小山薫堂と山口智子が「本当に幸せな時間」「デート感満載」と語る、温もりと人情の旅に密着「ふくあじ旅のススメ~福岡編~」

小山薫堂と山口智子が「本当に幸せな時間」「デート感満載」と語る、温もりと人情の旅に密着「ふくあじ旅のススメ~福岡編~」

J:COMチャンネルで、2025年1月2日に「ふくあじ旅のススメ ~福岡編~」を放送。"ふくあじ"とは、高級ではないけれど多くの人に愛されている料理、決して特別ではないけれど人を笑顔にする料理で、「食べた後、満腹になる」「食べた後、おふくろの味を思い出す」「食べた後、幸福感に包まれる」の3つの「ふく」で"ふくあじ"と呼ぶ。今回は、ゲストに俳優・山口智子を迎え、案内人の放送作家・小山薫堂と共に美食の街・福岡を旅する。温かく優しい料理との出会い、それを作るすてきな人たちとの触れ合いの様子をリポートする。

241230_fukuaji02.jpg

旅の始まりはせせらぎに包まれて

そんな"ふくあじ"を訪ねる旅は、福岡市民の憩いの場である博多川のほとりからスタート。今回のゲストである俳優の山口智子といえば、いわゆる"月9ドラマ"での活躍を記憶している人も多いだろう。小山もその一人で、川辺のシーンでは「ドラマに出ているみたいで緊張する」と照れ笑い。旅は和やかな雰囲気に包まれて始まった。

241230_fukuaji03.jpg

おしどり夫婦が営むくつろぎの大衆食堂

2人がまず向かったのは、福岡市の郊外、糟屋郡粕屋町にある食堂「喰焼処(くやくしょ)」。店名も個性的だが、実は2022年5月に「ふくあじ」で紹介され、小山も一度訪れたことがあるという。店を切り盛りするのは、2代目の店主と妻。うどんやラーメン、定食、丼物など、メニューは幅広く、定食のごはんを大盛りにすると茶わんが2杯、つまり2倍の量が出てくるというボリュームも評判を呼んでいる。

こちらでは、小山が「焼ちゃんぽん」に舌つづみ。「焼ちゃんぽん」は、客の「おなかにたまる酒のツマミが欲しい」という要望に応えて考案した汁なしのちゃんぽんだ。地元の新鮮な野菜をシャキッと炒め、味の決め手はうまみたっぷりの鶏ガラスープ。小山が思わず「これはお酒が欲しくなるね」と漏らせば、これに山口も大きく相づちを打つ。合わせて大衆食堂メニューの定番「やきめし」もオーダーし、こちらもペロリと完食。それを見たご主人は、「お皿に何も残っていないのを見るのが幸せ。ああ、おいしかったんだなって」と頬を緩める。この温かさこそ、まさしく"ふくあじ"だろう。おいしい物を食べると会話も弾む。その後も話は盛り上がり、4人はご夫婦の恋バナにも花を咲かせていた。

241230_fukuaji04.jpg

博多の総鎮守"お櫛田(くしだ)さん"を参拝

続いては、"お櫛田さん"の愛称で親しまれる「櫛田神社」を参拝。ここは780年以上続く「博多祇園山笠」が奉納される神社として知られ、飾り山笠が6月を除いて通年展示されている。2人は勇壮できらびやかな山笠に圧倒されつつ、神社の方の話に耳を傾けた。参拝後は、甘く香ばしい香りに誘われ「櫛田茶屋」へ。店主が焼く「櫛田のやきもち」は、パリッと焼いた餅の中にあんこがたっぷり。「うわ、おいしい!」と小山が驚けば、「寒い日に、この熱々はうれしい」と山口も満面の笑み。1個150円という手頃さもあって、この日も飛ぶように売れていた。

241230_fukuaji05.jpg

新旧が融合する商店街で博多の伝統に触れる

130年以上の歴史がある「川端通商店街」では、受け継がれる博多の伝統工芸に触れた。博多人形と博多織の専門店「増屋」では、珍しい「博多人形のガチャガチャ」に挑戦。20種類以上ある中から山口が引き当てたのは、なんと金色に輝くえびす様!「それ当たりですよ、きっと」(小山)、「うれしい!」(山口)と2人とも童心に帰って楽しんでいた。さらに、明治28年創業の老舗「門田提灯(ちょうちん)店」では、提灯の絵付けを体験。4代目と5代目が伝統を守り続けている同店では、ニーズの変化や海外観光客に向け、新たにこの体験プログラムを始めたという。思い思いに筆を走らせ、数十分ほどで世界に一つだけの提灯が完成した。

241230_fukuaji06.jpg

小山の"とっておき土産"「わさびいなり」

実は大の福岡通である小山。福岡には長年通い続けるなじみの店もあるという。「ここのいなりずしは包むのではなく、握るんですよ」と小山がオススメするのは、「鮨おさむ」の「わさびいなり」。大切な人への手土産、いわば"とっておき土産"によく利用しているという。「わさびいなり」は、店主が30年ほど前に考案。油揚げは、熊本の特産「南関あげ」を使い、じっくり6時間以上をかけてだしをたっぷり含ませる。この油揚げでシャリを優しく握るわけだが、この時シャリに空気を含ませてふんわりと仕上げるのがコツだ。仕上げに、すしに向かって「おいしくなあれ」と、魔法の言葉をかける店主。提供する際の「はい、あなたの"言いなり"」というダジャレも定番だ。「このキャラクターもお気に入りなんです」と小山もにこやかに笑う。

作りたてはふわっと軽やかな食感が際立ち、わさびの香りもより鮮烈だ。初体験の山口は「わさびがすごくいい。(わさびの量が)少し多いかなと思ったけれど、食べると気にならない」とご満悦。店主は、この絶品「わさびいなり」のレシピを隠すことなく発信している。「みんながおいしいおいなりさんを作って、たくさんの人に喜んでもらえたらうれしい」。そんな飾らない人柄も小山がほれ込む理由だ。現在、「わさびいなり」の持ち帰りは店内飲食した人のみに提供(要予約)されている。

241230_fukuaji07.jpg

サプライズも!小山がほれ込むおでんの名店

のれんをくぐるや「わあ!この雰囲気だけで、もう世界遺産に認定したい」と山口が目を輝かせたのは、中洲にある「名代おでん 安兵衛」。この店もまた小山が大切にしている一軒だ。創業から64年。昭和の風情がそこかしこににじむ店内はだしの香りに満ち、ヒノキの一枚カウンターの前の置かれたおでん鍋がゆらゆらと湯気が立てている。そこに立つのは、御年83歳の店主。「店で倒れたら本望」と生涯現役を貫くこの店の2代目だ。こちらのおでんは伝統的な関東風。百合根が入ったがんもどきに、殻ごと煮込むのがこだわりの卵、真っ黒な染み染み大根、特製のねぎま。大根は見た目こそ味が濃そうだが、「食べてみるとちょうどいい」と山口。がんも、卵、ねぎまも「これ、おいしいね」「最高」と2人は目を合わせる。

この店に来たのは、このおでんと、もう一つ目的があった。「実は大将にこれを」と小山が取り出したのは、2つの提灯。先ほど「門田提灯店」で作った提灯は、今年83歳を迎えた店主への誕生プレゼントだった。「なんとうれしい!」と店主が早速店の神棚に飾ると、これが意外に違和感なくマッチ。「うまくハマってますね」と山口。場の空気が一層華やいだ。

この日は店主の息子で3代目とその家族もそろい、4代目(予定)の長女と長男の姿も。聞けば、長男の名前は小山さんの「薫堂」から一文字をもらったものだというから驚く。「この店に来ると時間が止まったような感覚になっていたのですが、大きくなった2人を見てものすごく時間が進んでいるのだなと実感しました。でも、その中でこの店が変わらず、同じ味を守ってくれているということが本当にありがたいし、うれしい」と小山。ここで予期せぬサプライズのお返しが。なんと3代目一家が小山と山口に還暦祝いのケーキを用意してくれていたのだ。「顔がデレデレですよ」と山口に突っ込まれ、「だって幸せじゃないですか」と小山。おいしい料理がつなぐ、温かな人たちとの出会い。"ふくあじ"の魅力を集約したような光景だった。

241230_fukuaji08.jpg

ふくあじ旅を終えて

福岡での「ふくあじ旅」を満喫した2人に今日一日を振り返ってもらった。

山口「福岡は1人1人のパワーが濃かったですね。食べ物がおいしい街だとは聞いていましたけど、それを作る人たちの人間力や人生が現れているのかなと感じました」

小山「福岡には人情味がある店が多いですよね。客と店の距離も近い。福岡の人たちって、おもてなししなきゃというよりは、自分が楽しいからお客さんと話しているという雰囲気がある。それが心地よいし、定期的に立ち寄りたくなる」

山口「そういう店を探し当てる薫堂さんもすごいですよ。今日も運転しながらおいしそうな店を見つけていましたし。常にアンテナ張っているんだなと」

小山「意識してアンテナを張っているわけじゃないですよ。純粋な好奇心だと思います。好奇心が全ての出会いにつながるので、自分の好奇心をどう維持するかというのが、一番の秘訣(ひけつ)なのかな。ただ、店のたたずまいやメニューの書き方、店内のしつらえなどを見て、ここはいい店そうだなっていうのはなんとなく分かります。嗅覚といえば、そうかもしれない」

山口「実行力もすごい。今日も運転中に『ちょっと引き返してみようよ』って豚まん買ってましたから(笑)」

小山「あの豚まんもおいしかったですよね(笑)。今回は山口さんとは同い年ということもあって、昔からの友人のような感覚で過ごせました。同じように年を重ねられるという幸せを感じつつ、またご一緒できたらいいですね」

山口「薫堂さんの運転付きでしたし、デート感満載だったのも良かったです(笑)」

小山「本当に幸せな時間でした」

文/前田健志 撮影/梅木啓志

エンタメ インタビュー

もっとみる