はいだしょうこが宝塚歌劇団時代を回顧「はいだしょうこという人間の基盤を作ってくれた」
エンタメ 見放題インタビュー
2025.08.20
「J:COM STREAM」では、「宝塚歌劇」作品が見放題(月額料金内で視聴可能)で配信中。『ベルサイユのばら2001-オスカルとアンドレ編-』('01年星組・東京)や『今夜、ロマンス劇場で』('22年・月組・東京・千秋楽)など計8作品が期間限定(※作品によって期間は異なる)で、いつでも何度でも視聴することができる。
今回、『ベルサイユのばら2001』-オスカルとアンドレ編-('01年星組・東京)で、入団3年目でエトワールに抜擢されたはいだしょうこにインタビューを行い、当時の思い出や宝塚歌劇団などについて語ってもらった。
――今でも「宝塚歌劇」はご覧になりますか?
「生の舞台を見に行く機会はなかなかないのですが、『宝塚歌劇専門チャンネル タカラヅカ・スカイ・ステージ』に加入しているので、放送を見させていただいています。毎日というわけではないんですけど(笑)。でも、両親は大好きで、家に帰るといつも『タカラヅカ・スカイ・ステージ』がついています」
――映像ならではの魅力は?
「観劇とは違ってアップのカットがあるので、表情など細かいところまで見られるところですね。劇場だと、どうしても席によってステージまでの距離だったり角度があるので見られない部分が出てくるのですが、映像だと表情はもちろん視線の動きまでしっかり映し出されるので、映像の方がよりリアルに近く感じられると思います」
――見放題配信についてはどう思われますか?
「すごく喜ばしいことですよね。なかなか劇場に足を運ぶことができない方もいらっしゃいますし。しかも、見放題というところが、応援してくださっている方にとってはすごくうれしいことだと思います。また、宝塚歌劇に触れたことのない方でも気軽に見られるっていうのが大きいですよね。宝塚歌劇って、"すごく熱を持って応援してくださる方"と"知っているけど全然見たことがないっていう方"に分かれるので、『ちょっと見てみようか』とハードルを低くして気軽に見ていただけることで、好きになるきっかけにもなるでしょうから。1作品見てハマったら、またすぐに違う作品を見られるというのも魅力だと思います。
加えて、1つの作品でも繰り返し見ることができるので、主役の方にフォーカスして見るだけでなく、例えば後ろの群舞の人たちに注目して見るなど、違った楽しみ方が味わえるので、同じ作品を見方を変えて何度も楽しむこともできますよね」
――ご出演された『ベルサイユのばら2001』-オスカルとアンドレ編-もラインアップに入っております。
「すごくうれしいです!エトワールとして出演させていただいたのですが、この時のことはとってもよく覚えています。下級生でエトワールをさせていただいたので、ラインダンスにも、その前の群舞にも出ているんです。だから、ギリギリまで歌って踊って、早替わりをして、一番に舞台には見えていない影の階段を上っていって、フィナーレの最後の歌に合わせて、一番に出て行くという感じだったので、毎回早替わりに間に合うかというのでドキドキでした。
あと、『初めて見に来る方も、1回しか見に来ない方もいるのだから、公演期間中は"この公演ではできなかった"、"この公演は100点だったけど、こっちは20点"みたいなことがあったら駄目だ』『エトワールという大役をいただいて、失敗したら全てに迷惑をかけてしまう』という思いが強くて、『とにかくちゃんとやらなきゃいけない』という責任感だけで公演期間を過ごしていました」
――公演で印象に残っていることは?
「『ベルサイユのばら』って、エトワールが『青きドナウの岸辺』という歌を歌うのですが、私が譜面を渡された時に伴奏がなかったので、『なんだろう?』って思っていたら『アカペラです』って言われて。1分10秒くらいアカペラで歌わないといけなかったんです。それがものすごく怖かったです。大劇場に自分の声しか響き渡っていないという状況や、音楽に助けられることもできずに自分の声だけでお客様と向き合わなければならないということが、本当に怖かったのを覚えています。今でも、公演で流れる楽曲の前奏を聴くと、全身がぞわぞわぞわ~ってするんですよ(笑)。でも、最後の音だけオーケストラの音が鳴って終わるんですけど、その後のお客さんの会場が割れんばかりの万雷の拍手とその時の景色は忘れられないですね」
――この機会に同公演をご覧になる方に向けて、作品の魅力を教えて下さい。
「私が子供の頃から観ていた時も、宝塚といえば『ベルサイユのばら』で本当に代表的な作品なのですが、これだけ長く愛されているのは、原作である少女漫画の世界観が崩れることなく舞台化されていて、すんなり没入できるからだと思うんです。男役の方の漫画からそのまま出てきたかのような美しさと凛々しさ、中世ヨーロッパという物語にぴったりのシチュエーション、登場人物たちが織り成す恋模様など、本当に宝塚歌劇との親和性が強くて、宝塚ならではのステージになっている作品。没入感が高いからこそ、とても心が動かされると思うので、ぜひご覧いただいて一緒に悲しんだり、キュンキュンしたり、ドキドキしていただけたらと思います」
――ご自身のエトワールの見どころは?
「先程お話したアカペラが、歌詞がなくて『あ』しか言わずにメロディーを歌っていくのですが、ただの『あ』の音のつながりではなく、『あ』の中にも公演を見ていただいたお客様に向けて『いかがでしたでしょうか?』という思いを込めて最後を締めるような気持ちで歌っていたので、そういった思いを少しでも受け取っていただけたらうれしいです」
――今回のラインアップで、気になる作品は?
「実は私、宝塚の『ロミオとジュリエット』は見たことがないので見てみたいですね。あと、『うたかたの恋』はすごく好きな作品でもありますし、真琴つばささんと檀れいさんがご出演のは見たことないので、ぜひ見たい作品です。好きな作品でも、出演者が違うとまた色が違いますし、ブルーレイやDVDを買うにしても同じ作品って手を伸ばしづらかったりするので、本当にいい機会ですよね。あと、「『王家に捧ぐ歌』ーオペラ「アイーダ」より―」も好きなんですけど、ラインナップのものは私が卒業した後の若い世代の皆さんが出演されている作品なので、こちらも気になります。幅広い年代の作品がピックアップされているのもありがたいですね」
――宝塚時代というのはご自身にとってどんな期間でしたか?
「はいだしょうこという人間の、芸事の基盤を作っていただいた期間です。16歳という、心も身体も成長する時期に宝塚で学べたからこそ、社会に出て戸惑うようなことがなかったんだと思います。あの時の経験が全部役立っていると思っていて、例えば大人になってからだったとしたら、あの頃ほど素直に聞けていないと思いますし、吸収力も違っていたと思います。退団してからもいろいろと大変なこともありましたけれど、あの時に諦めずにやり切る力を学べたからこそ、それを乗り越えて、今のはいだしょうこがあるんだと思っています」
――もし生まれ変わっても、またタカラジェンヌになりますか?
「もしなるとしたら、今度は男役をやってみたいです。子供の頃から男役に憧れて入団したので。生まれ変わった時には身長が高いことを祈ります(笑)」
――最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。
「宝塚ファンにとっては、色々な作品が見られるというのがすごく魅力的だと思います。推しを中心になってみるのはもちろん、この見放題を機に推し以外の作品が見られて、新たに素敵な発見や出会いがあるかもしれないです!そして、まだ宝塚歌劇をご覧になられたことがない方も、ふっと見ていただいて、楽しんでいただいて、宝塚の世界を堪能していただけたら嬉しいですね。少し前までは見放題で見られるなんてなかったことなので、どんどん見ていただいて、宝塚を盛り上げていただけたら、私も嬉しいです!」
文/原田健 撮影/中川容邦