人気絶頂時のチェッカーズがまとうキラキラ感と当時の時代の"勢い"を堪能せよ

人気絶頂時のチェッカーズがまとうキラキラ感と当時の時代の"勢い"を堪能せよ

映画『チェッカーズ SONG FOR U.S.A.』(1986年)が、12月1日(日)にホームドラマチャンネルで放送される。

同作品は、映画『CHECKERS IN TAN TAN たぬき』(1985年)に続くチェッカーズ主演映画の第2弾で、ニューヨーク出身のミュージシャンとの出会いから、チェッカーズが自分たちの音楽をもう一度探り出そうとする姿を描く。主題歌の「Song for U.S.A.」も大ヒットし、彼らの代表曲の1つとなった。

チェッカーズの主演映画第2弾が完成し、その披露パーティーでフミヤ(藤井郁弥 ※現・藤井フミヤ)が解散宣言をする。ちょっとしたジョークだったが、マスコミや世間を驚かして大騒動に発展し、チェッカーズは事務所から出られなくなってしまう。そんな中、フリーライター・涼子(浅野温子)の機転で脱出に成功したメンバーたちは、年に1度の2週間の休暇をスタートさせる。バイクで一人旅に出るタカモク(高杢禎彦)、家の天体望遠鏡で空を見つめるマサハル(鶴久政治)など、それぞれが思い思いの休暇を満喫する中、フミヤは夜の公園で黒人の少女・カリィ(カリィ・ルイス)と出会う。カリィはライブハウスでサックスを吹く父、PJ・マイルス(ルーサー・コビントン)と暮らしており、2人の家を訪れたフミヤはマイルスが奏でるサックスのメロディに心を揺さぶられる、というストーリー。

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人気絶頂のアイドルバンドがまとうキラキラ感

チェッカーズが本人役で登場する映画なのだが、人気絶頂の彼らのキラキラ感が、80年代アイドルの何とも言えない力強さを感じさせてくれる。これは映画スターに関して語られがちなことでもあるが、現代のアイドルのスタイリッシュで洗練されたスマートな存在感とは一線を画した、迫力のある筆舌に尽くしがたい存在感があるのだ。例えるなら、十分に輝きが増すように計算されたカットと磨きによって最高級に仕上げられたダイヤモンドと、そこまで手を加えられていないがその存在感だけで人々を惹きつける魅力を持つ大きな原石の違いで、どちらが上・下、優・劣ということではないが、現代では出会えない圧倒的なキラキラ感は、大人の視聴者には"エモさ"を感じさせるだろうし、若者たちには"新鮮さ"を感じさせるのではないだろうか。

演技に関しても、本人役というところで極めてナチュラルで、それぞれの心情がダイレクトに伝わってくるうえ、助演の浅野温子が作品性を向上させている。フミヤのことが気になりながらも、仕事に生きる女性として彼らと接し、思いをぶつけてくるナオユキ(藤井尚之)を受け止める"大人な"対応など、恋とも友情とも断定しがたい"大人らしさ"で、リアリティーを付与している。

エンタメのジャンルが乱立している今だからこそ見るべき作品

また、マクロな視点で観賞すると、しっかりとしたストーリー性や随所に散りばめられた彼らの楽曲、ニューヨークまでロケに行っていることなどから、制作陣の力の入れ方と彼らに熱狂する当時の世間の熱などが感じられて面白い。アイドル文化が産声を上げてエンタメの一つのジャンルとして確立した"勢い"は、その時代ならではのもので、多くのジャンルが乱立した現代では決して感じることができない。そんな"勢い"を感じるという意味では、「あえて今、観賞するべき作品」として挙げてもいいのではないだろうか。

チェッカーズファンは若かりし頃のやんちゃでセクシーなメンバーを懐かしんでいただきつつ、そうでない方々もエンタメ作品として"当時でしか醸し出せない雰囲気"を味わっていただきたい。

文/原田健