スティーラーズの人気が非常に高く、大阪では花園近鉄ライナーズも人気だ(図3)。また、関東、関西ともに人気チームは広い範囲でファンがいる(図4、5)。ただ、ブラックラムズ東京のような都道府県別ファン分布の構成比が小さいチームでも、本拠地の東京都世田谷区でのファン分布がしっかり地図に表れており(図6)、地域に根差したチーム作りが行われていることが分かる。

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生観戦、テレビ観戦それぞれの楽しみ方ができる奥深いスポーツ

ラグビーの魅力を存分に味わうなら、やはり生観戦がオススメ。「ビギナーだから」「ルールが分からないから」など、尻込みする人も多いが、初心者こそ生観戦すべきだと言いたい。テレビ観戦も面白いが、生観戦すると選手同士が激しくぶつかり合う音などもしっかり聴こえて、より迫力を感じられるからだ。さらに、中継では映らないところに奥深い魅力を感じることもできる。例えばゴールキックの場面、画面ではキッカーを追いかけるが、実はキックの時間は貴重な作戦タイムでもある。ラグビーは15人の意思疎通が極めて重要だが、プレー中に細かい確認などはできない。野球なら監督はベンチにいるし、サッカーやバスケでもサイドラインから監督が直接指示を伝えられる。ところが、ラグビーでは監督は客席にいて、ハーフタイムしか選手に指示を出すことができない。選手の自主性を重んじるためだが、だからこそキックの場面は「選手同士が会話できる」貴重な確認の時間になる。また、選手の動きが統率されているため、横一列に並んだバックス陣が一斉に動き出す様子など、ダイナミックな動きが楽しめるのも生観戦ならではの魅力だ。

一方、テレビ観戦では、ラグビーを知り尽くしたプロが撮影するカメラワークで、試合全体を俯瞰で楽しめるのはもちろん、選手の表情や動きの細部を"アップで"見ることができる。滴り落ちる汗、相手とのぶつかり合いで生まれた傷、選手同士の会話も口の動きで分かるようになってくる。生観戦、テレビ観戦、そして試合終了後は、パブでファン同士が肩を組んで語り合う...「ノーサイド」の精神が選手にもファンにも息づくラグビーならではの世界がそこにある。

ラグビーを生観戦で楽しむためのポイント

リーグワンの熱戦をぜひ生観戦で楽しんでほしいが、ビギナーにおすすめの席は22mライン付近。できればグラウンドに近いほうがいい。肉体同士がぶつかり合う音や荒い息遣いが聴こえる席で、その迫力を堪能できるからだ。22mライン付近はラインアウトやスクラムが多く、目の前で激しい攻防を目撃すれば、一発でラグビーのとりこに! また、スタンドは想像以上に寒くなるので防寒対策を万全にし、選手の表情を見るためのオペラグラスも用意するといいだろう。まずは中継を見て気になった選手やチームをチェックして、実際に観戦に出かけてほしい。

※分析の調査対象範囲
ラグビー:2022年~2024年にCS放送されたラグビーリーグワンのテレビ視聴履歴データ
野球:2022年に地上波・BS・CSで放送されたプロ野球シーズン戦143×6試合のテレビ視聴履歴データ

文/渡辺敏樹