彩風咲奈が退団後の心境の変化を語る「宝塚ロスみたいなことになりまして......」

彩風咲奈が退団後の心境の変化を語る「宝塚ロスみたいなことになりまして......」

時代劇専門チャンネルの人気企画「華麗なる宝塚歌劇の世界」のシーズン7が10月20日(月)よりスタートする。同番組は中井美穂が案内役を務め、毎回ゲストのタカラジェンヌOGと共に「日本物」の宝塚歌劇作品を鑑賞するほか、トークコーナーで公演当時の思い出や近況について掘り下げていく。

シーズン7の記念すべき初回ゲストは、2024年10月に宝塚歌劇団を卒業した彩風咲奈。彩風と共に『夢介千両みやげ』(2022年、雪組・宝塚大劇場)公演を鑑賞し、トークで当時の思い出や卒業後の暮らしなどに迫る。

今回、収録後の彩風にインタビューを行い、夢介を演じる上でのこだわりや卒業してからの1年について、今後の活動の展望などを語ってもらった。

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――収録はいかがでしたか?

「本当に楽しく収録させていただきました。中井さんには、私が新人公演に出ていた時代から番組でお世話になっていたので、収録だということを忘れて『楽しく中井さんとお話させていただいた』という感じです(笑)」

――出演していた演目を見た感想は?

「公演中のことよりも、『ここ、すごくお稽古したな』と、お稽古のことのほうが強く思い出されました。自分より先に退団した仲間も出ていたので、『この時代、楽しかったな』と思い出しながら拝見しました」

――宝塚歌劇の「トップスター」らしくないキャラクターの夢介ですが、演じた時はどのような思いだったのでしょうか?

「最初に原作を読ませていただいた時は『どうしよう......』と思いました。でも、カッコいいだけじゃなく、その中にある人柄などに魅力を感じますので、そういった役に挑戦させていただけてすごくうれしかったです。なによりも『お客様が楽しんでいただけるような人物に仕上げたいな』と思って演じました。

『日本物の雪組』と言われているので、お稽古場から『上級生の方から教えていただいたことを下級生にも教えていくんだ』という思いもありましたし、日本物をやること自体、背筋が伸びるような思いがありました。ただ、夢介は武士ではなかったので、『カッコつけなくていいんだ』という大きな気持ちで臨めたように思います」

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――演じる上で心掛けていたことは?

「『なるべく周りに委ねて、自分では率いていかない。発信していかない』ということですね。『急に事件があって、そこに飛び込んでしまったら、いろんなことに巻き込まれた』となるように心掛けていました。

プロローグの場面は、(脚本・演出の)石田(昌也)先生からも『二枚目の、すっごくカッコ良い感じで口上してほしい』と言われたので、一番頭の口上だけは、『その後のストーリーが分からないくらい宝塚の男役的にカッコつけて、主題歌から砕けるところにもっていく』という切り替わりも意識していました」

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――日本物を演じる難しさと楽しさを教えてください。

「海外が舞台のお芝居だとボディーランゲージで伝えられるのですが、日本物ではそういうわけにはいかないので、心にあるものを、せりふや表情で表さなければいけません。でも、出し過ぎてしまっても『日本人の奥ゆかしさ』がなくなってしまいますので、そのあんばいはすごく難しいなと思います。

一方で、楽しいところは、海外の作品だと生まれ持った感覚の違い故に、ひも解くのにすごく難しいことがあって、『これはどういう気持ちなんだろう?』と思うことがあるのですが、日本物だとそれがあまりないんです。身の引き方や切ない思いなど、日本人だからこそ『分かるなぁ』という気持ちがあって、そういうところはすごく楽しいです」

――『夢介千両みやげ』は主人公の夢介が千両を使って道楽修行をする物語ですが、もし彩風さんが千両(現在の価値だと1億~2億円)で道楽修行するなら何をしたいですか?

「やっぱり海外に行きたいですね。海外のいろんな見たことのないものを見たいです。行きたいところはたくさんあるのですが、ずーっと行きたいと思っているのはトルコ! 何か惹かれるので行きたいんですよね。ひとり旅もしたことがないので、いつかしてみたいです」

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――退団して1年が経ちましたが、この1年で心境の変化は?

「本当に宝塚が大好きだったので、卒業したての頃は一度『宝塚ロス』みたいなことになりまして(苦笑)。私の中の大切なものすべてがなくなってしまったというか、『明日からあの劇団に行けないんだ...』『みんなと一緒にお稽古できないんだ...』という気持ちになったのですが、(5月に大阪と東京で開催した)『no man's land』というコンサートを経て、新しい仲間や、ファンの皆さま、新しく観に来てくださった方など、いろんな方と出会って、『大事にしていた私の宝塚での日々は、別になくなったわけじゃないんだ。自分の中にずっとあるし、みんなとつながっているという思いはずっと変わらないんだな』と気づきました。

だから今は、何にでもチャレンジできる自由さがあると思えるようになりました。宝塚歌劇でのお芝居は、男役という一本の道を作った上で、いろいろと違うこともするという感じなのですが、今はそういう制限もなく自由なので、『可能性がすごく広がっている』と思えて、わくわくしています」

――宝塚歌劇時代と現在で「癒やしの時間」は変わりましたか?

「宝塚時代は、外に遊びに行くことが癒やしの時間でした。お稽古場にいることの方が長くて宝塚の街から出ることが少ないので、休みの日はできるだけ外出しておいしい物を食べに行ったりしていました。

でも今は、ペットとの時間が一番の癒やしの時間ですね。フェレットと犬2匹を飼っていて、フェレットはもう6歳で高齢なのですが、こちらに引っ越してきてからすごく元気で!(笑) 宝塚に住んでいる頃は、ゲージから出してもちょっとだけ歩くみたいな感じだったんです。でも、最近は『出せ、出せ!』ってゲージやハンモックをガリガリして、おねだりしてくるんです。ワンちゃん用のクッションがお気に入りみたいで、ワンちゃんのベッドでワンちゃんと一緒に寝ている姿を眺めている時間が本当に癒やしですね」

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――今後の活動の展望は?

「演じたいという思いが強くなってきていて、いろいろなことにチャレンジしてみたいです。でも、私はまだ女性の役を演じたことがないので、『男役』脳から女性の役のバージョンにチェンジできていないんですよねぇ。宝塚以外の舞台を観に行っても、どうしても男性キャストさんばかりを見てしまって......(苦笑)。

個性的な役もやってみたいなと思います。舞台化されていませんが、『101匹わんちゃん』のクルエラ・ド・ヴィルみたいなカッコいい悪役とか! カッコいい魅力的な女性役もやってみたいですね。また、ストレートプレイはやったことがないので、『お芝居だけというのは、どんなふうになるんだろう』とすごく興味があります。

ファッションもすごく好きなので、雑誌の誌面のお仕事もやってみたいです。いろんなお洋服を着て、いろんなメイクをしていただいてカメラの前に立つというのも、男役のしばりがなくなったからこそできることでもあるので。

映像作品もやったことがないので興味はあるのですが、ちょっとまだ私にはハードルが高い気がするんですよね」

――最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

「卒業して1年経ちましたが、彩風は変わらず『変わっています』(笑)。今はまだ、皆さまにお伝えしていないこともありますけど、楽しくいろんなことを見て、学んで、感じて、いろんな準備をして、これからに活かせたらいいなと思っております。相変わらず宝塚も大好きですので、皆さまと共に宝塚ファンの一員として『推し活』も楽しみたいなと思います!」

取材・文/原田健 撮影/中川容邦 ヘアメイク/栗原里美

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