岩橋玄樹インタビュー!『男神』で映画初出演「自分の中の経験値が上がった」
映画 インタビュー
2025.09.12
9月19日(金)、日本の伝統的習慣に潜む狂気と、それに翻弄される家族の恐怖を描いたファンタジーホラー映画『男神』が公開される。全国各地で母と子の失踪事件が続発するなか、ある新興住宅地の工事現場に原因不明の巨大な穴が突如現れる。その穴の先には、「根の国」と呼ばれる不思議な森があり、そこでは"男神"と呼ばれるいにしえの存在を鎮めるために、無垢な男の子を生贄として捧げていた......。息子がこの穴に迷い込んだことを知った主人公の和田勇輝(遠藤雄弥)は、息子を救うため、その禁足地へと足を踏み入れる。
本作の中で、異界へ通じる謎の"穴"を巡る騒動の中で、主人公・和田(遠藤雄弥)を支える建設会社の社長の息子・山下裕斗役で出演するのが、現在アメリカと日本の二拠点で活動している岩橋玄樹。映画初出演となった岩橋に、役柄や撮影秘話、はたまた大好きな野球について、たっぷり話を聞いた。
■資料や台本を読んだだけでは想像が付かないほど、壮大な世界観の作品
――最初に映画のお話を聞いた時はどう感じましたか?
「もともとYouTubeチャンネルで有名な作品で、僕もそのチャンネルのファンだったので、 "ぜひ携わりたい!"と思いました。それにやっぱり日本で生まれ育った者として、こういう日本をテーマにした作品に出てみたいなという思いもありました」
――お芝居の経験はおありですが、映画の撮影はこれまでと違いましたか?
「撮影自体はあまり変わらないと思いましたが、上映されるのがスクリーン。お客様は映画館に足を運んで、お金を払って見てくださるので、その一人一人のために頑張ろうと思いました」
――神話を扱った作品でもありますが、目に見えないものや神話の世界観は好きですか?
「めちゃくちゃスピリチュアルで、そういうことを考えるのも好きです。すぐ信じちゃうし、そういう世界が本当に見られたらいいなって思いますね。今回の作品は全体的に神秘的で、その中に男神というホラーな部分というか、男の子を生贄にしてしまうダークな部分もある。土着的宗教観が盛り込まれているので、日本ならではの怖さがありつつ、家族愛も描かれていて、バランスが取れている作品だなと思いました」
――撮影まではどんな準備を?
「まず、イメージ画像のような資料をたくさんもらって、プロデューサーや監督さんと役柄やストーリーについて話し合いました。その後、家でセリフのいろんな言い回しを試したりして、クランクインに備えましたね。でも正直、台本を読んだだけでは理解できなくて(苦笑)。自分のセリフの部分のイメージはできましたが、全体的にどういうイメージなのだろうかと。ホラーですがファンタジーの部分もあるので、どういう風にこれを作っていくのか、全く想像が付きませんでした。なので、完パケを見て、『こういう感じになるのか』と驚きましたね」
――想像以上の世界が広がっていた?
「はい。僕は、岐阜県で撮影した"根の国"の方には行っていないので、どんな感じなのか全く知らなかったんです。入り口の穴までしか見ていないので、客観的に見られて面白かったです」
――この映画の面白さはどんなところにあると思いますか?
「"男神"という目に見えない存在を、スモークやカメラワーク、カメラアングルなどで表現しているところです。男神をどうやって表現するんだろうと思っていたら、ドローンを飛ばしたりして、いろんな方法で恐怖を表現していたことがすごく印象的でした」
――古代から続く自然の景色もとても幻想的でした。
「(岐阜県下呂市の金山巨石群の)幻想的な場所がそのまま残っていて、観光名所にもなっているんです。そこで撮影もできるのが、日本ならではなのかなと思いました」
■裕斗はピュアな気持ちを持った男気あふれるキャラクター
――岩橋さん演じる裕斗は、どんなキャラクターですか?
「人を守りたいというピュアな気持ちを持った、男気あふれるキャラクターです。裕斗が運んでくる重機がないと主人公の勇輝さんを助けられないので、個人的に裕斗は意外といい役割をしていると思いました」
(C)2025『男神』製作委員会
――現場で井上監督からアドバイスを受けたり、話し合いされたことは?
「カメラが回っていないときに、呼吸を荒くするために監督と相撲を取ったりしました(笑)。監督は身体が大きいので、やられっぱなしでしたけど、リアル感にこだわって撮影しました。それ以外の細かいところに厳しいルールはなく、任せてもらえました」
――たとえば、どんなところを?
「ガテン系のヤンチャな役どころだったので、ずっと黒だった髪を茶髪にしました。あとは前髪を上げたりとか、細かい部分は自分で決めさせていただきました」
(C)2025『男神』製作委員会
――演じる際に難しかった点は?
「須田亜香里さんの弟役なので、弟感を出すのがすごく難しかったです。僕は長男なので、弟感はあまり自分にはない部分だと思っていたので。でも、やってみたらすぐにOKが出たので、うれしかったです」
――裕斗は留学経験がありますが、そこは岩橋さん自身の経歴を反映したと伺いました。それを聞いて、どう感じられましたか?
「裕斗に留学経験があることは、台本を見て初めて知りました。キャラクターについてはある程度知らされていましたが、台本を見るまではここまで英語のセリフがあることは知らなくて。英語でセリフを言うのはすごく楽しかったです」
――現場で監督から言い回しなどについてリクエストされたことは?
「監督からではなく、アーサー教授役のチャールズ・グラバーさんがアドバイスをくれました。実はもともとのセリフはちょっと違ったんですけど、現場でアーサー教授と話したら全部アドリブで行こうということになったんです。ハリウッド映画ではよくあることらしくて、ああいう対応力がないとやっぱりハリウッドではやっていけないだろうなと思いました。そういう経験ができたことはとてもうれしかったですし、自分の中の経験値が上がったように感じました」
――愛知県の撮影現場は牧場だったそうですが、現場ではどんなことをしていましたか?
「映画にも出ている馬と、カメラが回っていないところで戯れていました。夜のロケだったので、乗馬はできず、なでたりするだけでしたが、結構懐いてくれて。本当にリラックスした現場でした」
――とても自然豊かな場所だったんですよね。
「そうですね。愛知だと、名古屋にはツアーなどでよく行ってましたが、今回初めて日進市に行ったので、いろいろ探検できて楽しかったです。あと、衣装が作業着だったので、そのまま早朝の松屋に行って、ガテン系の皆さんと一緒に食べてました(笑)。近所で実際に工事をしている場所があったので、本職の方が結構来てたんです。そこから役作りをしていました(笑)」
――岩橋さんが思う「男神」の見どころはどんなところですか?
「日本独自の文化的背景からくる怖さが出ている映画だと思うので、そういうものに興味のある人はすごく楽しめる映画になっていると思います。また、ホラー作品でありながらも家族愛が描かれているので、ホラーが苦手な人でもご覧いただけると思います。それから、ここではネタバレになってしまうので言えないのですが、ホラー映画ならではのエンディングにも注目していただきたいですね。その中で、僕が演じる裕斗がいいアクセントになっていたらいいなと思います。シリアスな感じの中に、ちょっと違うテンションで存在しているので」
――岩橋さん的一押しポイントは?
「工事現場に馬がいたことです。映像では馬がCGで付け足されてたんですよ。完パケで見て、あそこに馬がいるとは思わなかったので、ビックリしました。そういった細かいところもお見逃しなく、ご覧ください」
■俳優業とアーティスト活動との違い、そして"推し"のこと
――ちなみに15年にわたって音楽の仕事を中心にされてきましたが、俳優業も増えています。俳優業への思いをお聞かせください。
「俳優業はまだまだこれからですが、今年は映画『男神』や連続ドラマ『恋愛ルビの正しいふりかた』に出演させていただけて、すごくうれしいです。演技に対する思いは昔からずっとあったのでとても楽しく、毎日刺激がありました。感覚的には、アルバムの制作期間に近い感じがします。アルバムもリリースの数カ月前から準備をするので。でも、アルバムの場合は自分でOKという判断ができますが、映像作品は監督がいて、他のキャストの皆さんもいる。自分が失敗したら最初からやり直しになってしまいますし、自分でNGかもしれないと思ってもOKと言われるときもある。何が正解なのか分からないところにも、面白さがあると思います」
――最後に、現在ロサンゼルスにお住まいでドジャースファンの岩橋さんが思う、ドジャースの推しポイントを教えていただけますか?
「ドジャースは他の球団に比べて選手一人一人のポテンシャルが高く、オールマイティーに活躍できる選手がそろっているんです。外野も守れて、内野も守れる。なおかつバッターもいろんな打順を打てる。走攻守そろっている選手も多いので、30球団の中でも一番日本の野球に近い気がします。犠牲フライやホームランで点を取るのではなくて、ヒットエンドランで1点ずつ得点を重ねていくパターンもありますし、昨年のワールドシリーズでフレディ・フリーマン選手がサヨナラ満塁ホームランを打ったように長打で複数点を取ることもできて、本当に攻撃の幅が広いんです。世界各国からトップ選手が集まっているチームなので、打順を組み替えることによって試合の流れも変わりますし、ピッチャーもいろいろなタイプがいますね。ドジャースという球団は中学生の頃から好きですけど、近年は特にメジャーリーグの中でも素晴らしい球団だということを再確認しています。今は、大谷翔平選手や山本由伸投手、佐々木朗希投手と日本人選手もいますし、他にもウィル・スミス捕手や、僕が好きなムーキー・ベッツ選手とか、本当に個性豊かな選手がそろっています。ちなみに昨年のホームランダービーで優勝したテオスカー・ヘルナンデス選手もドジャース所属ですが、そのヘルナンデス選手よりも大谷選手はホームランを打っているんですよね。本当に誇らしいと思います。もう語り切れないです!」
取材・文/及川静 撮影/梁瀬玉実