佐藤朱の"天然"炸裂! サンドウィッチマンの"ホーム"『ぼんやり〜ぬTV』 「サンドのぼんやり〜ぬTV」【戸部田誠】

戸部田誠(てれびのスキマ)

戸部田誠(てれびのスキマ) (ライター)

テレビやお笑いに関する著書を多数執筆しているライターの戸部田誠(てれびのスキマ)が、ローカル番組を中心に、バラエティ番組の魅力を解説する。

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佐藤朱の"天然"炸裂! サンドウィッチマンの"ホーム"『ぼんやり〜ぬTV』 「サンドのぼんやり〜ぬTV」【戸部田誠】

「今日もアクセル全開だね!」

「サンドのぼんやり〜ぬTV」で、サンドウィッチマンの2人がうれしそうにする瞬間がある。4代目アシスタントの佐藤朱(さとうあかり)が"天然"なボケを発揮するときだ。

佐藤はAKB48の元メンバー。2021年3月に卒業すると、翌月、地元・宮城の東北放送に総合職で入社した変わり種。営業職を経て、2022年10月からアナウンサーとなった。そして、2023年4月より「ぼんやり〜ぬTV」の4代目アシスタントに抜擢されたのだ。

もともと表に出る職業だったため、サンドウィッチマンと対峙しても堂々たるもの。だが時々、"天然"が発動してしまうのだ。「1回の放送に必ず1度ある」と言われる「あかり劇場」は、いつしか番組の一つの見どころとなった。

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(C)tbc東北放送

そんな彼女は中学2年生のときに、東日本大震災で被災した。津波で自宅が浸水し、避難所生活を余儀なくされた。

不安な生活が続く中、それを救ったのが被災地訪問にやってきたAKB48だった。彼女たちのステージを見て、「楽しい」という気持ちが沸き上がり、ツラい気持ちをひととき忘れることができたのだ。

その体験がきっかけとなり、AKB48のオーディションを受けることを決意したという。だから、彼女にとって震災は大きなターニングポイントとなった。

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(C)tbc東北放送

「ぼんやり〜ぬTV」も震災が大きな転機となった番組だ。この番組は、サンドウィッチマンにとって、テレビ番組としては初めての冠レギュラー番組。2007年の年末に敗者復活から「M-1グランプリ」を制して、翌年の4月から始まった。「M-1」を制覇する前は、ネタ番組への出演があるくらいで、ほとんどテレビに出演することはなかった。だから、彼らのイメージは"ネタの人"だった。けれど、この番組でロケ芸人としての才能が一気に開花した。

そんな中、東日本大震災が起こるのだ。

それは、この番組での気仙沼ロケの最中だった。すんでのところで高台に逃げ、津波の被害は免れたが、街が津波に飲み込まれるのを目の当たりにした。

その経緯もあり、先頭に立って被災地の窮状を訴え、募金を呼びかける活動も行った。「震災の色がついちゃうと、芸人として笑えなくなる」のではないかという逡巡もあった。「お笑い芸人としてダメになるかも」ということまで考えつつも覚悟を決めた。

「ぼんやり〜ぬTV」でも、毎年のように3月には気仙沼を訪れている。"定点観測"ともいえるそれはとても貴重だ。だが、悲壮感はない。

この番組では前述の通り、ロケ芸人としての才能を見せているが、もうひとつ見せた"才能"がある。それは、地元と人と接するときの絶妙な距離感だ。

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(C)tbc東北放送

冗談を交えながら、素直に反応し、どこまでも相手に寄り添っていく。たとえ「被災者」と話しているときも、深刻にしすぎることもないし、変に茶化したりもしない絶妙の塩梅。

この番組には「突撃!社長メシ」という、地元の会社の社長の行きつけの店を紹介してもらうコーナーがあるが、社長に対し、ときにおだてて、ときにイジり、ときにツッコむ。そのさじ加減はサンドウィッチマンならではだ。

そして何と言っても、サンドウィッチマンの仲の良さが見られるのが、この番組の最大の魅力だろう。隙あらば、小競り合い的なミニコントが始まる。「やりたい放題だな!」と伊達がツッコむほど、冨澤がボケまくる。

「ぼんやり〜ぬTV」は、そんなサンドウィッチマンの自然体の魅力が堪能できる、彼らにとっての原点であり「ホーム」といえる番組なのだ。

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