鈴鹿央士の身体作りが作品に与えた説得力「喧嘩独学」【夫婦のじかん・大貫さん】
国内ドラマ 連載コラム
2026.10.11
■覚醒もしない。転生もしない。―それでも強くなる。
韓国のウェブトゥーンが原作の「喧嘩独学」。日本でも漫画アプリで配信されており、国内累計5.4億回、世界累計22.8億回を超える閲覧数を記録している大ヒット漫画です。私も日本での配信当初から愛読しており、実写化をとても楽しみにしておりました。
「喧嘩独学」の面白さは、いじめられっ子で喧嘩も弱い高校生・志村光太が、喧嘩動画をきっかけに少しずつ強くなっていくところです。漫画が原作ということで、何か特殊な能力をある日突然手に入れるとか、実は主人公に秘められた能力があったとか、転生した先で前世の能力が生かせるとか、そういった漫画ならではの設定を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、この作品は、ひたすら動画を見て実践していくという、とても地道な方法で強くなっていくのです。もちろん、動画を見ただけですぐに喧嘩が強くなるわけではありません。何度も失敗し、痛い目に遭い、それでもまた動画を見て、試してみる。その繰り返しです。だからこそ、志村が少しずつ強くなっていく姿には、妙な説得力があります。「才能があったから勝てた」のではなく、弱いなりに自分で考えて、学んで、試して、失敗してきたから勝てるようになる。
いわば、志村が手に入れるのは「特殊能力」ではなく、知識と経験と努力です。そして、漫画ではその変化を絵で楽しむことができますが、これを実写にすると、また違った面白さが生まれます。それを強く感じたのが、主演の鈴鹿央士さんの役作りでした。
■鈴鹿央士が作った、志村光太の身体
主人公の志村は、いじめられっ子で最初は本当に弱いんです。とは言え、実写化するということは、その後のアクションなどもあるため、その辺はスタントマンさんなどを投入し、うまい具合にやっていくのかなと勝手に想像していました。最初の方のシーンで、志村が下着姿になるシーンがあるのですが、このときの鈴鹿さんは本当に細い!ひょろっとした気弱そうな体型で、すぐさま家に招いて大盛ご飯とレバニラ炒めを食べさせてあげたくなるほどです。しかしその後、志村が成長していく過程と同じくして、鈴鹿さんの体も鍛え上げられていくという、アンビリーバボーな展開に...!漫画なら体型の変化は絵で描けば済みますが、それを実写で表現するとなると、本当に想像を絶します。しかしそこもまた、物語のリアリティを増しているのです。地道に体を鍛えているシーンも作品の中にあるのですが、最終話まで見た後にまた1話から見返すと、「ああ、鈴鹿さんもこうやって地道に体を鍛えていたのだなぁ」と感慨深い気持ちでいっぱいになります。結局はそうやって日々の積み重ねなんだよな、と自分の生活に置き換え、生活を律するまでの気持ちにさせられました。

■ただ者ではない、前田拳太郎のオーラ
そしてもう一人、身体そのものが役の説得力につながっているのが、新庄玲央役の前田拳太郎さんです。前田さんが演じた新庄はテコンドーの達人ですが、前田さん自身は幼稚園から高校まで長年空手を続け、中学3年生では空手の団体形で全国優勝を経験しているという、空手三段の実力者です。作品の中でも、ただならぬオーラに溢れており、これはもしや、何かしらの達人なのではないかとすぐさまWikipediaを検索してしまったほどです。実際、劇中で見せる立ち姿や身のこなしには、言葉では説明できない「強者」の説得力があります。まだ何もしていないのに強そう。立っているだけなのに、絶対にこの人には喧嘩を売りたくない。そんな空気をまとっているのです。画面越しでもビシビシと伝わってくるその圧に、思わず痺れてしまいました。

■漫画の世界に、リアルな息吹を吹き込む
さらに、見上愛さん演じる八潮秋、菅生新樹さん演じるカネゴン、生見愛瑠さん演じる朝宮夏帆など、原作から飛び出してきたようなキャラクターたちがとても生き生きとしていて、かつリアリティに溢れており、どんどんストーリーにのめり込んでしまいます。
もちろん、原作と実写版では展開やキャラクターの描き方に違いもあります。原作ファンなら「ここはこう変えたんだ」と比較しながら見るのも面白いですし、原作を知らない人なら、何も知らない状態で志村たちの成長を追いかける楽しさがあります。
「喧嘩」という物騒な題材を扱いながら、その根底にあるのは、弱い自分を変えたい、誰かに認められたい、自分の人生を少しでも良くしたいという、意外なほど身近な感情です。だからこそ、ただの喧嘩アクションでは終わりません。動画配信という現代的な要素も加わり、笑える場面があったかと思えば、思わず胸が熱くなる瞬間もある。そんな感覚を味わえるのが、「喧嘩独学」の魅力なのではないでしょうか。
<プロフィール>
大貫さん(夫婦のじかん)
NSC東京11期生。タカダ・コーポレーションを経て
2016年に旦那の山西 章博と「夫婦のじかん」というお笑いコンビを結成。
普段は芸人として活動しているが、漫画家やイラストレーターとしても活躍中。
コミックエッセイ「母ハハハ!」発売中。第35回フジテレビヤングシナリオ大賞最終。
NHK脚本開発チーム「WDRプロジェクト」2期メンバー。
よしもと
ドラマ部
(吉本興業所属のお笑い芸人)
吉本興業所属のテレビドラマ好きを公言しているお笑い芸人からなる。 現在は福田恵悟(LLR)・村上健志(フルーツポンチ)・大貫さん(夫婦のじかん)・りょう(小虎)らが所属。
よしもと
ドラマ部
(吉本興業所属のお笑い芸人)
吉本興業所属のテレビドラマ好きを公言しているお笑い芸人からなる。 現在は福田恵悟(LLR)・村上健志(フルーツポンチ)・大貫さん(夫婦のじかん)・りょう(小虎)らが所属。




