「人生が描かれてる!」爆笑問題・太田が楽しそうに深掘りする"名物" 「太田×石井のデララバ」 【戸部田誠】

戸部田誠(てれびのスキマ)

戸部田誠(てれびのスキマ) (ライター)

テレビやお笑いに関する著書を多数執筆しているライターの戸部田誠(てれびのスキマ)が、ローカル番組を中心に、バラエティ番組の魅力を解説する。

連載一覧はこちら

戸部田誠(てれびのスキマ)

戸部田誠(てれびのスキマ) (ライター)

テレビやお笑いに関する著書を多数執筆しているライターの戸部田誠(てれびのスキマ)が、ローカル番組を中心に、バラエティ番組の魅力を解説する。

連載一覧はこちら

「人生が描かれてる!」爆笑問題・太田が楽しそうに深掘りする"名物" 「太田×石井のデララバ」 【戸部田誠】

いまテレビは、見逃し配信が整い、うっかり見忘れてしまった番組や評判が良かった番組を後から見ることができることが多くなりました。

配信の充実は思わぬ"副産物"をもたらしました。それは放送地域外の人も配信によって番組を見ることができるようになったということです。

僕が子供の頃、テレビ東京系列が映らない地域に住んでいたため、何度となく悔しい思いをしたものです。それがいまや地方に住んでいても、ほとんどタイムラグなく見られるようになりました。その逆に東京に住んでいながら、地方ローカル局の番組も簡単に見ることもできます。

見られる範囲が増えれば、おのずと制作者も力が入る。だから最近、地方ローカル番組が元気です。というわけで、毎月おすすめのローカル番組を紹介していきたいと思います。

250321delalover02.jpg

爆笑問題・太田光が楽しそうにしていると、なんだか幸せな気分になるのは僕だけだろうか。もちろん、太田がもっともはしゃぐのは、芸人仲間と共演しているときだ。そのときは、こちらが心配になるくらいハイテンション。全身で楽しさを表現している。

その一方で、意外にも(?)素人と絡むときも楽しんでいるように見える。それが堪能できるのが東海地方のローカル番組「太田×石井のデララバ」(CBC)だ。CBC出身のフリーアナウンサー・石井亮次と太田が組み、2023年の特番を経て、同年10月からレギュラー化された。

ちなみに爆笑問題とCBCの関係は古い。何しろデビュー後、初のレギュラー番組がCBCの深夜の帯番組「DAY BREAK」だったのだ。その番組は、月曜にダウンタウン、火曜に渡辺正行、水曜にウッチャンナンチャン、木曜に今田耕司・東野幸治と、勢いのあった東西の人気芸人を起用。爆笑問題は初め水曜のアシスタント的な役割を担い、その後、曜日を任されたという。このときスタッフとして一緒に番組をつくった服部恒明は「デララバ」でも番組アドバイザーとして入っており、太田にとっては30年以上ぶりのCBCレギュラーだ。

「デララバ」は「東海地方のド定番 なぜそこまで愛される?」という副題がついているように、矢場とんの味噌かつや、世界の山ちゃんの手羽先唐揚げ、コメダ珈琲店のシロノワールなどの東海地方発祥の名店の定番メニューを深掘りするというもの。

この番組の大きな特徴といえば、長時間の密着。初回2時間SPの矢場とんには270時間、2回目のCoCo壱番屋には113時間、ブロンコビリーには124時間といった具合。ドラゴンズファンの聖地と呼ばれる中華店ピカイチに至っては8ヶ月もの密着を敢行し、店員はもちろんお客さんにも丁寧に話を聞き深掘りしている。

だから普段は公開していないようなところも見せてくれたりもする。何しろ、衛生上の理由からスタッフが入れないと断られても、粘って社員の人にカメラを渡し撮ってきてもらうほどだ。

東海地方のソウルフードとも言えるスガキヤのラーメン(かくいう僕も静岡出身だから、よく食べていた)だが、実はスガキヤはもともと「甘党の店」でラーメンはメニューになかったという驚きの情報がでてきたりもする。ラーメンを出すようになった理由も、そうなんだ!と膝を打つものだ。

そして、ユニークなのは、「デラLOVER」=「デララバさん」と呼ばれるお店を長く深く愛する常連客と一緒に太田と石井が取材VTRを見るということだ。ときに驚きながら、ときに笑いながら、デララバさんたちと絡む太田が楽しそう。絶妙な塩梅でイジっていく上手さも光る。

250321delalover03.jpg

「深掘りの仕方が全然違うんだよ!」

太田は自身のラジオ番組『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ、2023年9月26日)で、この番組について熱っぽく語っていた。「人間の人生が描かれているんだよ。(略)これ、深いんだよ、言ってみればドキュメントなんだよ!」

それを象徴するのが、矢場とんの「デララバ」であるマーボーさん。高校生の時から16年にわたり通い続ける32歳の常連。差し歯が割れて前歯が欠けている、太田が大好物そうなキャラだ。

「いつ割れちゃったの?」
「去年」
「去年!? 治せよ!」
太田が楽しそうにツッコむ。

味噌かつで有名な矢場とんもまた、最初は串カツの店だったという。ナゴヤ球場の外野席の真ん中に出店し、串カツを見ながら野球観戦するというのが定番だった。

そんなこともあったからだろう、矢場とんは「アマチュア野球を応援したい」という思いから、野球チーム「矢場とんブースターズ」を持っている。プロにはなれなかったが野球を続けたいという人たちを社員として受け入れ、店で働く傍ら、野球をしている。

マーボーさんは、矢場とん好きが高じて、矢場とんブースターズの私設応援団を結成したのだ。楽器も演奏したことがなかったが、応援団を立ち上げた23歳の時から猛特訓して演奏できるようになった。ブースターズはこの年、全国大会へ進出。新潟で開催されたこの大会にマーボーさんも強行軍で駆けつけると、それまで全国大会では一度も勝利したことがなかったチームが見事決勝進出を果たしたのだ。

「なんのビデオ見てるかわからない。なんだろう、これは...。なんだかわからないけど感動してる。よくわからない感情だね」

太田はそう感想を語る。「よくわからない感情」を情報番組で得られることはめったにない。けれど「デララバ」では、そんな場面が何度となくあるのだ。

「矢場とんに人生は大きく変えられてるんで。変えてくれてありがとうございます。人生が豊かになったっていうのは間違いないです」「幸せです」と力強く語るマーボーさんに太田は言った。

「そりゃ、歯なんか治してる暇ないよ(笑)」

250321delalover04.jpg

エンタメ インタビュー

もっとみる