大人気旅番組シリーズの唯一の劇場版は"魅力"の全てがパワーアップした神回に

大人気旅番組シリーズの唯一の劇場版は"魅力"の全てがパワーアップした神回に

映画『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』(2016年)が5月26日(月)に映画・チャンネルNECOで放送される。

同作品は、2007年から続く大人気旅番組シリーズの劇場版で、2017年まで放送された第1シリーズに出演した太川陽介と蛭子能収がゲストの三船美佳と共に、初の海外となる台湾で"バス旅"に挑む。

3人は台湾を舞台に、路線バスを乗り継いで台北から最南端の鵝鑾鼻(がらんび)灯台まで、高速バスや鉄道といった他の交通機関は使用できず、使用した場合は乗った場所まで戻ってリスタートしなければならないというルールで、3泊4日での縦断を目指す。

シリーズ唯一の劇場版となる同作の見どころといえば、当初は単発企画だった番組が想定外の人気を博してシリーズ化となったその"魅力"が"初の海外"と掛け合わさり、「劇場版」という名に恥じないほどパワーアップしているところだ。

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知られざる地元住民のリアルな"暮らし"を発見

元々の"魅力"である「ローカルという知らない土地の風土や、観光地とは一線を画した現地の人々のリアルな生活の営みに触れられる点」においては、バス停に時刻表がなかったり、バスが雨漏りしたり、高速バスと路線バスの違いが分かりにくかったりと、現地でしか分からないことが盛りだくさんで"新鮮さ"や"驚き"がある。さらに、地元住民との交流も面白い。路上でバーベキューをしている子供や、公園で出会った日本に20年間住んでいたという女性、番組のことを知っている男性、看護師を目指している女子高校生、同じバスに乗り合わせた買い物帰りの主婦など、日本とは違う"暮らし"の中にさまざまな発見がある。

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言葉も文化も違う見知らぬ土地でゲーム性が急上昇

また、「路線バスの乗り継ぎという絶妙に便利で不便なゲーム性」に関しては、"言葉が通じない・勝手が分からない"というハードルがよりゲーム性を高めている。南に向かうには次にどの街を目指せばいいかが分かりにくく、現地の人に尋ねるのも難しい。加えて、「高速は通れない」という条件を説明するのも一苦労。しかし、旅の後半では出演者たちがこなれてきて、その変化も面白い。そんな中で、最もゲーム性が高まった要因が「台風の直撃」だ。予期せぬ出来事に旅は混迷を極める事態となり、出演者には申し訳ないが見る側としては「これほど面白い展開はない」というくらいエンターテインメント性に富んだものになっている。

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太川と蛭子の言い合いや蛭子が涙するシーンなど人間性があふれ出る

そして、シリーズの醍醐味ともいえる「ロケが進むにつれて出てくる出演者たちの人間性」においては、「何としてもクリアしたい」という太川の"率先して動く前向きな一面"や、時にわがままなところも出てしまう蛭子の"マイペースさ"はもちろん、かつてない過酷な旅で、蛭子の失礼発言や太川と蛭子の軽い言い合いなどが頻出。精神的な余裕が失われていくにつれて、早々に人間性があふれ出す。中には、蛭子が涙する珍しい一幕も。そんなおじさん2人を、旅の最初から最後まで三船の明るさが救っており、3人が絶妙なバランスを保っているところも見どころだ。

唯一の劇場版で、全てがパワーアップしている番組の魅力をぜひ堪能していただきたい。

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文/原田健

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