元宝塚男役スター・凪七瑠海が退団後の変化を語る「不思議な感覚ですね」

元宝塚男役スター・凪七瑠海が退団後の変化を語る「不思議な感覚ですね」

時代劇専門チャンネルの人気企画「華麗なる宝塚歌劇の世界」のシーズン7が10月より放送中。同番組は、案内役の中井美穂が毎回、ゲストのタカラジェンヌOGと共に「日本物」の宝塚歌劇作品を中心に紹介するほか、トークコーナーで公演当時の思い出や近況について掘り下げていく。

11月17日(月)よる9時放送回では、今年1月に宝塚歌劇団を退団した凪七瑠海が登場。凪七が主演を務めた『蘭陵王―美しすぎる武将―』(2018年、花組・KAAT神奈川芸術劇場・千秋楽)について、当時の思い出や退団後の日々についてトークを展開する。

今回、収録後の凪七にインタビューを行い、収録の感想や公演中のエピソード、今後の活動の展望などを語ってもらった。

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――収録はいかがでしたか?

「久しぶりに作品を振り返らせていただきました。私は、作品が終わるごとにすぐに忘れていってしまうのですが、この作品は意外と覚えていましたね(笑)。それだけ深い思い入れとたくさんの思い出があったんだなと思いますし、出演者みんな仲が良くて、しょっちゅう集まって何度も同じ話で盛り上がっていたりするので、それを(中井)美穂さんと振り返ることができて、あっという間の楽しい時間でした。

また、作品のことだけにとどまらず、いろんなジャンルのお話もさせていただきました。退団してから初めてのテレビ出演だったので、緊張するかなと思っていたのですが、長いお付き合いの美穂さんが本当にいろんな話を引き出してくださるので、胸を借りながらトークさせていただきました」

――収録で印象的だったことは?

「涙をポロリしてしまったのは、自分でもびっくりしました。2023年の花組公演『激情』-ホセとカルメン-/『GRAND MIRAGE!』の時に、『蘭陵王』の出演メンバーが何人かいて、『(出演者で集まる)"蘭陵王会"を全国ツアー中に開催したんです。そこで『今日来られなかった人たちもいるから、定期的に開催しよう。1年に1回だとすぐに来てしまうから、5年に1回にしようか』という話をしていて、『その時に誰が現役生でいるか分からないね。みんな、長くいてよ』と言ったら、南音あきらくんが『私はまだまだ続けます』と言ってくれて。その気持ちと覚悟がうれしくて泣いてしまったんです。その時のエピソードをお話したら、当時の思いが込み上げてきて涙がこぼれてしまいました」

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――『蘭陵王』は専科になって初めて主演を務めた公演だと思いますが、どのような心境でしたか?

「作品自体、随分前から知っていて『これは宝塚歌劇でやったらぴったりなのではないか』と思っていたので、それをやらせていただけるということがすごくうれしかったです。また、いろいろな覚悟を持って専科に行ったばかりのタイミングだったので、『まさか、また主演公演をさせていただけるとは』というのもうれしかったですね」

――主人公の蘭陵王を演じる上で心がけたことは?

「外見的には"美しすぎる武将"ということで、中性的に見えるようにしました。一方、内面的には、幼少期のトラウマを意識しながら演じました。それが後々の説得力にもつながってきますので。強くあり、でも感情がなくなってしまっているから人間的な弱さもあり...。自分も過去に『心が動かない。お芝居ができない、どうしよう』と悩み、そこから立ち直る手段を見つけていった経験があるので、役に重ねながら演じました」

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――苦労したことは?

「舞台稽古の時に、座るようスタンバイを指示された場所が、大きな蝶々の絵の真ん中だったんです。私、この世で苦手なものが蝶々と血なんですよ(泣)。しかも、けっこうリアルに描かれていて、『少し前に座ってもいいですか?』とお願いしたら、『ライティング的にそこがベストなんですけど、(演出の)木村(信司)先生に内緒でいっちゃいましょうか』となって。『すみません!』と半歩前に座っていたら、木村先生がいらっしゃって『もうちょっと後ろがいいな』って...。できるだけ下を見ないようにして座りました(笑)。

あとは、ヌンチャクですね。ヌンチャクを使って戦う場面があるので、稽古が始まる前に1カ月半ほど練習しました。その他に、歌いながら戦わないといけない場面もあり、周りの子たちにも協力してもらいました。声を出したい時にタイミングがずれると歌のバランスが崩れてしまいますし、息を吸いたいタイミングもあるので、私が全部譜面に記してみんなに伝えて、『1、2、3、4の4で来てほしい』のような感じで、全てのタイミングを決めてやっていました」

――退団されて約1年となりますが、変化などは感じてらっしゃいますか?

「変わったような、変わっていないような、不思議な感覚ですね。退団してから劇団に顔を出した時に、若央りさ先生(元宝塚歌劇団月組男役スター/現振付家)にお会いしたら、『私もそうよ。この何十年間、辞めたのか辞めていないのか、分からない感覚だから』とおっしゃっていて、『そういうものですか』と」

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――退団してから見た宝塚歌劇はいかがですか?

「『やっぱり素敵!いい!!』というファン心理と、『やっぱり男役をもう1回やりたい』という半々の気持ちでしたね」

――退団後はお休みされることなく、すぐにミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』(4~5月)に出演されていましたが、「一旦、休みたい」という思いはなかったのですか?

「それは大いにありました!(笑) 私は宝塚歌劇を愛していて、『これで十分。やり切った!』とすごく幸せな気持ちになれたから退団を決めたので、『退団してから、舞台を続けるのか、別のお仕事をするのか、ゆっくり考えよう』と思っていたんです。そんな折、退団公演中にお話をいただいて、大きなお役だけどスケジュール的にトレーニングも間に合うか分からなかったこともあり、『こんな状態で参加するのは失礼なんじゃないか』『せっかくいただいたお話なんだからお受けしたい』とすごく悩んだのですが、『神様がもっと頑張りなさい』と言ってくださっているのかなと覚悟を決めてお受けしたんです。それからありがたいことにお話をいただくことが続いていて今に至るので、機会があればゆっくりリフレッシュしたいという思いはあります(笑)」

――もし長期の休暇があったらどのように過ごしたいですか?

「旅行もしたいですし、温泉も行きたいですし、いろんな勉強もしたいですし、体がなまってきたので運動もしたいです。でも、舞台のお話があったら、それは出演したいですよね。やっぱりお芝居が好きなので。

一方で、仕事に没頭しすぎてしまうと、自分がダメになって役も演じられなくなってしまうので、長期休暇は取れなくても、しっかり自分をニュートラルに戻す時間を大事にするようにしています。ちょっと自然に触れたり、家でのんびりしたり、会いたい人に会ったり。自分の生活を豊かにして、いいバランスを保つように心掛けています」

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――今後やってみたいことは?

「いろんなことに興味があり過ぎて、やりたいことがたくさんあるのですが、お仕事としては歌の勉強をしてより強化していきたいなと思っています。また、ファスティングをもうちょっと深掘りしていきたいですね。機会があるのであれば、映像作品にも挑戦したいです!」

――最後に視聴者の方々、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

「『蘭陵王』は冒頭をご覧になるとちょっとびっくりされるかもしれませんが、とてもメッセージ性のある作品です。色彩やお衣装、出演者一人一人の活躍を楽しんでいただけますし、音楽も全曲すばらしくて、壮大で緩急があり、琴線に触れる部分も多いです。フィナーレも含めて五感を全て使って楽しんでいただけたら!番組では作品の見どころなどもたっぷりお話させていただきましたので、そちらもお楽しみください」

文/原田健 撮影/皆藤健治

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