ファン・ジョンミンがいたからこそ成立したといえる映画『人質 韓国トップスター誘拐事件』【古家正亨連載】

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古家正亨 (ラジオDJ/イベントMC)

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ファン・ジョンミンがいたからこそ成立したといえる映画『人質 韓国トップスター誘拐事件』【古家正亨連載】

2015年に公開された韓国映画『ベテラン』の続編となる『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』が、大ヒットしている韓国本国に引き続き、4月11日に日本で公開されることになりました。主演は、韓国の"国民俳優"ファン・ジョンミンさんがベテラン刑事、ソ・ドチョル役を続投することでも話題です。ファン・ジョンミンさんと言えば、映画『ソウルの春』『工作 黒金星と呼ばれた男』など出演作が全て大ヒット。日本にも多くのファンを抱える韓国のトップスターで、個人的にも大好きな俳優です。そんなファン・ジョンミンさんが"自分自身を演じた!?"という映画を、今回はご紹介したいと思います。タイトルは『人質 韓国トップスター誘拐事件』です。

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記者会見から帰宅の途についた国民的スターの"俳優ファン・ジョンミン"が、ひと気のない路地で突然、何者かに連れ去られてしまいます。パイプ椅子に縛りつけられた状態で意識を取り戻した"ファン・ジョンミン"は、ソウルを震撼させている猟奇殺人事件を起こした凶悪集団に、身代金目的で誘拐されたことを知ることになります。これだけ大スターにも関わらず、誘拐された証拠や目撃情報はなし。そこで彼は、自らの命を守るため、これまで培ってきた唯一の武器であるその卓越した"演技力"で、犯人たちと対峙していくという、ストーリーを聞いただけでもドキドキしてしまう、そんな映画です。これをわずか94分で描いているんですから、恐れ入ります。とにかくテンポがいいです。

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実はこのストーリー、実話に基づく話なんです。2004年に中国で、刑事役などで人気だったウー・ロウフーという俳優さんが誘拐された事件をベースにしているそうです。しかもその後、中国で大スター、アンディ・ラウ主演で『誘拐捜査』(2015)という題名で映画化もされ、実際に誘拐されたウー・ロウフーさんも重要な役どころで出演しているんですね。なので、形としては、この映画のリメークという形になります。

ウー・ロウフーさんがどのような人かは存じませんが、ファン・ジョンミンさんは、これまで出演してきた作品での姿は、カメレオンのように、自由自在にその役になりきっていて、どれ一つとして同じような演技を見せてはきませんでした。なので、ファン・ジョンミンさんが、ファン・ジョンミンを演じるという難しさは当然あったと思います。でも、この映画の中に出てくる"ファン・ジョンミン"は、まさにご本人そのものといった感じで、僕も奇跡的にお仕事をご一緒させてもらったことがあるんですが、人懐っこさがあって、温かい、誰にでも優しく接してくれる、そんなファン・ジョンミンさんそのものといった感じなんですよね。なので、ご本人を知っている立場から見ると、途中から、ドキュメンタリーを見ているのか、フィクションを見ているのか、わからなくなってしまうほどの熱演をされていらっしゃいます。

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誰もが知る存在で、そのキャラクターも意外と知られていて、多くの国民から愛されている俳優さんって、かなり稀有な存在だと思うので、この映画が成立したのは、まさにファン・ジョンミンさんという存在がいたからこそといっていいと思います。おそらく彼以外の俳優さんがこの映画の主人公を演じても、どこかちょっと"映画感"があり、フィクションであることを意識せざるを得なかったと思います。本作で監督を務めたのは、新鋭のピル・カムソンさん。脚本には少し粗さを感じる部分があるものの、ファン・ジョンミンさんに絶大な信頼を置いて、一気に熱さ、情熱で撮り上げた映画のような感じがします。日本でもし、この映画がリメークされるとしたら、誰が演じられるでしょうか......。

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