「ザ・山男」「ザ・森男」「ザ・鍛冶男」を比較 大自然への挑戦や職人技を追う3作品の見どころ

「ザ・山男」「ザ・森男」「ザ・鍛冶男」を比較 大自然への挑戦や職人技を追う3作品の見どころ

ヒストリーチャンネルの人気番組の中でも、際立った個性を放つのが「ザ・山男」だ。原題は 「Mountain Men」。北米の山岳地帯で、狩猟・漁・農耕・牧畜などを組み合わせながら、自給自足を続ける人々に密着したドキュメンタリーである。その後、現代社会から距離を置き、自然・伝統技術・自給自足の世界で生きる人々を追う企画として、「ザ・森男」、「ザ・鍛冶男」というシリーズ番組も派生した。今回は、3つの番組にスポットを当てて、詳しく紹介したい。

■チャンネルの看板番組となった超絶サバイバル「ザ・山男」

まずは、「ザ・山男」から。放送開始は2012年で、本国アメリカではシーズン14まで継続と3作の中では最も歴史が長く、ヒストリーチャンネルの看板番組ともいえる人気コンテンツだ。「山男」というと、単に登山好きな男性というイメージもあるが、本作では、北米大陸の山岳地帯で自らの手で住居を造り、狩猟、漁猟、牧畜をしながら生きる人々をマウンテンメン=「山男」と位置付けている。番組の最大の魅力は、厳しい自然との戦いだ。単発のサバイバル挑戦番組と大きく異なるのは、出演者が「今日を生き延びる」だけでなく、「この場所で何十年も暮らし続ける」ことを目指す点。山での生活そのものが題材になる。食料の確保、冬を越す燃料の準備、住居の修繕と、やることは多岐にわたる。さらに狩猟用の罠を仕掛けたり、水を確保したり、恐ろしい野生動物から身を守るといった作業が延々と続いていく。特にマイナス50度の厳冬との戦いは、まさに命がけだ。吹雪や雪崩、食料不足、凍結が常に生活を脅かす。大自然を相手に命を賭した戦いに挑む出演者の姿は迫力満点だ。

260826_otoko_02.jpg

ただ、「ザ・山男」の面白さはサバイバル技術だけではない。番組は、彼らが「なぜ厳しい山での生活を選択したのか」という人間性に迫っていくことになる。便利な都市生活を捨てて、住まいや食料を自力で確保しながら自然と闘う彼らの人生哲学は、確かに興味深い。文明社会とは異なる人生観を持つ人間のドキュメンタリーとして見ると、より深く楽しめる番組になっている。

例えば、シーズン3は「数十年に一度レベルの厳冬」という「冬」が主役になった点がポイント。シーズン全体を通じて、狩猟・罠猟だけでなく、家族、仲間、家畜、住居、交通手段まで、山で生きるためのあらゆるものが試されていく。狩猟の達人であるトム・オールが野生のオオカミに挑み、孤独な技術者のマーティ・メイエロットが、重要な足である飛行機のエンジントラブルに悩まされながら、厳冬の悪条件をどう乗り越えるのか。従来のサバイバル番組とはけた違いの迫力溢れる映像に刮目してほしい。

260826_otoko_03.jpg

■森の中に生活空間を創出する5人を追う「ザ・森男」

原題は 「The Woodsmen」。「ザ・森男」は、全8話で構成され、5人の男性が現代社会から離れて森の中で自給自足生活を送る姿を追う。番組の最大の特徴は「木の上に生活拠点を作る」こと。いわゆるツリーハウスだが、彼らの住居は、地上約15mの大木の上に生活基地として建設されたもので、規模がまったく違う。舞台となるのは、アイダホ州北部ソウトゥース・レンジやワシントン州オーカス島など、太平洋岸北西部の山深い森林地帯だ。森林火災や暴風雨もあれば、野生動物も当然襲来する。さらに不法侵入者が出現して彼らの生活を脅かすこともある。「ザ・森男」は、森林そのものを生活空間に変えようと奮闘する男たちのドキュメンタリーと言える。

5人の出演者たちが、それぞれの視点で森と「付き合う」点も面白い。優れた建築技術を誇るイーサン&エイザは、ツリーハウスの建設に挑むが、建築中に落下の危険に直面してしまう。ジェイは、命同様に大切にする木を不法に伐採する不届き者に対して、爆薬を使った警報装置を仕掛ける。マイク&スティーヴは高度な狩猟技術を誇り、オオツノ羊を見事に射止めるが、獲物を解体している最中にやぐらが崩壊してピンチに陥る...。つまり、本作では、「建築」、「狩猟」、「防衛」、「食料確保」が同時進行していくのだ。この構成がじつに面白く、視聴者は「どうなるのだろう」と画面に引き付けられることになる。

260826_otoko_04.jpg

また、究極のサバイバルが展開する「ザ・山男」と異なり、本作には「DIY番組」としての要素もある。「森男」は、「生き残る」というより、「どうやって生活空間を作るか」がテーマだ。ツリーハウスの建築をはじめ、ロープや足場、吊り構造などに出演者が工夫を凝らすところも面白い。山に捨てられた廃車から部品を調達して工具を作るなど、「ものづくり」の要素も楽しめる。やぐらが崩壊したマイクとスティーヴが、獲物を解体するための吊るし台を作成したり、その後は新しい狩りの拠点となるやぐらの建設に挑んだりなど、逞しいバイタリティにも感心させられてしまう。

260826_otoko_05.jpg

■驚異的な匠の技を見せる職人に焦点を当てる「ザ・鍛冶男」

最後にヒストリーチャンネルで2026年7月に放送開始されたばかりの「ザ・鍛冶男」に注目したい。原題は、「IRON&FIRE」。自然との闘いではなく、「職人仕事」の奥深さをじっくり見せてくれる番組なので、前作とは趣が異なる。ミズーリ州のオザーク高原で伝統的な鍛冶を営む職人のダニエル・ケーシーに密着するドキュメンタリーだ。「失われつつある"本物の技"と"ものづくりの魂"」というキャッチコピーの通り、歴史的な製法によって旧式の銃やナイフを精密に再現するダニエルの匠の技が見どころである。ダニエルは若いながら素晴らしい技術を誇る鍛冶職人。歴史的な製法をそのまま再現するだけではなく、自分なりの工夫を加えて最高の道具をつくり上げる。200年もの歴史がある開拓者時代の古式ライフル「プアーボーイ」をはじめ、博物館に展示されている「ボウイナイフ第一号」のレプリカなど、依頼者からの注文は困難を極めるものばかり。それでも、ダニエルは知恵と情熱を持って難題を乗り越えて、完成させる。特にボウイナイフに至っては、博物館の学芸員に「本物と見分けがつかない」と言わしめる出来栄えだ。ほかにも精密さが要求される射撃競技用ライフルや金属をも貫く最強の刃「ダマスカス・ダガー」、ショットガン、トマホーク、果ては南北戦争時代の大砲まで作ってしまう。各話ごとに異なる歴史的な武器や道具を製作・修復するダニエルの匠の技は、まさに驚異的だ。ただし、単なる「昔の武器をコピーする」のではなく、歴史的な技術を現代の職人がどう解釈して再現するか、その過程こそが本作の見どころなのだ。

「南北戦争の大砲」や「先住民との交易用ライフル」などを作る過程で、「なぜ当時、こういう形状だったのか?」という歴史に触れることになるのも興味深い。その武器が何のために作られて、どんな材料を使い、当時の技術でどう製造したのかという背景に迫っていくプロセスを見せることで、歴史番組としても成立している点もポイントである。また、ダニエルや作業を手伝う甥っ子たちの射撃の腕前も見逃せない。銃の試射場面で、スーパースロー再生で果物が砕け散る映像もなかなか貴重だと思う。

260826_otoko_06.jpg

本シリーズ3作を通して見ると、ザ・山男は「大自然への人間の挑戦」、ザ・森男=「自然の中に生活空間を作る」過程が見どころであり、ザ・鍛冶男=「自然から得た素材を、人間の技術で道具に変える」と、それぞれ異なる見どころがあることが分かる。そして、この3作品は「アメリカのフロンティア精神」が縦軸になっている点も見逃せない。3作に共通するのは、「自分の力で生活を成立させる」アメリカのフロンティア文化の素晴らしさだ。

「山男」は、自分で食料を確保し、「森男」は、自分で住居を作りあげる。そして「鍛冶男」は、自分の手で精巧な武器を作る。食べる→住む→道具を作るという、人間の生活の根本にある3要素が、番組のテーマになって連なっているようにも見えるのだ。

番組が描き出すフロンティア文化によって、現代人の日常との対比を感じざるを得ない。現代人は、食材はスーパーやネットで購入し、冷暖房や水道も当たり前にある。彼らはそれを望まない。人間は、本来どこまで自力だけで生活できるかという、強烈な問いを我々現代人に突きつけてくるようだ。「ザ・山男」では人間ドラマを、「ザ・森男」では技術と共同作業の過程を楽しむ。「ザ・鍛冶男」では、道具を美術品の域にまで感じさせる職人の匠の技に魅了される。どの作品も極めて濃密で、迫力満点だ。

文/渡辺敏樹

チャンネル:J:COM STREAM

ドキュメンタリー 見放題

チャンネル:J:COM STREAM

ドキュメンタリー 見放題

※放送スケジュールは変更になる場合がございます