尾上松也が語る、歌舞伎『刀剣乱舞』待望の二作目へ

尾上松也が語る、歌舞伎『刀剣乱舞』待望の二作目へ

「刀剣乱舞ONLINE」が、2023年に初めて歌舞伎化された。刀に宿る付喪神(つくもがみ)たちが刀剣男士となって、歴史を守る戦いに出陣するオリジナルストーリーだ。今年7月5日より、歌舞伎『刀剣乱舞』の待望の第二弾が上演される。演出・出演の尾上松也さんに、本作への思いや見どころを聞いた。

――第一弾は「刀剣乱舞」と歌舞伎、双方のファンに好評を博しました。当時の心境は?

「『刀剣乱舞』というコンテンツには、歌舞伎との親和性の高さを感じます。歴史をテーマにしているので古典歌舞伎とリンクしますし、刀剣男士の中には歌舞伎にインスパイアされた造形のキャラクターも。企画から携わり、何年もかけて実現にこぎつけ、脚本もできた。稽古場で皆とイメージを共有し、納得のいく舞台ができあがりつつある手応えはありました。ですが、それを客席の皆さまが受け入れてくださるかどうかは、幕が開くまで分かりません。不安な気持ちが強かった分、皆さまの好意的な反響に、まず何よりもホッとしました。われわれが『これが面白い』と信じて創ったものが、伝わったんだ...と」

25020_onoe02.jpg

――第二弾での、新たな挑戦はありますか?

「『お芝居』と『踊り』を別立てにした二部構成は、新たな試みです。2. 5次元の『刀剣乱舞』で例えるなら、前作はお芝居を通してお見せする「刀ステ(舞台『刀剣乱舞』)」のスタイルでした。今作は後半にライブのような所作事(おどり)のパートがある、「刀ミュ(ミュージカル『刀剣乱舞』)」に近い形式。そのどちらもが、歌舞伎になじみのある上演形式です。なんとなく世間一般に、『歌舞伎とはこういうもの』という固定観念があると思います。ですが実は、われわれ歌舞伎俳優には、『歌舞伎とはこうあるべきだ』といった定義はありません。見得(みえ)をしない、隈取(くまどり)をしない歌舞伎もありますし、ストレートプレイのような会話劇もあれば、踊りのタイプもさまざまです。柔軟性と幅広さを生かし、歌舞伎の力をどこまでお見せできるか。そこは挑戦だと思っています」

25020_onoe03.jpg

――新たな刀剣男士が、三振り登場します。ビジュアルが早くも好評ですが、配役の際に意識されたことは?

「僕の中に、妄想リストがありまして(笑)。『いつかこの方に出演していただけるなら、この刀剣男士を』と、歌舞伎俳優ほとんど全員の方に対して、日頃から刀剣乱舞との組み合わせを妄想しています。その中でも尾上左近(おのえさこん)くんは、加州清光(かしゅうきよみつ)のほぼ一択。若さもかわいげもあり、歌舞伎の若衆役や女方でおしろいを塗れば美しい。中村歌昇(かしょう)さんは、男らしいイメージを生かしつつ、他と少し色の違う刀剣男士に。衣裳も含め、陸奥守吉行(むつのかみよしゆき)がお似合いになると考えました。中村獅童(しどう)さんは、かっこいい骨太系の役は何でもお似合いになるんですよね。その意味で選ぶ難しさはありましたが、やはり『天下五剣(てんがごけん)』をお願いしたいという思いが決め手となり、鬼丸国綱(おにまるくにつな)を選びました。ビジュアル撮影の現場では、『うわ~、鬼丸だぁ~(と天を仰ぐ)!陸奥守やん!そのまんま加州やん!』と僕のテンションは上がりっぱなし。自分で自分を褒めました(笑)」

――ゲーム「刀剣乱舞」もプレーされていますか?

「尾上菊之丞(おのえきくのじょう)さん(共同演出・振付)は、ほとんどの刀剣をお持ちというほど、やり込んでいらっしゃるそうです。僕はそこまでではありませんが、部隊の編成は、やはり「刀かぶ(歌舞伎『刀剣乱舞』の愛称)」に所縁のある刀剣男士になりますね。歌舞伎版に登場した刀には、家族のような親近感を覚えます。刀かぶ所縁の刀が、今後も増えていってほしいです」

25020_onoe04.jpg

――第一弾は、J:COM STREAMの配信でも多くの方が視聴されました。配信で見る歌舞伎の魅力とは?

「前作では映像編集にも少し関わったのですが、俳優の表情のアップや、客席からは絶対に見られないアングルから撮影されたクライマックスの立廻りは、見どころではないでしょうか。好きな場面だけを好きなだけ繰り返し楽しめる点も魅力ですね」

――読者の皆さまへメッセージをお願いします。

「"ありそうでなかった"新作歌舞伎を目指し、皆でがんばっています。前作をご覧の方には、物語のつながりを感じていただけるように。『刀剣乱舞』も歌舞伎も初めてという方にも、楽しんでいただける舞台になっていると思います。このメンバーでどんな舞台ができあがるか、ぜひ劇場でお確かめください!」

取材・文/塚田史香 写真/三好宣弘


<上演情報>
歌舞伎『刀剣乱舞 東鑑雪魔縁』
上演中~ 7/27(日) 新橋演舞場(東京)
8/5(火)~ 11(月・祝) 博多座(福岡)
8/15(金)~ 26(火) 南座(京都)
歌舞伎『刀剣乱舞』公式サイト


エンタメ インタビュー

もっとみる