フローレンス・ピュー&ハリー・スタイルズ ハリウッド注目の若手俳優が作り出した世界が見る者を引き込んで離さない

フローレンス・ピュー&ハリー・スタイルズ ハリウッド注目の若手俳優が作り出した世界が見る者を引き込んで離さない

映画『ドント・ウォーリー・ダーリン』が11月16日(土)にムービープラスでCS初放送される。

同作品は、気鋭の監督オリヴィア・ワイルドが手掛けるサイコスリラー。映画『ミッドサマー』(2019年)のフローレンス・ピューとハリー・スタイルズというハリウッドから注目を集めている2人の共演も話題となった。

完璧な生活が保証された街で、アリス(ピュー)は愛する夫・ジャック(スタイルズ)と平穏な日々を送っていた。ある日、隣人が赤い服の男たちに連れ去られるのを目撃したアリスは、それ以来、自身の周りで頻繁に不気味な出来事が起きるようになる。次第に精神が乱れ、周囲からもおかしくなったと心配されるアリスだったが、あることをきっかけに街に疑問を持ち始める、というストーリー。

予測不可能なストーリーラインと極限状況下のスリリングな展開、そしてラストに明かされる街の秘密など、見る者を一気に作品世界へ引き込んで離さない世界観が、鑑賞後も強烈な印象を残すインパクトのある良作であるが、その世界観を構築している役者の演技が素晴らしい。

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街の"完璧さ"に何の疑いも不満もなかったが、ふとしたことがきっかけでその"完璧さ"のほころびを見つけてしまい、徐々に猜疑心(さいぎしん)が湧いてくるというアリスを、ピューが真に迫る演技で表現。視聴者としても、初めは違和感なく見ていたものが、アリスの抱く疑念がきっかけとなり、"完璧さ"ゆえの異質さに気付かされるという仕掛けになっている。そして、次々にさまざまなところに散りばめられていた異質さに気付いていってしまうところが、なお怖い。

それと同時に、アリスが街の中で孤立していくにつれて、周りの人間による同調圧力が生み出すリアルな恐ろしさも描いており、周りから理解されずにどんどん望まない方向に流されていってしまう恐怖を、ピューと周りの役者が演技によって克明に描いている。正しい自分の意見に誰も耳を貸してくれず、いつしか腫れ物をさわるように対応されていくさまは、フィクションながらリアルさ満載で、作品世界から抜け出せない効果に一役買っている。

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一方、アリスとは違った変化を見せるジャックを演じるスタイルズの演技の幅にも注目。「妻が全て」という度を超えた愛妻家ながら、妻を思うあまりアリスとの距離が離れていってしまうところや、妻に寄り添いたいが寄り添えない葛藤、変わっていくアリスをどうすることもできない無力感、妻との完璧な暮らしが崩れていく時の絶望感など、アーティストならではの突出した表現力でジャックを熱演。特に、本当のジャックを演じるシーンでは、一見、違う人物かと思うほどに変貌しており、その変わりようは必見。

ハリウッドから注目されている両俳優を中心とした役者陣が、圧倒的な演技で構築した作品の世界に浸りつつ、作品が我々に伝えようとしている現代社会に対する警鐘を受け取っていただきたい。

文/原田健