元プロ野球選手という異色の経歴のプロ雀士・加藤哲郎が名人戦出場に歓喜「うれしいを飛び越した感情でした」
エンタメ インタビュー
2024.10.31
11月5日(火)よりMONDO TVでスタートする「モンド麻雀プロリーグ24/25 第18回名人戦」に加藤哲郎プロが初参戦する。
モンド麻雀プロリーグの「名人戦」は、百戦錬磨の男性雀士10人が円熟な技と巧みな心理戦を繰り広げる伝統的な大会。予選は各プロが4戦を戦い、総合点の上位8人が準決勝に進出。準決勝は点数を持ち越し、各プロ2戦を戦い、総合点の上位4人が決勝進出。決勝は、予選、準決勝の点数を持ち越さず、2戦を戦って優勝者を決める。優勝者は、2025年2月に放送される「第20回モンド王座決定戦」に出場し、「第21回女流モンド杯」「第24回モンド杯」のそれぞれの優勝者と現モンド王座・白鳥翔を加えた4名で、年間王座を懸けて対決する。
加藤といえば、1983年にドラフト1位で近鉄バファローズに入団し、1989年のリーグ優勝に貢献した元プロ野球選手で、引退後は野球解説者、実業家、俳優、プロ雀士と異色の経歴の持ち主だ。今回、そんな加藤にインタビューを行い、プロ雀士になったきっかけや麻雀との出合いや、名人戦への意気込みなどを語ってもらった。
――昨年、プロ雀士となった経緯を教えてください。
「元々プロになるつもりはなくて、7、8年前から日本プロ麻雀連盟の黒木(真生)さんや他の団体の方に『プロになったらどうですか?』みたいな話をよくされていたのですが、お断りしていたんです。いろんな団体の方と仲良くさせてもらっていたので、どこかに所属すると他の団体の方と疎遠になるのが嫌だったので。でも、一昨年の12月にふと『年が明けたら59歳か...。60歳を迎えるに当たって、このまま何事もなく過ごしていくのもいいけど、本当にそれでいいのか?もっと今までと違う刺激ある人生にしたくないか?』と思い立ち、黒木さんに相談させていただいたというかたちです。団体に関しては、『入るなら日本プロ麻雀連盟がいい』と思っていたので」
――麻雀との出合いは?
「高校までは本当に野球しかしてこなかった中で、プロ野球に入ってから先輩にパチンコ屋に連れていってもらったんです。そうしたら先輩たちが夕方6時くらいになったらいなくなっていて、どこに行っていたか尋ねると、『2階の雀荘に行っていた』と。麻雀がどんなゲームから知らなかったので、『僕もちょっと見に行っていいですか?』と言って見に行ったら、『これは面白いな!』となりまして。ルールも全然分からなかったんですけど、見ていたらすごく面白そうで、一瞬でハマってしまいました。それからは雑誌『近代麻雀』を隅から隅まで読んで、その後はMONDO TVを見て...という感じでした」
――では、今回は昔から見ていた大会に出場することになったということですね。
「いやぁ、もう本当にそう。MONDO TVの名人戦なんて、僕にとっては別格の大会なんですよ。だから、出場のお話をいただいた時は本当にびっくりしました。まさか出場できると思っていなかったですし、うれしいを飛び越した感情でした。名人戦って、僕と同じ年代か、ちょっと上の年代に人に(出場すると)言ったら、もうびっくりしますよ!面子が面子ですし、そんな方々と真剣勝負できるのはプロ冥利に尽きます」
――麻雀の魅力は?
「野球と一緒で、心理戦なところです。『相手が何を考えているか』『今、何をしたいか』をずっと考えて、"勝負する時はする。避ける時は避ける"というところが大事。自分中心に考えるのではなく、ある程度相手のことを考えながら、第三者の目線に立ってやることが必要で、野球の時と同じような感覚で取り組むようになってから、自分らしい麻雀が打てるようになりました」
――プロ雀士になってから対局への意識は変わりましたか?
「結果ではなく、『この人の麻雀が見たい』と思ってもらえるような打ち方をしなければならないな、と。野球でもそうですが、『このピッチャーの試合が見たい』とか『このバッターの打つところが見たい』など、今だと(ロサンゼルス・ドジャース)大谷くんなんかがそうだと思うのですが、そういう麻雀を心がけるようになりました。プロになる前も番組などにゲストとして呼んでもらって、今思えば遊び半分で対局していたのですが、プロになってからは以前とは全然気持ちが変わって、『加藤哲郎というプロ雀士の麻雀を見てもらいたい』という思いが強くなりました。
MONDO TVの麻雀(のルール)は、赤ドラがなく手役志向になるし、"スピードだけじゃない、効率だけじゃない"というところに重きを置かれているので、そういうところは自分の中で大切にしたいなと思っていますし、『カッコ悪い麻雀だけはやらない』というのを肝に銘じて参戦したいと思います」
――ご自身の麻雀のスタイルやこだわりは?
「麻雀を損得で考えない。『こっちの方が得でしょう』とか『こっちの方が損』みたいなことは一切考えず、自分が見えている範囲で一番高い手を和了(あが)りにいく。ただ、変な打牌で放銃はしたくないので、『勝負どころだと思ったら前に出る、情けない麻雀、格好悪い麻雀だけはしたくない』そんな気持ちです」
――対戦相手で気になる方はいらっしゃいますか?
「前原(雄大)さんは親しくしてもらって何度も打っているんですけど、前原さんに『加藤さんに勝ったことないからなぁ。僕も一生懸命やってんだけどな...』ってよく言われるので、前原さんには負けないように頑張りたいと思います(笑)。あと、個人的に(森山茂和)会長は本当に強いと思っていて、対戦すると迫力満点なので飲まれないようにするのが課題ですね。また、沢崎(誠)さんは各団体のプロが『強い』と言っていて、僕自身も見ていて『すごいな』と思う瞬間が多々ある方なので、対局できるのがすごく楽しみです」
――最後に麻雀ファン、視聴者の方々にメッセージをお願いします。
「私が出ていない対局も見どころ満載なので、ぜひお楽しみください」
文/原田健 撮影/中川容邦