STARGLOW・TAIKIからレコ大新人賞、プロレス王者まで――『博士ちゃん』が育む規格外のスターたち 「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」【戸部田誠】

STARGLOW・TAIKIからレコ大新人賞、プロレス王者まで――『博士ちゃん』が育む規格外のスターたち 「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」【戸部田誠】

オーディション番組「THE FIRST」からBE:FIRST、「No No Girls」(ともにYouTube/Hulu)からHANAを生んだ、SKY-HI率いるBMSGが、2025年に配信した新たなオーディション番組が「THE LAST PIECE」(YouTubeなど)だ。「夢を見づらい10代」をメインターゲットに掲げ、2025年1月31日時点で19歳以下の男性を応募資格としていた。そして最終審査を勝ち抜いた5人で結成されたボーイズグループが「STARGLOW(スターグロウ)」だ。

その中の1人にTAIKIがいる。彼は「THE FIRST」にも参加し、合宿審査で脱落した経歴を持っていたが、今回見事にリベンジを果たし、晴れてデビューを遂げた。彼の武器はラップ。何しろ、彼は「ラップ大好き博士ちゃん」として「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」(テレビ朝日)にも登場しているのだ。

TAIKIこと溝口太基が番組に出演したのは、約5年前の13歳の頃。4歳でヒップホップにどハマリし、日夜父親とラップバトルする姿が紹介された。ドライブ中にも曲がかかれば即ラップバトルが始まるほどだった。フリースタイルバトルは「高校生RAP選手権」出場を機に区切りをつけたというが、そのラップ愛は「当時100%なら今は2億%」と増幅し、デビューに至ったのだ。

「博士ちゃん」は、まさにそんな"未来のスター"がたくさん登場する番組だ。番組に何度も登場している「美空ひばり大好き博士ちゃん」の梅谷心愛(こころ)は、2023年に歌手としてメジャーデビューを果たし、翌年にはレコード大賞新人賞を受賞する快挙を達成した。

「プロレス大好き博士ちゃん」の島添夢虹(ゆに)は、「間違いなくプロレスラーにはなるだろうね」というサンドウィッチマン・伊達の"予言"どおり、現役高校生ながら、「夢虹」のリングネームでプロレス団体「DDT」でデビュー。「ベルト獲るよ」と富澤が語っていたように、早くも「KO-D6人タッグ」のチャンピオンベルトを巻いた。夢は高校生のうちに団体の最高峰のベルト「KO-D無差別級」の王者になることだという。それが"絵空事"ではないことは、彼の経歴や「博士ちゃん」が証明している。

「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」は、2019年2月に特番として始まり、同年10月からレギュラー化された。タイトル通り、MCはサンドウィッチマンと芦田愛菜。

数多くの番組でメインを張っているサンドウィッチマンはともかく、当時まだ中学2年生で14歳の芦田愛菜の抜擢は驚きだった。演出を務める米田裕一によると、サンドウィッチマンの起用は、彼らのライブを見に行った際、観客席にいた小学生をステージに上げてやりとりしていたのが即興漫才のように面白く、子供との相性の良さを感じたからだという。その上で、子供とサンドの「橋渡し」になる人が必要だと考え、浮かんだのが芦田愛菜だ。

「アナウンサーがそれをやると、急にかたい感じの番組にもなっちゃうし...。そう考えていくと、子供の気持ちも分かってあげられて、進行もできて、大人顔負けの知識もあってっていう"見た目は子供、頭脳は大人"みたいな『コナン』的な芦田愛菜さんしかいない!」(「マイナビニュース」2020年6月20日)と。

このMCのバランスが見事に当たった。番組には多種多様な「博士ちゃん」がやってくる。

部屋中にねぷた絵が飾られている「ねぷた博士」、300個以上の郷土玩具をコレクションする子、全国各地の信号の写真を撮りに行く兄弟、天国より地獄に行きたいと豪語する「地獄博士」、ベビーカーの機能性の虜になった少女...などなど、およそ子供とは思えないようなニッチでマニアックな嗜好と知識を持っている「博士ちゃん」が少なくない。

そうした子は、とかく「変人」扱いされがちだ。だから、おそらく学校などでは、自分の好きなことを話すのを封印してしまっている子もいるだろう。けれど、サンドウィッチマンは決して彼らを子供扱いせずにフラットに接し、常に肯定する。芦田愛菜はその豊富な知識の引き出しで、それらに的確にリアクションしつつ、さらに深い部分を聞き出していく。すると、「博士ちゃん」たちは、存分にためたパワーを解き放ち、自分の「好き」を熱っぽく語る。その過剰ともいえる熱量が、可笑しみと同時に感動を呼ぶ。子供離れした知識と子供らしからぬ大人びた振る舞い、そして子供らしいちょっと抜けた部分もある可愛らしさを同時に味わわせてくれる。

初登場したときは中1だったが、高校生になって「世界ふしぎ発見!」(TBS)で「ミステリーハンター」も務めた「世界遺産検定マイスター」の山本・リシャール登眞は、その熱意が認められ、軍艦島で普段は非公開エリアに指定されている場所に立ち入ることを許可された(彼に限らず『博士ちゃん』では、その熱で障壁を超え実現した例が少なくない)。そのパートナーに立候補したのは同じく軍艦島好きの伊集院光。道中、2人はすぐに意気投合。高度な知識と感受性あふれる会話を交わしていた。
「興味のあることって年代差を超えるなって。正直、(自分は)友達すごい少ない。興味があることがなかなか合わない。でも、彼とは友達みたいに喋れた。楽しかった」
そう語る伊集院が印象的だった。
「好き」は年代も超えるし、障壁も超え、夢を叶える原動力になる。「好き」は"未来"を裏切らない。
「博士ちゃん」は「好き」のスゴさを体現した、希望に満ちた番組なのだ。

戸部田誠(てれびのスキマ)

戸部田誠(てれびのスキマ) (ライター)

テレビやお笑いに関する著書を多数執筆しているライターの戸部田誠(てれびのスキマ)が、ローカル番組を中心に、バラエティ番組の魅力を解説する。

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