"レトロフューチャー"な世界観に引き込まれる! 子供も大人も楽しめるNetflix映画『エレクトリック・ステイト』はココがすごい
映画 独占配信
2025.04.16
「キャプテン・アメリカ」「アベンジャーズ」シリーズで知られる、ハリウッドで今、最も注目を集めるクリエイターユニット、アンソニー&ジョー・ルッソ兄弟。彼らの監督最新作となるSFアドベンチャー『エレクトリック・ステイト』が3月14日(金)よりNetflixにて世界独占配信中だ。
人間に酷使されたロボットが自由を求めて反乱を起こし、人間とロボット間で戦争が起きた1990年代初頭。イーサン・スケイト(スタンリー・トゥッチ)が開発した意識と人型ドローンをつなぐ装置・ニューロキャスターの登場によって人類は勝利し、6000以上のロボットがアメリカ南西の広大な砂漠地帯にあるEX(制限区域)に投獄された。人間の意識を本体とドローンに分割できるニューロキャスターが生活必需品となるなか、事故で両親と天才的な頭脳を持つ弟・クリストファー(ウッディ・ノーマン)を失った少女・ミシェル(ミリー・ボビー・ブラウン)は、ある日、弟が大好きだったアニメに登場するキャラクター・キッドコスモと同じ姿をしたロボットと出会う。
会話の中で、ロボットがみせたポーズから、亡くなったと思っていた弟がロボットを操り、自分がまだ生きていると伝えに来たと気づいたミシェルは、弟を探すためにEXへと向かう。道中で出会った密輸業者・キーツ(クリス・プラット)と、その相棒ロボット、ハーマン(声:アンソニー・マッキー)と共に、西海岸を旅する彼女は、弟が世界を維持するための鍵であることを知る。
スウェーデンの田園風景にロボットや恐竜を組み合わせた超写実的なイラストで知られる世界的アーティスト、シモン・ストーレンハーグによる同名のグラフィックノベルを原作に、「キャプテン・アメリカ」「アベンジャーズ」シリーズでタッグを組んできたクリストファー・マルクス&スティーヴン・マクフィーリーが脚本を担当した本作。ロボットと人類が対立する1990年代のアメリカを舞台に、不思議なロボットに導かれながら、弟を探す旅に出るという物語の中心を貫くのは「レトロフューチャー」な世界観。どこか懐かしい風景の中に、現代より進化したテクノロジーが混在する不思議な世界で、ミシェルは世界の真実に迫っていく。
主人公・ミシェル役には「ストレンジャー・シングス 未知の世界」で世界的ブレイクを果たしたミリー・ボビー・ブラウン。本作でも、弟を救うために大冒険を繰り広げる少女を表情豊かに演じている。そして、彼女の旅をサポートするキーツを演じているのが「アベンジャーズ」シリーズでルッソ兄弟と最高のケミストリーを披露したクリス・プラットだ。
陽気で冗談ばかり口にするが、義理人情に厚く誠実な男といった、プラットという役者が持つ個性が最も輝くキャラクターといっても過言ではないキーツ。まるで歌っているかのようなリズミカルなセリフまわしや、相棒ロボ・ハーマンとの軽快な掛け合いが印象的だ。
彼らとは対照的に、アンチロボットのポジションで冷徹な演技を披露しているのが、ニューロキャスターで世界を牛耳っているイーサン・スケイト役のスタンリー・トゥッチと、ロボットを取り締まるマーシャル・ブラッドベリー大佐役のジャンカルロ・エスポジートだ。数々の映画やドラマでいぶし銀の名演を披露してきたベテラン二人が、世界のダークサイドをしっかり表現していることで、物語にリアリティと確かな深みが与えられている。
作品の最大の魅力といえるのが、個性的なビジュアルのロボットたちだ。1950年代に日本やアメリカ、ヨーロッパで産声を上げたブリキのおもちゃを思わせる造形の彼らは「こんなロボットのフィギュアがあったら欲しい!」と思ってしまうほど親しみやすいフォルム。彼らが本当に存在しているかのように思えるハイクオリティなCG技術は圧巻の一言だ。そして、ロボットたちのリーダー、Mr.ピーナッツの声をウディ・ハレルソンが演じるなど、豪華ボイスキャストによる温かみのある声も、観る者がロボットを近しく感じる大きな要因と言えるだろう。
ミシェルと弟、キーツとハーマンの絆や、クライマックスに待ち受けるロボットと人型ドローンとの大規模バトルなど、さまざまな見どころが満載の本作。子供から大人まで楽しめるファミリー・エンターテイメント・ムービーとして、多くの人に愛されるであろう秀作だ。
文/中村実香