森川智之が語るトム・クルーズの魅力、『ミッション:インポッシブル』のスタントは"すごい"を超えて"尊い"

森川智之が語るトム・クルーズの魅力、『ミッション:インポッシブル』のスタントは"すごい"を超えて"尊い"

ハリウッドスター、トム・クルーズが最強エージェント、イーサン・ハントをスタントなしで演じるスパイアクション「ミッション:インポッシブル(以下、M:I)」シリーズ。5月23日には、最新作『ファイナル・レコニング』が日米同時公開される。その日本語吹き替え版でイーサン・ハントの声を務めるのが、トム・クルーズ公認の声優として知られる森川智之だ。シリーズ第1作が地上波で放送された当時から最新作まで、25年にわたりイーサン・ハント/トム・クルーズと歩んできた森川に、あらためてM:Iシリーズ、そしてトム・クルーズの魅力について聞いた。

250516_morikawa02.jpg

――森川さんとM:Iシリーズとの出会いについてお聞かせください。

「日本語吹き替え版の声優として参加したのは、映画館で『M:I-2』を見たタイミングでした。子どもの頃、親と一緒にM:Iシリーズの原点となるドラマ『スパイ大作戦』を見ていて『カッコいいな』と思っていたので、映画館で見た時は『これからも楽しみなシリーズになりそうだな』とワクワクしました」

250516_morikawa13.jpg

――森川さんが思うM:Iシリーズの魅力は、どういったところにありますか?

「"トム・クルーズ=イーサン・ハント"という魅力もありますが、やはりトムのノースタントによるアクションシーンはもちろん、IMFの諜報員がスパイ活動をする物語にとどまらず、最先端技術と人間の共存といった大きなテーマが魅力だと思います。それがトム・クルーズと映画との向き合い方ともすごくリンクしていて、表現の一環でCGも使いますが、やはり人の手でやるべき部分を彼はしっかり守っているんです。特に前作『デッドレコニング PART ONE』から続いている、AI・エンティティとイーサンとの戦いは、現代社会が抱える問題も重ねられていて、それをエンターテインメントとして成立させているのが、本当に素晴らしいと感じています」

250516_morikawa04.jpg

――M:Iシリーズで、特に印象に残っているアクションシーンを教えてください。

「毎回、最新作が公開されるたびに驚きが更新されています。最新作『ファイナル・レコニング』でも、予告編に登場するトム・クルーズ自身が演じている飛行機や潜水のシーンなど、CGではなく生身の人間が挑戦するというこだわりに驚かされました。M:Iシリーズのスタントは、ただ単にトム・クルーズという主演俳優とプロデューサーを兼任している人物が、映画を見に来ている皆さんを楽しませようとしているだけではなく、映画や人間に対する思いを表現するためにノースタントで挑戦し続けていると思うと、"すごい"を通り越して"尊い"と感じています」

250516_morikawa15.jpg

――シリーズを通して演じる中で、イーサン・ハントというキャラクターがどのように変化したと感じますか?

「第1作や第2作の頃は、若くてエネルギッシュな男性的な魅力を発揮していたイーサンも、『M:I:Ⅲ』ではスパイを引退して指導的な立場になっていて、そこからまた最前線に戻って、以降は仲間と共にさまざまな陰謀に立ち向かいながら、人間として大きく成長していったと感じています。特に会話のシーンで、それまでのイーサンは少し他人をはねのけるような印象もあったんですが、人と関わる機会が増えるにつれて、ウィットに富んだ会話ができるようになってきているんです。そういった彼の成長をしっかりと表現できるように、なるべく人間臭い演技を意識しています」

250516_morikawa06.jpg

――M:Iシリーズにおいて、森川さんが思うご自身の"ミッション"は?

「洋画の吹き替えは、俳優さんの口の動きに合わせてセリフを言わなければならない上に、表情の変化や息継ぎ、口の開閉といった動きにも日本語を合わせていく作業なので、吹き替え版台本を制作する方々の苦労はすごいなと感じています。僕の日本語吹き替え版に対する考えとして、字幕のオリジナルの音と同じ演出効果を持つための演技をしないといけない、という思いがあるんです。日本語吹き替え版の映画を見に行ったとしても『そういえば吹き替え版だったね』『やっぱりトム・クルーズってカッコ良かったね』と思ってもらえることが僕の一番の喜びなんです。なるべく違和感なく、吹き替えを見ているという感覚なしで皆さんが映画に集中できるような演技をする。それが僕のミッションです」

250516_morikawa17.jpg

――シリーズのファンから寄せられた中でも、特にうれしかったコメントなどがあれば教えてください。

「やはり"トム・クルーズ=森川"という声をいただけるのは、すごくうれしいです。以前、トムが初来日してから30年にわたって通訳を務めてきた戸田奈津子さんとお話した際に、『エンターテインメントのお仕事に関わっているけれど、お手伝いしている側だという気持ちが常にある』という思いを、お互いに持っていたことが分かったんです。これからも、戸田さんと共有した思いや、皆さんからの声を大切にしながら、トムの日本語吹き替え版のスタッフとして、ずっとお手伝いできればと思います」

250516_morikawa18.jpg

――最新作『ファイナル・レコニング』は、どのような物語になるのでしょうか?

「ネタバレになるので多くを語ることはできませんが、たくさんの映画で吹き替えを担当してきた中でも、こんなにすごい映画は他にないと思います。映像の迫力やトムのアクションはもちろんすごいですけど、人物の描かれ方や普遍的なテーマなど、本当に細かい部分まで満足させてくれる最高のエンターテインメントです。映画館で見ないと本当にもったいないので、ぜひ劇場でご覧ください!」

取材・文/中村実香 撮影/永田正雄


映画 連載コラム

もっとみる

映画 インタビュー

もっとみる