宮本信子から飛び出す数々の撮影秘話にのんも興味津々

東京・TOHOシネマズ 日比谷と大阪・TOHOシネマズ 梅田で、5月1日(木)まで開催された「日本映画専門チャンネルpresents　伊丹十三4K映画祭」。同企画は、「日本映画専門チャンネル」を運営する日本映画放送によるもので、伊丹十三監督の全10作品の4Kデジタルリマスター版を上映する特別企画だ。なお、日本映画専門チャンネルでは、「24時間まるごと　伊丹十三の映画 4K」と題して、5月17日(土)から伊丹監督の全10作品を一挙放送する。（「【伊丹十三4K映画祭】で開催された登壇イベントの模様も放送）

多くの映画ファンが鮮やかな映像で甦った伊丹作品に改めて心を打たれている中、4月18日にはTOHOシネマズ日比谷にて「スーパーの女」上映記念登壇イベントが行われ、宮本信子とのんが登場。２人は映画「スーパーの女」の上映後に登壇し、トークセッションで伊丹作品の印象や撮影秘話を語って会場を盛り上げた。

宮本信子が「スーパーの女」の撮影秘話を告白

「特に『タンポポ』(1985年)、『マルサの女』(1987年)、『ミンボーの女』(1992年)、『スーパーの女』(1996年)が好き」だという、のんが「改めて見て興奮しました。(宮本演じる)花子と(津川雅彦演じる)五郎の掛け合いが本当に楽しくて」と感想を明かすと、宮本は「津川さんとは何度もご一緒させていただいていて、『スーパーの女』では小学校の同級生という役で本当に楽しくて！ボケとツッコミの漫才みたいなところが多くて」と回顧し、「伊丹監督は俳優出身だから、『俳優同士の間の芝居がすごく面白い』と言っていて、『スーパーの女』では、ほとんどワンシーン、ワンカット。監督がモニターを見て、あごを撫でながらニヤニヤしていたのを覚えております」と裏話を披露した。

また、「スーパーを舞台にした作品だと知った時はどう思った？」と聞かれると、宮本は「私は(伊丹の)妻なので、(構想の段階から)そういうのはよく知っているんですね(笑)」と返答して笑いを誘いつつ、脚本について「私と身近なおばさんの花子がだんだんスーパーをグレードアップしていって、彼女が思うようなスーパーにしていくっていうのがすごく痛快でした」と読んだ時の感想を打ち明けた。

連続テレビ小説「あまちゃん」共演時からの成長に仰天

さらに、宮本は共演作である連続テレビ小説「あまちゃん」(2013年、NHK総合ほか)当時ののんについて「本当に初々しくてかわいくて、一途で。その良さは失われていないと思いますけど、それがキラキラして素敵でした」振り返りつつ、「『あまちゃん』の時はまだ10代で、『はい』『ありがとうございます』『頑張ります』の3言くらいしか言えなくて。本当にそういうシャイな子が、いろんなことで苦労して、成長して、この年齢になって、自分の意見をしっかり言える素晴らしい女性になったと思っています。これからもそれを磨いてほしいなと思います」とメッセージを贈り、のんを感動させた。

一方、のんは「和やかなシーンから緊張感のあるシーンに切り替わる時、宮本さんの演技で一瞬にして空気が一変するのがたまらないですね。宮本さんご自身の演技だけじゃなく、空気全体がピチッと変わっていくのが気持ちいい」と述懐。

クリエイター目線でも伊丹作品の魅力に心酔

のんは伊丹作品について「めちゃくちゃカッコいいなって思います。社会的なテーマを扱っている中で、言葉の掛け合いだったり、映像の作り方だったり、伊丹監督が描くイラストのような画が入ってくるのもシビれるし！その中で、宮本さんが主演として大胆で、快活な力強い女性を演じていらっしゃって、それがすごく粋。カッコいいなって思います」と告白した。

そんな中、「伊丹監督は誰にでも優しかった」という伊丹組の撮影現場の話題では、宮本が「私には厳しかったと思います。スクリプターの方が『また監督の女優いじめが始まった』って言うくらい(笑)。何度やっても駄目で、『もっとやったら、もっと絞り出る。絞り出すんだろう？』と。でも、そのおかげで私は鍛えられたと思います」と監督の演出家としての一面を明かした。

ほか、宮本は同企画について「10本ギュッと凝縮して上映されているということ、40年も昔の映画なのにこうしてたくさんのお客様に見ていただいていることにとても感謝しています。こんなことはあり得ないことですから。しかも、満席だと聞くと、本当にありがたいです。伊丹さんも赤字が嫌いでね(笑)」とジョークを交えて笑いをさらいつつ、観客に謝辞を述べてイベントを締めくくった。

文／原田健