これぞプロ野球!キラリと光る「月間鳥谷賞」<第1回>

鳥谷敬

鳥谷敬 (元プロ野球選手、野球解説者・評論家)

野球解説者・元プロ野球選手 各月で一番印象に残ったプレーを、準備段階や選手のメンタル面、その時のシチュエーションなども含め、鳥谷敬が解説。

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鳥谷敬

鳥谷敬 (元プロ野球選手、野球解説者・評論家)

野球解説者・元プロ野球選手 各月で一番印象に残ったプレーを、準備段階や選手のメンタル面、その時のシチュエーションなども含め、鳥谷敬が解説。

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これぞプロ野球!キラリと光る「月間鳥谷賞」<第1回>

阪神タイガースと千葉ロッテマリーンズで活躍後、2021年に惜しまれつつ引退し、現在、野球解説者として活動している鳥谷敬によるプロ野球連載企画がスタート!毎月、鳥谷が独自の目線でセ、パ両リーグの情勢を解説するほか、「月間鳥谷賞」と題して鳥谷が思わずうなったプレーを発表していく。
(取材日は7月上旬)

【パ・リーグ】


ソフトバンクが完全に抜けているので、そこにどこが食らいついていくのかというところですね。クライマックスシリーズで最終的に勝負ができますし、短期決戦になるとどうなるか分からないというところもあるので、ソフトバンク以外はどうやって2位、3位に入るかという勝負になってきています。

オリックスは、けが人が多くてなかなか上がってこられないというのと、西武はちょっと厳しいかなという中で、若い選手がどんどん出てきているロッテは勢いがありますね。一方、日本ハムは経験のある選手も何人かいますけど、いろんな選手を使いながら戦えるだけの戦力はそろってきているので、後半戦が楽しみです。

個人的には、ロッテの若い選手が予想よりもどんどん出てきて、チームにも勢いが出てきていると思うので、そんな中でどのような戦いをしてくれるのかというのは、非常に興味がありますし、注目しているところです。

野球ファンの皆さんには、「どこがクライマックスシリーズに出るか」ということだけでなく、若手選手の活躍や"誰が出てくるのか"というところも注目していただけると、より楽しめると思います。というのも、今シーズンは珍しく両リーグとも世代交代を迎えているチームが非常に多く、チームとしても選手を育てる機会でもあるため、「次のスター選手となるのは誰か」というような目線で見てみるのも面白いと思います。

【セ・リーグ】


本当に混戦ですね。交流戦では「上が抜けていくということはないだろうけど、下はちょっと落ちていって離されてしまうかな」と思っていたのですが、中日とヤクルトが踏ん張って、逆に上位のチームが踏ん張り切れず...というところで、本当にどこが優勝するか分からない感じになってきました。クライマックスシリーズも「最後の1つ、2つで出場できるかどうかが変わってくる」という展開になってくると思うので、パ・リーグとは対照的に順位や勝ち負けに注目して見ると面白いのかなと思います。

阪神は主力が2軍に行ったり、巨人も大勢投手、中川皓太投手が戻ってきたと思ったら坂本勇人選手が調整のために2軍に行ったりと、両チームとも調子がいい時と戦力がそろう時のバランスがなかなか合っていないので、取りこぼしている試合が多くなっている。そんな中で、広島はけが人も出ずに、ピッチャーがある程度抑えて本来の形でやれているというところで上位に。一方、DeNAは元々打撃がいいので、そういったところで6チームが入り乱れた、ここまでの混戦になっているんだと思います。

後半戦は、阪神がやっとメンバーがそろってきてバッターの調子も上がってきているので、「打撃陣が点を取れるようになったら勝てる」という展開を持っているチームだからこそ、これから上がってくるんじゃないかなと予想しています。対して、広島は先発も後ろのピッチャーもいいんですけど、島内颯太郎投手にちょっと疲れが出てきているように、1人、2人調子を崩す選手が出てくると、落ちてくる可能性がありますね。

下位の2チームに関しては、中日はちょっと厳しいかなという印象なのですが、ヤクルトは奥川恭伸投手が帰ってきたりと投手陣がそろってくれば、点を取る能力はあるので上がってくる可能性は全然あると思います。

ここまで混戦だと、どのチームにも優勝の可能性があるので、選手としてもモチベーション高くプレーができますし、勝ち負けに集中している分、時が経つのが早く感じていると思います。

一方、ソフトバンクはある程度貯金はありますが、後ろから追われる中で、選手たちは「早くシーズンが進んでほしい」という気持ちが強くなって、それはそれでしんどいというのはあると思います。

【月間鳥谷賞】


毎月、鳥谷が思わずうなったプレーを紹介して称える同コーナー。初回となる今回は特別に、前半戦の中で特に気になったプレーを3つ挙げてもらった。

「広島・矢野雅哉選手のスライディングキャッチ」
5月10日に広島・マツダスタジアムで行われた広島‐中日戦で、宇佐見真吾選手が打ったレフト前に落ちるか落ちないかといった打球を、矢野雅哉選手がスライディングしながら捕ったプレーです。ゴロの対応よりも、レフト線のフライで、フェンスもあって、レフトの選手も迫ってきているという中で、あの距離感とスピード感で対応するというのは非常に難しいんです。同じショートとして見ていて、ここまでで一番いいプレーだったかなと思います。

「ソフトバンク・近藤健介選手のサヨナラ2ランホームラン」
6月2日に福岡・みずほPayPayドームで行われたソフトバンク‐広島戦で試合を決めた、近藤健介選手のサヨナラ2ランです。ストレートを狙って打ちにいったところを、少し変化球で外されながらもライトスタンドに入れるのですが、狙っているストレートから変化球にアジャストして打ったのが、技術的にも非常にレベルが高いですし、チームが苦しい中での効果的なホームランだったので、とても印象に残っています。

「日本ハム・新庄剛志監督の若手起用」
日本ハム・新庄剛志監督の水谷瞬選手や田宮裕涼捕手といった若手選手の起用と選手の見極めです。福田光輝選手に至っては、2軍で1割台の打率なのにいきなり1軍に呼んで、それで活躍して勝っている試合があるんですよ。もちろんピッチャーとの相性など(1軍に上げた)理由はいろいろあるんでしょうけど、チーム内のあつれきを生まないためにも、数字が出ていない選手をいきなり1軍で使うというようなチャレンジングなことってなかなかできないんですよ。使う側にもリスクはあるので。それでも実行して結果を出しているのはすごいです。これまで見ていて、選手起用や使い方、使うタイミングなど、常人離れしているなと。違った目線で選手を見ているところは、すごく勉強になりますね。

文/原田健