三宅健「『アイドル』という未定義を生きる」持続する自己とその哲学
ドキュメンタリー TV初インタビュー
2026.04.18
4Dimensions(4次元)――決して時間軸とも言い切れない"新しい次元の何か"を探して、三宅健がヨーロッパを旅するスペシャル番組「三宅健-4Dimensions- フランス編」が、4月24日(金)にフジテレビTWOにて全話一挙放送される。初めてのドキュメンタリー出演となる本作で、三宅が向かったのはフランス。現代アートや建築に造詣が深い三宅が、ずっと行ってみたかった場所や知られざるアートスポット、そして現地で活躍する日本人を訪ねる。
自ら"職業 アイドル"と名乗り、30年以上も第一線で活躍し続けてきた三宅健。今回の旅では、Dialogue(対話)、Design(デザイン)、Discovery(発見)、Detox(デトックス)という4つの「D」を軸に、異国の地で自身の感性をアップデートしていく。旅の始まりへの期待感と共に、彼が抱く「アイドル」というカテゴリーへの深い哲学について語ってもらった。
■三宅健が定義する「アイドル」の可能性と、フランスの旅で見出す新たな軸
──「4Dimensions」として旅に出ると決まったときのお気持ちを教えていただけますか。
「渡航の予定が続くとは思いもよらず驚きましたが、以前から関心のあったものを実際に見に行ける機会でもあったので、自然と期待が高まりました」
──行きたい場所として真っ先に浮かんだのはどこでしょうか。
「縁ある人々の暮らすロンドンがまず思い浮かび、続いてビルバオやスイスへと思索は広がりました。最終的に南仏へと導かれたのも、どこか自然なものに感じています」
──三宅さんは「何にでもなれる、未知数の可能性があるのがアイドル」とおっしゃっていますが、ジャンルレスに活動しているからこその軸はありますか。
「"アイドル"という言葉を改めて捉え直したとき、それは固定的な役割ではなく、変容し続ける存在であると理解しました。だからこそ、あらゆる表現を内包し得る器として、この概念こそが最も自分に馴染むと感じました。その無限性や可能性を引き受け続けることが、自分の軸になっています」
──アイドルとしての活動を「作家」の視点で捉えているというお話が印象的でした。
「積み重ねてきた時間をひとつの表現として捉え直したとき、"アイドル三宅健"そのものを作品として構築できるのではないかと考えました。河原温の実践に触発され、時間の蓄積そのものをコンセプトとして扱う意識が生まれたのだと思います」
──譲れないものが「アイドルである」ということになるのでしょうか。
「"アイドル"という概念を表層的なものに留めず、より本質的な領域で更新していきたいと考えています。本来そこには強い求心力があり、それを他の領域と接続することで、新たな価値が立ち上がる可能性がある。ただ同時に、その言葉が持つ歴史的な軽視や偏見も存在する。その両義性を引き受けながら、なお拡張していくことに意味があると思っています」

■ル・コルビュジエ建築と表現の地続きにある日常。フランスで得た未知の感覚
──フランスではコルビュジエ建築にも触れたそうですが、これから行ってみたい場所はありますか。
「次なる段階としては、彼の思想の軌跡を辿る巡礼の旅に赴きたいです。必然的にインド、チャンディーガルへ視線は向かっています」
──実際にフランスやスペインを訪れたことで、事前にもっていたイメージと変わった点はありますか。
「どれも想像していたものとは異なっていました。写真で見ていたとしても、実物はスケールがまったく違う。特にリチャード・セラの彫刻は、鉄という素材が空間そのものを変えてしまう感覚があって、これが彫刻なのかと圧倒され、もはや"彫刻"という枠では捉えきれないものでした。エドゥアルド・チリーダの作品にも通じますが、物質でありながら空間や重力そのものを扱っているような印象を受けました」
──実際に作品の中に入り、体全体で感じる体験をされたと思うのですが、それによって印象が変わった部分はありますか。
「内部に入ることで、自分の身体感覚そのものが揺さぶられるような体験がありました。セラの作品では、歩くことで空間が変化し、時間の流れすら歪むように感じられる。チリーダの作品も同様に、"余白"や"間"が強く意識されていて、見るというより、空間に触れている感覚に近かったです。
コルビュジエのロンシャン礼拝堂ではまた違っていて、光の入り方や壁の厚み、プロポーションのすべてが計算されていて、空間そのものが精神に作用してくる。建築でありながら、祈りの装置のような強度を感じました」
──フランスの旅を振り返って、特に印象的だった場所や出会いがあれば教えてください。
「やはりコルビュジエの建築ですね。合理性の中にある人間的な揺らぎというか、機能だけではない領域まで設計されている。その思想を実際に体験として受け取れたことは大きかったです。ただ同時に、今回触れたものはすべて、それぞれ違う形で強く印象に残っています」
■パリのアトリエで再会した友人・田中麻記子。制作現場から見えてきた「新しい発見」

──番組では、ご友人でアーティストの田中麻記子さんのご自宅を訪問するシーンもありました。感じたことはありますか?
「これまで断片的にしか知らなかった彼女の生活や制作の全体像に触れることができました。どのような環境で、どのように作品が生まれているのかを実感できたのは大きかったです」
──具体的に、どのような部分に「発見」がありましたか。
「空間の中に作品が並ぶ構成そのものが印象的でした。制作途中のもの、完成したもの、そしてこれから完成に向かうものが同時に存在している。その環境の中で制作が行われているという事実自体が、新しい発見でした」
──最後に、視聴者のみなさんへメッセージをお願いします。
「普段あまり触れないものに出会うことで、自分の中に新しい感覚が生まれることがあると思います。この番組が、そのきっかけになれば嬉しいですし、旅を一緒に体験してもらえたらと思います」
■4Dimensionsの旅を経て。「職業 アイドル」として見つめるこれからの自分
フランス、そしてスペインの地で、歴史的建築や現代アートの本質に触れた三宅健。写真や画面越しでは決して味わえない「本物のスケール感」を体験したことは、彼が掲げる"職業 アイドル"という作品をさらに強固なものにしたはずだ。
異国の地で再会した友人の生き方や、空間を支配するアートのエネルギー。それらすべてを吸収し、アップデートされ続ける三宅の姿は、視聴者にとっても「新しい次元」の扉を開くきっかけになるだろう。三宅健というフィルターを通した、知られざるフランスの旅を、ぜひその目で見届けてほしい。

文/ふくだりょうこ




