『ゴースト/ニューヨークの幻』デミ・ムーアと映画主題歌に心奪われる【小堺一機】

『ゴースト/ニューヨークの幻』デミ・ムーアと映画主題歌に心奪われる【小堺一機】

こんにちは、小堺一機です。今回、僕が未来へ伝えたい名作は、1990年にアメリカで製作されたロマンチック・ファンタジー・スリラー『ゴースト/ニューヨークの幻』。監督は『裸の銃を持つ男』シリーズのジェリー・ザッカー、主演はデミ・ムーア、パトリック・スウェイジ、ウーピー・ゴールドバーグの豪華共演作です。

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TM & Copyright (C)2019 Paramount Pictures. All rights reserved.

ニューヨークで繰り広げられる切ない愛と奇跡の物語

物語の舞台は、バブル経済が崩壊する直前のニューヨーク。銀行マンのサム(パトリック・スウェイジ)は、アーティストの恋人モリー(デミ・ムーア)や友人でもある同僚カール(トニー・ゴールドウィン)と、充実した日々を送っていました。ある夜、二人で舞台『マクベス』を観劇した帰り道、裏通りを歩いていたサムは、突如現れた男に銃を突き付けられ、「金をよこせ」と脅されます。モリーが助けを呼ぶ間もなく、サムは男の放った銃弾に倒れ、血まみれでモリーに抱かれる自分の姿を目の当たりにします。

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こうしてサムはゴーストとなり、天国へと導く温かな光に包まれますが、愛するモリーを独りにできないサムは、地上にとどまることを選びます。やがて、自分を殺した男がモリーを狙っていることを知ったサムは、彼女を守る方法を探し始めます。その過程で、インチキ霊媒師オダ・メイ(ウーピー・ゴールドバーグ)が、自分の声をモリーに届ける唯一の存在であることに気づくのです。

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デミ・ムーアの魅力あふれるラブシーンに酔いしれる

ライチャス・ブラザーズによる主題歌「アンチェインド・メロディ」をBGMに、モリーとサムが陶芸を楽しむロマンティックなラブシーンが有名な本作。今も多くの人の心をつかんで離さないデミ・ムーアの清楚(せいそ)で美しい姿が存分に堪能できるラブファンタジーの傑作としても知られています。当時、デミ・ムーアに憧れてショートカットに挑戦した女性たちが多くいましたが、現実と理想のギャップに落ち込む人も続出した、というエピソードも懐かしい思い出です。

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一方、主人公サムを演じたパトリック・スウェイジは、2009年に57歳でこの世を去りましたが、本作で見せた好青年ぶりや、ダンサー出身ならではの立ち姿や身のこなしの美しさは、今も色あせることがありません。また、霊能力はあるもののインチキ商売で生計を立てていた霊媒師オダ・メイを演じたのは、コメディエンヌとしても名高いウーピー・ゴールドバーグ。当初は『マッドマックス/サンダードーム』などにも出演したソウル界のスーパースター、ティナ・ターナーが候補に挙がっていたそうです。

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メインキャラクター3人の個性が際立つ本作ですが、脇を固める俳優陣も豪華です。サムの友人カールを演じたトニー・ゴールドウィンは、名プロデューサー、サミュエル・ゴールドウィンを祖父に持つ映画界のサラブレッド。先日、彼が出演しているレオナルド・ディカプリオ主演の最新作『ワン・バトル・アフター・アナザー』を見ましたが、あの頃と全く変わらない姿に驚かされました。

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笑いとシリアスを知る巨匠たちが生んだ唯一無二の傑作

僕は公開当時、映画館で見て以来、20回以上この作品を見ていますが、今見返してもまったく古さを感じさせない――そんな不思議な魅力を持った映画です。その理由の一つは、超豪華スタッフ陣が顔をそろえているからだと思います。監督のジェリー・ザッカーは、僕も大好きなレスリー・ニールセン主演の大人のコメディー『裸の銃を持つ男』シリーズ(第1、2作)を手がけた人物。そして脚本は、『ジェイコブス・ラダー』などのシリアスな名作で知られ、本作で米アカデミー賞脚本賞を受賞したブルース・ジョエル・ルービンです。

さらに、撮影監督には『ターミネーター』のアダム・グリーンバーグ、編集・音響には『ゴッドファーザー PART II』『地獄の黙示録』などで知られるウォルター・マーチ、音楽は『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバゴ』で米アカデミー作曲賞を受賞したモーリス・ジャール。まさに、映画史に名を残す超一流のスタッフたちが集結しています。

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特に素晴らしいのが、笑いを知るザッカー監督と、シリアスな作風で知られる脚本家ブルース・ジョエル・ルービンの組み合わせです。大将(萩本欽一さん)が、シリアスを知らないとバカなことはできないということで、「笑いを知っている人はシリアスを知っている」とよく言っていましたが、この作品の監督と脚本家のコンビは、まさにそのお手本のような存在です。もし二人がどちらも真面目一辺倒だったら、ここまでの傑作にはならなかったと思います。

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『ゴースト/ニューヨークの幻』を未来へ伝えたい理由

本作は、愛と裏切り、ホラーにバイオレンス、そしてコメディーと、さまざまな要素が絶妙に融合した、唯一無二のエンターテインメント映画です。まるで、大衆居酒屋でびっくりするほどおいしい料理が出てきて、板前さんにお礼を言いに行ったら、厨房(ちゅうぼう)には三つ星レストランの名シェフが立っていた――そんな驚きと満足感があります。特にエンディングシーンでは、デザートにゆずシャーベットが添えられたような、さっぱりとした余韻が味わえるはずです。

そして、『サブスタンス』でデミ・ムーアという俳優のすごさを知った方も多いと思いますが、本作での彼女を知っていれば、「こんな輝くような美女が、こうにもなれるのか!」と、『サブスタンス』という作品もさらに楽しめるはずです。映画史に残る傑作『ゴースト/ニューヨークの幻』をぜひご覧になってみてください。

小堺一機

小堺一機 (タレント、俳優)

タレント、俳優。幼少の頃から映画館に通うなど、これまで数々の作品を見てきた小堺一機が、次世代にまで残したい作品について熱く語り、その魅力を伝える。

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