映画『首』で感じる!俳優・ビートたけしの欠かせない魅力は「間」の使い方

映画『首』で感じる!俳優・ビートたけしの欠かせない魅力は「間」の使い方

日本を代表するお笑い芸人、世界を魅了する画家、世界を驚かせ続ける映画監督、人々に多くの感情を芽生えさせる作家と、さまざまな顔を持つ北野武。それぞれの顔が一流であるため、なかなか注目されないが、実はビートたけし名義で俳優としても活躍し、唯一無二の存在感を放つ名優だ。

監督&主演作品では、寡黙で真意がつかみづらい役が多いのだが、スクリーンから訴えかけるものがあり、周りの豪華な役者陣の中に混ざっても、その存在感が失われないのが何よりの証拠だろう。

せりふが決して多くない中で、なぜあそこまでの存在感が出せるのだろうか。その答えの1つに、抜群に上手い「間」の使い方がある。それは1拍や半拍というレベルではなく、0.1拍単位で自在に扱っているのだ。不自然さはないのだが違和感がほのかに香る、絶妙に居心地の悪さを感じさせるようなせりふ回しで、多様な人間性を表現している。

数分という短い時間に全てを懸ける漫才師として天下を取った能力の一部であろうが、繊細な変化で芝居をコントロールする力は筆舌に尽くしがたいものがある。

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そんな中で、"戦国最大のミステリー"といわれる「本能寺の変」を題材にした彼の監督作である映画『首』(2023年)では、裏で糸を引く羽柴秀吉を熱演。これまで演じてきた役とは一線を画すキャラクターで、口数が多く、胸の内が読めない腹黒さなどを表現し、新たな一面を披露している。

西島秀俊演じる明智光秀に対する時と、大森南朋演じる弟・羽柴秀長、浅野忠信演じる黒田官兵衛と共に悪だくみをしてほくそ笑む時との違いなど、わずかな「間」の使い方の違いは必見。言葉を生業として天下を取った彼ならではの高等テクニックがちりばめられている。

本作における「間」の使い方で、彼の役者としての高いポテンシャルを堪能してみてはいかがだろうか。

文/原田健

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