「昭和歌謡×ごはんレシピ」の掛け合わせが新しい。しずる感満載のお料理エンタメ番組「うたごはん」
2025.07.16
「歌」と「ごはん」。どちらも暮らしを豊かにするためには欠かせないもので、飲食店などでは必ず店内に音楽が流れており、親和性の高い2つである。しかし、意図的に「昭和歌謡と料理を掛け合わせる」という視点で制作された番組は、ミニ番組「うたごはん」(チャンネル銀河)が初めてではないだろうか。
同番組は、「日本のうた」にフォーカスし、万人が興味を持つ「食」と掛け合わせた10分のミニ番組で、世界的にブームとなっている昭和歌謡を取り上げ、歌詞の内容やエピソード、曲のジャンルなどと関連する料理を作るという内容。6月9日に発表された「第15回衛星放送協会オリジナル番組アワード」では、番組部門ミニ番組最優秀賞を受賞した。
映像の美しさと歌によって料理レシピ動画の枠を飛び越える
山奥にある別荘のような料理店で、女店主が懐かしい音楽をかけながら見事な手さばきで料理をこしらえていく姿を小鳥のピピ(声・近藤芳正)が見つめるという作りなのだが、女店主の顔は映さず、食材や料理の様子、流麗な手さばき、こだわりを持って集められた店内の調度品などに焦点を当てた美しい映像で紡いでいく。料理部分のカット割りだけを見ると、あくまで料理レシピ動画のそれなのだが、間に差し込まれる調度品の映像やピピの姿、そして後ろで流れている雰囲気たっぷりの「歌」が、まるで現地で料理ができるのを待っているかのような臨場感を与えてくれる。
エンターテインメント性を高めたテロップに注目
また、テロップで、レシピは最小限に抑えつつ、料理の知られざるエピソードや曲に関する豆知識、曲にまつわる裏話などを紹介しており、エンターテインメント性を高めているところがすばらしい。「歌と食を掛け合わせた」と謳いながらも、料理や歌の背景にある歴史や雑学などで"知識欲"もくすぐり、しっかりと万人受けする番組に仕上げているところがにくい。さらに、10本という番組本数の中で、女主人のこだわりや丁寧な暮らしぶりを少しずつ公開していき、縦軸としての一貫性を持たせることでドラマ性も加えて、ぶつ切りの10本にとどまっていないところも魅力だ。
「伊勢佐木町ブルース」「ブルー・ライト・ヨコハマ」「津軽海峡・冬景色」「黄昏ビギン」など、人気の昭和歌謡のつややかさ、切なさ、力強さなどを再確認しつつ、しずる感満載の料理と"明日話したくなる"豆知識に浸ってみてはいかがだろうか。
文/原田健