シリーズ完結編となる映画『Dr.コトー診療所』で初参加の生田絵梨花と高橋海人が説得力のある芝居で"裏のストーリーテラー"に
映画 見放題
2025.01.16
映画『Dr.コトー診療所』(2022年)が1月16日(木)よりJ:COM STREAMにて見放題配信される。同作品は、山田貴敏の同名漫画を吉岡秀隆主演でドラマ化した作品の劇場版で、2003年の連続ドラマ、2004年のスペシャルドラマ、2006年の連続ドラマ第2期と、3年にわたって描かれたシリーズの16年ぶりとなる続編として制作された完結編。日本の西の端に位置し、本土から6時間かかる絶海の孤島・志木那島にやってきた医師・五島健助(吉岡)の活躍を描いた医療ドラマ。 19年前、東京から志木那島に来た五島は、"島のたった一人の医師"として島民全ての命を一身に背負ってきた。始めは島民から煙たがられていた五島だったが、長い年月をかけて島民の信頼を得て、"コトー先生"と呼ばれて島にとってなくてはならない存在に。互いにとってかけがえのない家族のような関係となっていた。数年前、コトーは長年支えてくれていた看護師・星野彩佳(柴咲コウ)と結婚し、彩佳は現在妊娠7カ月。コトーがもうすぐ父親になることを島全体で心待ちにしていた。そんなある日、過疎高齢化が進む志木那島に近隣諸島との医療統合の話が持ち上がる。そして、コトーの元に「島を出て拠点病院で働かないか」という依頼が舞い込む。それが島の未来のためになることは分かっていながらも、コトーは返事をできずにいた、というストーリー。
(C)山田貴敏 (C)2022 映画「Dr.コトー診療所」製作委員会
16年という時間経過の中で描かれる不変と変化
ストーリーは、シリーズ初登場となる西野那美(生田絵梨花)がフェリーで本土から帰ってくるところからスタート。一方、島では時を同じくして島の漁師・原剛利(時任三郎)が漁船事故で脚をけがしてしまう。那美は彩佳の父・星野正一(小林薫)から、同じフェリーに乗っているという東京から島に研修に来た新米医師・織田判斗(高橋海人 ※高ははしご高)を探して、一緒に診療所に連れてくるよう頼まれる。診療所では、十分な医療設備もない中、コトーが剛利の手術を強行。「剛利が漁師だから」と切断する選択肢は考えず、手術を行い見事成功させたコトーに、判斗は驚きを隠せない。診療所の待合室では、島民たちが集まり騒々しくも剛利の手術の成功を祈っていた。 オープニングから描かれるこの一山までに、時間が止まったかのように変わらない島民同士の関係性や、診療所が島民の憩いの場になっていること、コトーが島民たちから信頼され愛されていること、コトーの決断力と実行力、人当たりの良さなどからくる愛される要因などを一気に描き、さまざまなことが16年という時間を経ても変わらず続いていることを表現。シリーズのファンには「これこれ!」とかゆい所に手が届くように、登場人物たちが16年前の関係値のまま期待を裏切らず躍動。シリーズ初見である観客に対しては、それぞれの関係性をまとめて伝えている。そんな中で、診療所の中の医療器具の充実具合や、コトーが往診で乗る自転車が電動になっているなど、しっかりと時の流れも描いており、"不変"と"変化"の調和で時間の流れを見事に表している。
(C)山田貴敏 (C)2022 映画「Dr.コトー診療所」製作委員会
シリーズ初登場の生田絵梨花&高橋海人が真逆の立ち位置で"裏ストーリーテラー"に
主要キャストは2003年から変わらない中で、今作で初登場となった生田と高橋の演技が素晴らしい。生田は島の助産師・西野美登里(藤田弓子)の孫で、診療所の看護師として働いている那美を、高橋は東京の病院から研修に来た新米医師・織田判斗をそれぞれ演じているのだが、"島で育った者"と"島外から来た者"という対比の関係性で再三、意見が衝突する。これまで見てきた島の医療を軸に現実と未来を考えている那美に対し、判斗はコトーにおんぶにだっこという臨界点に達している島の医療の現実と未来を憂いており、どちらも間違っていない、それぞれの視点から見た"島の医療の現実と未来"が見る者に重い"問いかけ"をしてくる。 いわば、那美と判斗がこの作品の主題を描く上での"裏"のストーリーテラーとなっているのだ。初参加ながら昔から島にいた那美を違和感なく演じた生田、初参加ながら島民たちに医療の実態が不自然でアンバランスであることを訴える判斗を嫌味なく演じた高橋。ドラマの第1期から見守ってきたファンは那美の目線で、シリーズ初見の者は判斗の目線でストーリーを追うことができるのだが、それを可能にしているのは両役者の芝居に説得力があればこそだ。
(C)山田貴敏 (C)2022 映画「Dr.コトー診療所」製作委員会
果たしてどんなラストが待ち受けているのか?"不変"と"変化"の調和で表した時間の流れを感じつつ、生田と高橋の演技に導かれながら、19年間にわたって描かれた壮大な医療ドラマの結末を見届けてほしい。
文/原田健