ハ・ジウォンの原点「奇皇后」を再考 最新ドラマ「CLIMAX/クライマックス」へ続くしなやかな強さの系譜
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2026.04.14
2000年代以降、韓国ドラマ界で常に第一線を走り続けてきたハ・ジウォン。チュ・ジフンと共演する彼女の最新作「CLIMAX/クライマックス」(2025年)では、すべてを失った元トップ女優に扮(ふん)し、これまでのキャリアで培ってきた圧倒的な存在感と深みのある演技が大きな話題を呼んでいる。
デビューから今日に至るまで、彼女は常に"強い女性"のアイコンであり続けてきたが、その原点ともいえる代表作が、2013年の「奇皇后」だ。放送から10年以上が経過した今、あえてこの長編時代劇をひもとくことは、最新作で見せる彼女の洗練されたたたずまいの根底にある"しなやかな強さ"を再確認し、その表現の進化をたどるぜいたくな体験となるはずだ。
■男として生きる少女から皇后へ。ハ・ジウォンが熱演したキ・ヤンの波乱に満ちた生涯
(C)Lee Kim Production/MBC
「奇皇后」でハ・ジウォンが演じるキ・ヤン(スンニャン)は、幼いころから剣術を学び、女に生まれながら貢女(コンニョ)として連れていかれないよう男として育った少女だ。強大な国家・元で大きな影響力を持つことになる、後の奇皇后である。
序盤、自らの身を守るために男装して生きる彼女の瞳には、野良犬のような鋭さと生き抜くための執着が宿っている。しかし、愛する者を失い、復讐(ふくしゅう)のために後宮へ足を踏み入れてからは、その眼差しが静謐(せいひつ)で冷徹なものへと研ぎ澄まされていく。ハ・ジウォンは、単に叫んだり涙を流したりするというよりも、視線の強さとその揺らぎで"復讐の鬼"と化したような瞬間を表現してみせた。このグラデーション豊かな心理描写は、何度見ても心を射貫かれる彼女の卓越した演技設計のたまものといえる。
(C)Lee Kim Production/MBC
■「動」のアクションと「静」の心理描写。2人の王の間で揺れ動く運命の愛
ハ・ジウォン特有の"動"と"静"のコントラストも見逃せないポイントだ。彼女の代名詞ともいえる華麗なアクションシーンでは、身体能力の高さに裏打ちされた完成度が際立つ。弓術や剣術での躍動感は見る者を圧倒し、極寒の川に入って我が子を探すシーンには、そのすさまじい俳優魂がにじむ。
一方で、孤独な知略をめぐらせる場面での沈黙にも強く引き込まれる。高麗王ワン・ユと元の皇帝タファンという2人の男性の間で揺れ動く複雑な愛憎を抱えながらも、決して自分を見失わない凛(りん)としたたたずまいは、現代を生きる視聴者の心にも響く。ハ・ジウォンという俳優は、過酷な状況下であればあるほど、その品格を増していく。若々しい熱量と、現在に通じる理性的な表現スタイルが同居した芝居は、当時30代中盤の彼女だからこそ放てる奥深い輝きに満ちている。

(C)Lee Kim Production/MBC
■全51話の大作を牽引する圧倒的オーラ。一人の女性の生き様が現代に放つ輝き
全51話という膨大な物語を牽引(けんいん)し続けた彼女のカリスマ性は、後半に進むにつれてさらにすごみを増していく。当初は生きることに必死だった少女が、やがて一国の命運を左右する"皇后"の座に上り詰めるまでの重圧を、ハ・ジウォンは繊細かつ大胆に体現した。豪華絢爛(けんらん)な衣装や装身具に負けない圧倒的なオーラは、内面から湧き出る自信と覚悟の現れにほかならない。

(C)Lee Kim Production/MBC
壮絶な運命の渦に自らを投じていく女の一代記。これほどまでに一人の女性の生涯を、痛みを伴うリアリティとともに描き切れる役者はそう多くないだろう。改めて今この大作に向き合うと、ハ・ジウォンが単なるヒロインの枠を超え、作品全体の精神的支柱として君臨していたことがよく分かる。不確実性が増し、価値観が揺らぎやすい現代社会。理不尽な世界に対して"個"がどう立ち向かい、何を勝ち取るのかという普遍的な人間ドラマとして、放送当時以上に心に染み入るものがあるはずだ。
文/川倉由起子




