亀梨和也が映画『怪物の木こり』で見せた俳優としての魅力

亀梨和也が映画『怪物の木こり』で見せた俳優としての魅力

アーティストとしての姿はもちろんだが、亀梨は昨今、役者としても脂が乗ってきており、いくつもの話題作に出演する注目度の高い俳優の一人だ。そんな彼の演技力が堪能できる作品が映画『怪物の木こり』(2023年)だろう。映画・チャンネルNECOにて11月22日(土)に放送される。

亀梨和也が規格外のサイコパス役を熱演

同作品は、倉井眉介による第17回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した同名小説を、三池崇史監督が亀梨主演で映画化したサイコスリラー。

絵本「怪物の木こり」に出てくる怪物の仮面を被った犯人が、斧で相手の頭を割り、脳を奪い去るという連続猟奇殺人事件が発生。犯人は次のターゲットに弁護士・二宮彰(亀梨)を定める。しかし二宮の本性は、犯人をも上回るほどの冷血非情なサイコパスだった。犯人に襲われた二宮は、大けがを負いながらも一命を取り留め、逆に犯人を殺すことを決意する。事件の捜査が進められる中、警視庁の天才プロファイラー・戸城嵐子(菜々緒)、二宮の婚約者・荷見映美(吉岡里帆)、二宮の協力者で自身もまたサイコパスの外科医・杉谷九朗(染谷将太)、過去の殺人事件の容疑者・剣持武士(中村獅童)ら、さまざまな人物の思惑が複雑に絡み合い、事態は次第に混迷していく、というストーリー。

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"特徴"をあえて見せ過ぎない役者としての懐の深さ

「サイコパスvsシリアルキラー」という前代未聞の設定&ストーリーと、三池監督らしい過激で苛烈な演出が冒頭から見る者の心をつかみ、そのままラストまで運ぶ怒涛の展開に、約2時間が一瞬で過ぎ去ってしまう極上のエンタメ作品なのだが、やはり主役として作品の軸となっている亀梨の演技が素晴らしい。

物語で描かれるサイコパス傾向のある人物の特徴である "ナルシスティックで頭脳明晰、何事にも動じない"というキャラクター設定が、彼のパブリックイメージに近いため、現実離れしていても見ていてすんなり入ってくるし、何より亀梨の演技がナチュラルなのだ。"クセ"のある役では、演者が意識せずとも特徴が目立ってしまうものなのだが、亀梨は極めて自然に"特徴"を言い回しや所作の各所に忍ばせることで、役としての説得力を高めている。

作品としては見る者にしっかりと伝えたい部分であるにもかかわらず、嫌味なく自然に女性をエスコートするように、さらっとやってのけているところが、役者としての懐の深さを感じさせる。

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そんな中で、注目してほしいところが彼の"切り替え"だ。二宮はやり手の弁護士で、普段は本性を隠して生きているが、独りの時や協力者である杉谷の前、"怪物の木こり"と対峙した時などはサイコパスの顔が出る。この"人当たりの良い劇中劇の中のような二宮"と"サイコパスの本性が出た二宮"は、物語の中では時間が経っていたり頻度も少ないだろうが、作品上では目まぐるしく切り替わっており、戸城と話した後に杉谷と話したり、映美と話している途中にふと本性がのぞいてしまうなど、切り替わる頻度がかなり高い。

時系列どおりには撮影できない中で、シーンごとにしっかりと役の思考をつかんで演じ切るだけでも骨が折れる作業だが、亀梨はこの"切り替え"によって、その瞬間瞬間の二宮の思考も表現。表情一つで、「人当たりを意識した芝居に集中しているのか」「事件について考えを巡らしているのか」を見る者に伝えている。

この"切り替え"があいまいだと見る者に伝わり切らず、サイコスリラーの醍醐味を損なってしまいかねないため、かなり重要な部分であるのだが、悪目立ちすることなく違和感なく、かつ自然に演じているところに、彼の演技力の高さを垣間見ることができる。

"サイコパスな犯人以上のサイコパス"という難役を極めて自然に演じて役としての説得力を高めている亀梨の"演技の懐の深さ"と"演技力の高さ"を堪能していただきたい。

文/原田健

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