俳優パク・ユチョンの原点である傑作ドラマ「屋根部屋のプリンス」を今こそ見るべき3つの理由
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2026.06.04
2026年3月に公開された日本映画『361-White and Black-』で、天才囲碁棋士を重厚に演じきったパク・ユチョン。アラフォーを迎え、静かな熱量をたたえた現在の姿も魅力的だが、彼の俳優としての原点は、やはり「ラブコメディー」にあるといえる。みずみずしい感性で駆け抜けた20代、世界中のファンを熱狂させたあの「輝き」の正体を、今こそ改めてひもといてみたい。

(C) SBS
ユチョンの俳優としての初主演作は、「トキメキ☆成均館スキャンダル」(2010年)だ。パク・ミニョン、ソン・ジュンギ、ユ・アインという今の韓国ドラマを背負って立つ豪華俳優陣と共演したラブコメディー作で、ユチョンはアイドルとしてだけではなく、俳優としても大ブレークを果たした。続く「ミス・リプリー」(2011年)では一転、スリリングな大人の恋愛劇で前作とはまったく違う表情を見せた。そして3作目に再び、ラブコメディー「屋根部屋のプリンス」(2012年)に挑戦し、朝鮮時代からタイムスリップしてきた世子(王子)と現代女性との恋模様を演じた。
日本でもヒットしたドラマだが、実は韓国での放送開始時、視聴率は芳しくなかった。ところが回を追うごとに「おもしろい!」と話題になり、最終回は並み居る強豪ドラマを抑えて同時間帯視聴率1位を獲得。この年の韓国主要ドラマアワードで総計11冠を獲得するに至った。
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■笑いの中に宿る宿命と愛。単なるコメディーを超えた物語の深み
「屋根部屋のプリンス」は、朝鮮時代の世子イ・ガクが、妃の死の謎を追う中で家臣3人と現代のソウルにタイムスリップするファンタジーラブコメディーだ。屋根部屋で間借り生活を送る中で、現代の女性に惹かれていく。コミカルな設定だが、この作品は笑いの皮をひとつめくるごとに、宿命、喪失、そして時代を超えた愛という普遍的な感情が顔を出す。単なるラブコメディーではないところが、人々の興味を集めた要因だろう。
ユチョンは、傲慢(ごうまん)にして純粋な朝鮮時代の世子イ・ガクと、現代の財閥御曹司ヨン・テヨンの二役を演じている。物語が展開するにつれて、この二人がただの「似た顔の別人」ではなく、魂のレベルで連なっていることが明かされていく。視聴者はその二重構造に引き込まれながら、ユチョンという俳優の懐の深さを思い知ることになる。
一人二役は、同じ顔、同じ声でありながら、それぞれを別人として成立させなければならない。イ・ガクを演じるユチョンは体の重心をわずかに高く保ち、「下から見ることを知らない王族」の確固たる自信を感じさせた。登場シーンこそ少ないもののヨン・テヨンは、少し重力に引かれるように身体を沈ませ、まなざしに疲労感と自制心を宿らせている。そんな小さな差異で、二役を演じ分けた。特に物語後半では、「世子としての悲しみ」と「現代人としての喪失感」がユチョンという一枚のキャンバスに同時に描かれる演技に圧倒されるはずだ。
■赤ジャージ姿の王族?ユチョンのコメディーセンスが爆発する名シーン
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シリアスな演技は言わずもがな、コメディーパートではユチョンのかわいらしさが爆発している。特にタイムスリップしてきた世子イ・ガクが、スマートフォンを初めて手にしたときのぼうぜんとした顔、ラーメンの辛さに驚く場面、赤ジャージと王族の冠というフュージョンファッションで昔言葉を話す演技は過剰にならず、しかし確実に笑いをとる。その加減の正確さが、ユチョンの演技力を証明している。
また、現代社会のルールに翻弄(ほんろう)されながらも、王族としてのプライドを捨てきれない姿は、滑稽(こっけい)でありながらどこか愛おしい。文明の利器に驚き、おびえ、やがて順応していく過程で見せるさまざまな表情は、ファンならずとも必見だ。
■ハン・ジミンとの完璧なケミストリー。時を超えて響く心の揺れ
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恋愛ドラマにおいては、相手役とのケミストリーも重要だ。本作のお相手となるのは、ハン・ジミン。彼女が演じるのは、イ・ガクたちが居候する屋根部屋の主、パク・ハだ。苦労人だが芯の強さを失わないヒロインである。異世界から来たイ・ガクの言動に振り回されるパク・ハだが、ハン・ジミンはその"振り回される感じ"を、ただのコメディーにせず、どこか温かく、愛おしいものに変えていく。ユチョンの真っ直ぐさと、ハン・ジミンの柔らかさ。この対比が、二人の関係に独特のリズムを生み出している。
特にイ・ガクがパク・ハに心を開いていく過程の二人の呼吸の合わせかたは、お見事といえる。視線が合う瞬間の"間"の取り方、言葉を交わす前に生まれる空気の揺れ。それらが積み重なって、恋愛ドラマとしての説得力を強めている。この"温度"のあるケミストリーと、二人の時を超えた壮大な物語に視聴者は夢中になる。

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■10年を経ても色あせない。今こそ見るべき俳優ユチョンの原点
10年以上前の作品だが、「屋根部屋のプリンス」は今見ても古くさくない。ラブコメディーでありながらも、俳優の演技力、キャラクターの感情の流れ、そして二人のケミストリーが奇跡のように噛み合った作品だ。
テンポの速い作品が増えた今だからこそ、二人が丁寧に積み上げた感情の流れが、より深く胸に響く。ユチョンの俳優としての原点を知るには、うってつけの作品だ。2026年の最新映画で重厚な演技を見せる彼を堪能したあとは、ぜひこの14年前の輝きを改めて見てほしい。そこには、あえて困難な役どころに挑み、見事に血肉化させた一人の若き俳優の情熱が刻まれている。

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文/坂本ゆかり



