「朝エクスプレス」の直居敦&改野由佳が語るNISAにまつわる今後の課題
エンタメ インタビュー
2025.02.28
マーケット・経済専門チャンネル日経CNBCで放送中の「朝エクスプレス」では、日々、注目銘柄や業種の動きを追いながら、国内外の有益な投資情報を厳選して紹介している。また、日替わりゲストがそれぞれの見地から注目ポイントを解説するほか、マーケットの展望や今後の予測を語り、視聴者のかゆい所に手が届く情報を分かりやすく届けている。
今回、2月13日の"NISAの日"にキャスターを務める直居敦と改野由佳にインタビューを敢行し、番組に臨むにあたって大事にしていることや新NISAについて、さらには自身の直したいところなどを語ってもらった。
――番組に出演するにあたって大事にしていること、心がけていることは?
改野「まず、早起きすることです。起きることで仕事の半分が終わるくらい(笑)。それくらい重要ですね。大体、4時半くらいに起きるんですけど、すでに開いているニューヨーク市場の情報をキャッチしないといけないので、しっかり起きて頭をクリアにするというのが結構大事です」
直居「本当にそうですよね。私も4時か4時半には起きています」
――オンエア前の情報収集というのはどういったことをやられているのですか?
改野「私の場合は、毎日同じ指標のデータを見るようにしていて、ニューヨーク市場であれば値動きや上昇下落の背景、前の日の東京市場の動向、ヨーロッパ、中国、アジアの動きなど、毎日同じ時間の同じデータを見ることで、日々の市場の変化を感じられるようにしています。そうすることでその変化に対してコメントがしやすくなると思うので、そのフレーム作りのためという意味もあります」
直居「私もそうですね。おそらく改野さんとは見るものが違うと思いますが、毎日同じ時間に同じものを見ています。マーケット情報なんてありとあらゆるものがあって、見だしたらキリがないですから、『自分の場合はこれを見よう』と定点観測で、金利と経済ニュースと統計を朝の8時15分に間に合うギリギリまで見て、気付いたことや気になったことを手帳に書き込むようにしています。おそらく改野さんもそうですよね?」
改野「私の場合は、データをプリントアウトしたものにメモ書きを加えていくというスタイルですね。オンエア中にも値動きを見ながら加筆していって、それを見ながら話すという感じです。だから、お互いが何を見て、どんなことをメモしているか知らないんですよ」
直居「僕は手書きじゃないと頭に入らないので、(ほぼ数字の)情報とその変化で気付いたことを書き込んでいって、本番でも困ったらこれを見るという感じで活用しています」
――事前に打ち合わせなどはされないのですか?
改野「やるのはやるんですけど、3分くらいですね。情報に関しては知っていて当たり前という前提なので、改めて確認とかはしないです」
直居「基本的にマーケットと共に始まって、マーケットと共に進むので、情報は生ものですから台本を用意していられないというのもあるんです。だから、準備だけはしておいて、後は出たところ勝負という感じで、反射神経の世界なんですよね」
改野「確かに、『朝エクスプレス』に関しては瞬発力が大事ですよね」
――これまで番組に携わってきた中で、印象深い出来事は?
改野「昨年8月の日経平均株価の史上最大幅の急落と急騰ですね。放送中は上げ幅、下げ幅の拡大という感じで動いている途中だったんですけど、もう今まで見たことのない値動き幅だったので、質問の仕方も難しいですし、その背景を分析するのも難しくて、本当にアドレナリンが出る感じの日でした」
直居「僕はその時、夏休みでロンドンに行っていて、『みんな大変そうだなぁ。頑張ってー』って思いながら見ていました(笑)」
改野「東証(のシステム)が止まった日も大変でしたよね」
直居「僕らの仕事って、サッカー場を見ながらサッカーの中継をしているようなものなのですが、そのサッカー場がなくなっちゃったみたいな感じで、しゃべることがないというね(笑)」
改野「東証停止なんて初めてのことで、もう意味が分からない...!」
直居「僕らも訳が分からず、『(市場が開くのが)ちょっと遅れているみたいですね』なんて話していたら、結局1日止まっていたんです」
改野「その日は日銀短観が出てくる日だったので、しばらくそれを言って、前の日の決算発表だとか、前の日の株価材料になっている部分をお伝えしたり、"東証が止まったことが過去にあったのか"というようなことを調べたニュースを読んだりしてつないだんです。あとは、この前、直居さんが手元のタンブラーを落として、『ガッシャーン、カラカラカラ~』ってすごい音がして、水がこぼれて...」
直居「金属製のタンブラーでしっかりしているし、ふたも付いているから愛用していたんですけど、本番中に引っ掛かってしまって床に落として『ガッシャーン』と...(苦笑)。明らかに放送に音が入っちゃったと思います。落ちた衝撃でふたも飛んでしまって、床が水びたしになりました。すごく狼狽したのですが、なんとか冷静に話を続けて、CM中にADさんにひらすら謝りました」
――"NISAの日"ということで、新NISA開始から約1年が経ちましたが、その影響を感じることはありますか?
改野「私自身40代で、資産形成を真剣に考える年代に入ってきて、周りも同じくらいの年代の方が多いのもあり、新NISAが始まってからいろいろ聞かれることが増えました。仕組みや証券口座の作り方といった"新NISAって何?"というところから、金額や何をどれくらい買えばいいかというところまで、今まで投資に興味がなかったような方からも聞かれるようになりました」
直居「僕もそういう質問をされることがすごく増えましたし、日本経済新聞社が発表する2024年の日経MJヒット商品番付では、東の横綱『大谷50-50』に並んで、西の横綱として『新NISA』が選ばれて、『金融商品が横綱に!』と本当に驚きました。それくらい昨年からの変化は劇的だったと思います」
――興味がある方や投資経験者の方はすでに始めてらっしゃると思いますが、まだ一歩踏み出せていない方々にひと言お願いします。
直居「よく『NISA、何買ったらいいの?』と聞かれるのですが、本音を言うと『本当に株式投資が必要かどうかをまず考えた方がいい』ということです。NISAの一番良いところは、売却益と配当に税金がかからないということで、その枠が莫大に広がったわけですから、株式投資や投資信託をするならやった方がいいに決まっています。だけど、あくまで投資ですからリスクもあることをご理解していただいた上で始めていただきたいですね。
そして、腹落ちした上で『何を買えばいいか』という質問であれば、『何も分からないのであれば、オルカンインデックスを買っておけばいいと思う』とお伝えします。入口として決して悪くないですから。"コストの安いインデックス投資を積み立てで買う"というのが、教科書的に一番間違いのない買い方で、それが今流行っていますし」
改野「私は『とにかくやってみたら』とお伝えしていて、証券口座を開くところから自分でやってみて、商品も見て、そこに無くなっても後悔しないだけのお金を入れて、その値動きを見てみたらいいんじゃないの、と。そうして、興味が出てくれば続ければいいし、嫌だったら止めればいいし。やってみることで、自分の事になりますし」
直居「確かに、やってみないと何も感じられないかもしれないですからね」
――NISAに関して今後の課題はどんなところにあると思われますか?
直居「新NISAが始まって今2500万口座とすごい勢いで広まったのですが、それは投資に対して意識の高い人が始めただけで、ここからはあまり関心のない方々に広がっていく必要があると思います。もちろん、全く興味のない人に強く勧誘はしませんが、現在の状況に鑑みると個人的には多分やった方がいいと思うので、もっと金融知識が広がって、理解、納得してもらうことが必要になってくると思います。僕らも放送を通じて助力できたらという思いです」
改野「私も金融教育の大切さを痛感しています。私自身30代で日経CNBCに来るまで、お金の話題に触れることにちょっとはばかられる空気があって、株というものに対して見ないようにしていました。でも、ここに来ていろいろ学んでいく中で、これからのインフレになっていく時代に、もしかしたら自分の生活を助けてくれるものかもしれないので、もっと早く知りたかったと思っていますし、子供の頃からお金に対する意識を変えることで価値観も変わってくると思うので、教育という感じではなくても、そういう意識改革につながるようなことが根付くといいなと考えております」
直居「50代、40代、30代、20代と世代が変わるごとに大分感覚が変わっているように感じていますが、いつか『投資家ってスマートだな。カッコいい生き方だな』と思われるようになったらいいなと思っています」
――キャスターのお二人はしっかりした硬いイメージが強いですが、ご自身の中で直したいところは?
改野「私は毎日、本番直前にアイラインを引いているので、もっと余裕を持てるようになりたいですね。メイク室で引いてくればいいのですが、時間が経つと消えてしまうからギリギリに引きたいという思いもあって...。家でもギリギリまで寝ていたくて、朝起きて10分で家を出るというのが特技なのですが、もうバッタバタなので、もう少し余裕を持てたらいいなと」
直居「(番組で)もう少し柔らかく伝えられたらと思っています。一応心がけているんですけど、我ながら表情は硬いし、怒っているように見えるらしいので。だから、それを矯正するために寄席通いをしています。現場でお笑いを取りにいくわけではないのですが、少しでも楽しい雰囲気で放送できたら、より視聴者の皆さんに伝えることができるかなと思うので」
改野「オンエア前に『発声練習だ』って言って、寄席で覚えてきたことを話してらっしゃいますもんね」
直居「スタジオの雰囲気を少しでも明るくしようと思って、覚えてきたばかりのギャグを飛ばすのですが、すっごくスルーされてます...(笑)」
改野「私、アイライン引かないといけないので!」
――最後に視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。
直居「できれば毎日ご覧いただきたいです。全部を見るのは難しいと思いますが、ウェブやVODみたいなものもあるので、15分でもいいのでできるだけ決まった時間を見ていただきたいです。そうすれば変化に気付くことができると思いますし、そうしていただければあなたの投資人生が変わると思います!」
改野「日々、マーケットの変化に敏感に反応できるようにして、解説者の皆さんの言葉を引き出せるように頑張っているので、ぜひ解説者の方々に注目していただきたいです。皆さん個性豊かですし、それぞれ得意分野が違うので、ぜひ"推し"の解説者の方を見つけていただいて、その方の意見を重視すれば、より投資が面白くなると思います」
文/原田健 撮影/中川容邦